ゴルフの人口問題:2015年問題から「18-23問題」へ

※この原稿は、『月刊ゴルフ用品界2015年4月号』に掲載された記事(北徹朗の学窓から見るゴルフ産業改革案)の内容を再編集したものです※

 

少子高齢化が進む中、様々な業界で「20××年問題」という言葉をよく見聞きします。例えば、私が従事する大学業界には「2018年問題」があります。現在、踊り場の局面にある18歳人口の減少が2018年から再び始まり、2031年までの間に約33万人も減少することがわかっています。受験者数の減少による受験料収入の減少や、常時定員割れを起こしているような経営体力の低い大学では閉校や統合が相次ぐことは免れないと予想されており、2018年に備え殆どの大学で構造改革が進められています。
ゴルフ業界でも「2015年問題」が10年以上前から言われてきました。しかし、大学における2018年問題のように、根拠となる明確な数字がある話ではなく、「2015年問題」という用語だけが独り歩きしていたことも否めないと思います。つまり、大学の「2018年問題」のように、2015年を境にゴルフ人口が急減し、団塊の世代が2015年をもって「ゴルフクラブを置く」という根拠はないのです。実際、既に2015年は半年過ぎましたが、ゴルフ業界はそれなりの平穏を保っています。

ただ、「2015年問題」という用語によって、ゴルフ業界全体が10年以上に渡って危機感と緊張感を保つことができた、ある意味“Caution!”[皆さん注意しましょうね、という呼びかけ]として一定の役割を果たしてきたことは評価されるべきことと思います。

今後数年のことをもう少し具体的に考えてみたいと思います。日本人の平均寿命は世界のトップを争う水準(男性80.21歳、女性86.61歳)であることは広く知られていますが、「健康寿命」というのをご存知でしょうか。健康寿命とは、2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念ですが、厚生労働省の定義によれば「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをさします。つまり、日常的に介護などのお世話にならず、自立した健康な生活ができる期間のことを言い、平均寿命とは区別されています。

2014年に厚生労働省から公表された最新の日本人の健康寿命(2013年)は、「男性:71.19歳」、「女性:74.21歳」であり、2012年(男性70.42歳、女性73.62歳)より1歳近く延伸しています。これは、国や自治体を挙げて健康寿命と平均寿命の差を縮めるための、様々な取組が行われていることや、個々人の努力もあると思われます。そして、健康寿命は男女とも年々延びていますし、今後も延伸することが予想されています(図)。

日本人の平均寿命と健康寿命の推移 (厚生労働省:厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会(2014年10月1日)資料)

日本人の平均寿命と健康寿命の推移
(厚生労働省:厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会(2014年10月1日)資料)

 

この数字からも、2015年を境に団塊世代がゴルフをやめて、急激なゴルフ人口の減少が訪れるとは考え難いのです。
実際、北らが2015年1月に公表した「ゴルファーの離反理由についての調査」の結果を年代別に見ても、「ゴルフをやめた理由」として、「健康を害したから」という理由は、70歳以上の年代で回答率がはじめて上位に出てきます。つまり、60歳~70歳にかけての年代では、まだまだ現役ゴルファーとして活動することが可能であり、現実的に引退もしていないのです。

出生数が200万人を超えた年代は、団塊世代(1947年~1949年)以降も、実は3年間(1950年~1952年)に渡って続いています。
本当の危機が訪れるのは、出生数200万人台最後の年である1952年生まれの人が65歳を迎え、団塊の世代が健康寿命(71歳)の年齢に到達する頃(2018年)以降ではないかと推測します。「2018年問題」あるいは1952年生まれの世代が健康寿命に到達する「2023年問題」と考えるのが妥当ではないかと思われます。
ただし、2023年は「出生数200万人超え」の最後の世代が健康寿命に達する年であるため、2018年以降から2023年までの期間、徐々にリタイアの波が大きくなる可能性を見据えておかなければなりません。(ちなみに1971年~1974年に生まれた世代も200万人を超えています)

2016年のリオデジャネイロ五輪では、ゴルフが112年ぶりに正式種目に復活し、2020年には東京五輪の開催が決定しました。ゴルフ業界は今後さらに盛り上がりをみせて行くことと思いますが、東京五輪の頃がちょうどゴルフ人口激減危機の渦中にある時期に置かれていることも考えておかなければなりません。
これまで述べてきたように、「2015年問題」に代わるキーワードとして「2018年問題」や「2023年問題」などが考えられます。しかし、健康寿命が年々延伸していることや、今後少々健康に不安を抱えている人でもゴルフ場に出かけることが可能な環境づくりや構造改革がなされるとすれば、2018や2023の数字の持つ意味合いも変わって来るものと思います。そのため、1つの年数で区切って考えるのではなく、数年の幅でのイメージで捉えて行く方が適切かもしれません。
いずれにしても健康寿命を考えることが1つのポイントであることは間違いないでしょう。ひとまず、「2015年問題」に代わるキーワードとして、『18-23問題』(イチハチ ニイサン問題)とでもしておきましょう。

 

【引用文献】:北徹朗:月刊ゴルフ用品界連載『北徹朗の学窓からみるゴルフ産業改革案 第1回:本当の危機は2023年にあり!』、2015年4月号、pp.74-75

ABOUTこの記事をかいた人

北 徹朗

<現職>武蔵野美術大学 身体運動文化准教授・同大学院博士後期課程兼担准教授、サイバー大学 IT総合学部 客員准教授、中央大学保健体育研究所 客員研究員  <学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程  <主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事