ゴルフ人口の激減期 “18-23(イチハチニイサン)問題” に対応するための、ゴルフ産業の短期的改革案

この記事は、月刊ゴルフ用品界2015年5月号 【北徹朗の学窓からみるゴルフ産業改革案】連載(第2回)より一部抜粋・再編集したものであり、現況と異なる場合があります


 

従来、筆者はゴルフ産業の活性化のために、短期的には『高齢者にやさしいゴルフ環境づくり』、中期的には『離反者層へのアプローチ』、長期的には『イメージ戦略と大学体育授業との連携』を提案してきた。今回より3回に分けて、前述の18-23問題(←クリックすると以前の記事に飛びます)に対応するための、「短期的」(1~2年)、「中期的」(3~4年)、「長期的」(5~6年)な改革案を述べたい。

ゴルフは「生涯スポーツ」ではなかった?

ゴルフはその殆どが歩く運動(ボールを打っている時間は2~3分)であることから「生涯スポーツ」の代表格と言われることが多い。しかしながら、筆者が2015年1月に発表した[ゴルファーの離反理由に関する調査結果]を年代別に見ると、70代以上においては「健康を害した」という回答率が他の年代に比べ顕著に高い結果となっている(図)。これまでゴルフは生涯スポーツの代表格とよく言われてきたが、健康を害してやめざるを得なかった人が意外にも多い現状がこの調査により見えてきた。70歳を超えてもゴルフを続けられる環境を整え、真の「生涯スポーツ」になることを目指すことがまずは必要ではないか。

図.健康を害してゴルフをやめた人の割合(北,2015)

 

 高齢者の特徴に配慮したゴルフ環境の整備を

加齢に伴い細胞や臓器に変化が起こり、骨密度や筋肉量、視力や聴力、脳や神経系など、ゴルフに直接的に関わる機能も衰える。身体の衰えは個人差があるにせよ避けることはできない。これらを踏まえ、例えば「カートを乗り入れられる範囲の拡大」や、「ボールを見つけやすい環境の整備」、「高齢者向けのボールや用具の開発」という方法も考えられる。高齢者向けの用具を実用化した場合、当然ゴルフ場側のアダプテーション(適応)も必要となるが、それは同時にビギナー向けの環境にもなり得ることも期待できる。

 

「プレイ・ファスト」はビジネス側の理屈

筆者はゴルフが生涯スポーツになり切れていない原因の1つに、ゴルフマナー(ゴルフ規則では「第1章:エチケット」)があると感じている。具体的には「スロープレー」に対する態度である。確かに、ゴルフ規則には「適切なペースでプレーすべき」とある。経営の観点からは、出来るだけ速くラウンドしてもらうことで顧客の回転率も高まり、スムーズなラウンド環境を提供することで顧客満足度も高まるという考え方なのかもしれない。

ゴルフ規則第3章にもスロープレーについて、「プレーヤーは不当に遅れることなく」とされている。前述のように加齢により動作や思考は緩やかになり、視力も衰えボールの認知も遅くなるので、“不当に”というのは当てはまらない。
筆者がゴルフ場支配人を対象に2006年から筆者が実施しているマナー違反に関する調査では、よくあるマナー違反の最上位に『スロープレー』が毎回挙がるが、ゴルフ業界の活性化のためには、一般ゴルファーに対してこの点にこだわりすぎるのは得策ではない。

ゴルフ規則では「適切なペース」とされ、「プレイ・ファスト」とは書かれていない。プレイ・ファストはビジネス側からの理屈であり、プレーヤー目線からの解釈に改める時期に来ているのではないか。これまで述べてきたように「適切なペース」とは年齢やスキルによって変わって当然なのです。

 

「プレイ・ファスト」から『ゴー・アヘッド』への発想の転換を

ゴルフ規則には、『もし前の組との間隔が完全に1ホール空き、後続の組をも待たせているときは、後続の組が何人組であろうと、その組に先にプレーして行くように声を掛けるべきである』そして、『後続の組の方が早くプレーできることが明らかな場合はその早い組に先にプレーして行くように声を掛けるべきである』とされている。今日、多くのゴルフ場ではリモコン式の電動カートが導入されており、この規則に従うことが困難となっている。まずは、ラウンド中に組の順番を入れ替えることが可能にできるシステムにする(戻す)ことが必要ではないか。既にそれが可能なゴルフ場では「プレイ・ファスト」(速く回ろう)ではなく「ゴー・アヘッド」(お先にどうぞ)を推奨するべきであると考える。

筆者の調査では、全国のゴルフ場の82.2%(推計)がゴルフ場来場者に対するマナー教育やマナー啓発を「実施している」と回答している。具体的な内容を尋ねたところ、そのほぼ全てが「ポスターやビラの掲示」との回答であった。つまり、ゴルフ場でよく見かける【ハーフ2時間15分でお願いします】とか【上手いより速いがカッコいい】などの掲示物による呼びかけのことである。

プレイ・ファストをあまりに厳しく言いすぎると、高齢者やビギナーはゴルフ場へ行き難くなることが懸念される。「それがゴルフだ」と言ってしまえばそれまでだが、「ゴルフはこうあるべき」という固定概念を考え直す時期に来ていると思う。

 

スキー場マネジメントに学ぼう

ゴルフと同様に1993年をピークに人口が減少し続けてきたスキー人口が回復傾向にあることが最近報じられている。その理由の1つに、子ども時代に家族に連れられてスキーをした世代が親になり、子どもを連れてスキー場回帰していることが挙げられる。

ゴルフの場合、現状では、家族ぐるみで楽しむことは考え難いスポーツと言わざるを得ない。スキーに学び、「ゴルフは家族ぐるみで行えるスポーツ」というスタイルがあってもよいのではないか。
スキー場には、スキー(アルペン)だけでなく、スノーボード、ショートスキー、テレマーク、スノーバイク、ソリなど、同じフィールドで色々な楽しみ方がされている。ゴルフ場の場合、今のところスキー場の様な楽しみ方はできない。

思い切り発想を変えるとすれば、カップを大きくするとか、高齢者や初心者用に大きめのボールや扱いやすい用具を開発するなど、ゴルフにも色々な楽しみ方があってもよいのではないか。

 


<月刊ゴルフ用品界2015年5月号 【北徹朗の学窓からみるゴルフ産業改革案】連載(第2回)より一部抜粋・再編集>

株式会社アコーディアゴルフでは、実際に『でかカップゴルフ』と銘打ったイベントデーを2016年6月より設定し、18ホールすべてが通常の4倍の直径約38センチ(15インチ)のカップでプレーするスタイルで開始された。

 

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北 徹朗

<現職>武蔵野美術大学 身体運動文化准教授・同大学院博士後期課程兼担准教授、サイバー大学 IT総合学部 客員准教授、中央大学保健体育研究所 客員研究員  <学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程  <主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事