【シリーズ 会長が聞く】 第1回 新会長就任記念・JGTO諸星裕新会長にインタビュー
【諸星】 こちらこそ、よろしくお願いします。
【小川】 それでは早速、本題に入りたいと思います。就任早々、マスターズの行われているオーガスタ・ナショナルGCに出かけられて、各国のフェデレーションのトップに会われたとか。成果はいかがでしたか?
【諸星】 日曜にこっちを出て、現地の日曜の夜中に着きました。開催週の月曜日から3日間、毎日世界の主なプロゴルフ・ツアーの幹部諸氏と会議を行いました。初日はワールドランキングのポイントについて話し合う会議でした。うち(JGTO)のツアーの基礎点が下げられちゃいけないんで、これは真剣にならざるをえませんよね。今、(ランキング対象の)ツアーって、世界に26もあるんですよ。今回、26番目のスコットランドのツアーを入れるかどうかが議題になりました。80人程度しかプロがいないツアーですが、結局26番目のツアーとして承認されました。
【小川】 日本のツアーは一昨年の8月にもポイントが大幅に下げられてしまいました。前体制の間に、JGTOはガラパゴス化して日本ツアーの存在感が、がた落ちした感があります。
【諸星】 今回出席できたことで今JGTOが相対的に見て、どう言う状況にあるかがよく分かりました。
【小川】 初日から重要な会議に出られて、残り2日も相当お忙しかったのでは?
【諸星】 次の日から2日間は、昔からあるフェデレーション(インターナショナル・フェデレーションズ・オブPGAツアーズ)の、6つのツアーと個別に膝詰め談判ができました。アメリカ、イギリスヨーロッパのツアーとオーストラリア、アジアツアー、それから南アフリカのサンシャイン。会長になってまだ日が浅いですから、向こうから聞いてきても僕が分からないこともあるわけですが、そこはスタッフが答えてくれましたから、有意義な3日間になりました。少なくとも、多くの種は蒔けたと思います。僕としては長い間スポーツの国際交渉をやってた人間として、久しぶりにああいう舞台で水を得た魚というか、楽しく仕事ができましたね。
【小川】 ちょうど諸星会長がマスターズに行かれている時でしたが「ISPS 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント」の開催記者会見で、ISPS代表の半田晴久さんが「JGTOからの接触もないから、来年の開催は白紙」という趣旨の発言をしていました。会見の席上での発言でしたから、多くのメディアが報じました。帰国されてから同大会の開催週に、直接半田さんと会われたそうですね?
【諸星】 はい。火曜日に御殿場で直接お話しする機会がありました。実は半田さんとは以前に一度お会いしています。この時に西宮(兵庫)で、僕と半田さんは隣の小学校だったのが分かったんです。僕が「高木小だけど」って言ったら半田さんが「僕は鳴尾小」って返してきて、そのあとは関西弁でやりとりして意気投合しました。で、今回も半田さんに「オーストラリアをはじめ本当にいろんなところで貢献していただいている方。世界のゴルフ人を代表してお礼を申し上げます」と感謝の気持ちを込めてスピーチしました。半田さんも私のことを「ICUを出てアメリカの博士までとって、それでカナダの刑務所にも勤めていた、とにかくすごい経歴の人で、日本のツアーもこの人だったら引っ張っていける」とすごく丁寧に紹介してくれました。そんなやりとりがあって、私が「日本のツアーの発展のために、よろしくお願いしたい」ということを申し上げたら「もちろん、もちろん」と言っていただいたんで、今後もご協力いただけると受けとめています。
【小川】 なるほど。それは明るい材料ですね。新任早々お忙しい日々を送られているわけですが、今後の目標はというと、やはり23試合で総額33億円と、低空飛行が続くJGTOの状況を少しでも回復するということになりますか?
【諸星】 会見でも「(1シーズンの賞金総額が)USPGAツアーで800億円ぐらい。日本やヨーロッパを全部合わせて1300億円ぐらい。その中でわが国は10年前からずっと33億円」と現状をお話ししましたが、それを打開するのは、やはり環太平洋の各ツアーと連携していくしかないんです。
【小川】 国内のスポンサーだけでは手詰まりであることは、よく分かります。会見では確か「日本からインド、オーストラリアまで合わせると世界の人口の3分の1になる。その辺りでいろんなことが一緒にできれば、世界的なさまざまな企業がスポンサーになるということが考えられる」と仰っていました。環太平洋の大きなツアー構想も描けますよね。
【諸星】 個人的にはまず、韓国、中国、シンガポール、それからオーストラリア、インドまでの各国ゴルフ界のリーダーを招集して話をしてみたいですね。
【小川】 現状、日本の試合数と賞金は、近年で最低のレベルまで落ちていますが、その分日本のトップクラスの選手が海外で活躍するケースが増えています。1980年代の豪州がこういう状況で、グレッグ・ノーマンでさえアジア・サーキットに出ていました。その後イアン・ベーカーフィンチ、ウエイン・グラディ、ピーター・シニアなどメジャーチャンピオンが続出しましたよね。
【諸星】 選手には、海外の試合にどんどんチャレンジしてほしい。それと選手たちが、JGTOと自分の関係ってのは分かってんのかな、とまず思ったんですよ。社団法人の社員って、会社員の社員ではない。要するにそこの会員ですよね。社員は194人のツアープロと、会長である僕だけなんですよ。それを彼らにまず問いかけてみようと思ったんです。JGTOという組織があって、選手であるあなた方が実はすべてのことを決定するオーナーでもある。JGTOは、言わば芸能プロダクションみたいに考えててくれればいいかもしれない。この芸能プロダクションはいい仕事を取ってきて、ちゃんとお金も用意して、広告も出していろんなお世話をする。芸能プロダクションとあなた方が違うのは、雇用関係はないわけで、一人一人が個人事業主であるということ。JGTOは規則を作って様々なことをするけれども、その規則に違反しない限り「出ちゃいけない」とか「出ろ」とか言えないわけですよ。
【小川】 その辺の説明が、選手にしっかりされていなかった感じはしますよね。専務理事や青木さん寄りの理事に対する不満は、選手から本当によく聞きましたから。
【諸星】 僕も何十年前にスーツケース一個で日本を出て、大学院に行ってカナダの刑務所で働いて、また戻ってきて大学院に行って教えたりといろんなことをやったけど、誰にも拘束されず自分一人で道を開いていって生きてきた人間だから、彼らもそれにすごく共鳴をしてくれた感じはしました。だからあなた方たちは全く同じことなんだよ、と。最善の舞台を作ってやるのがJGTOのスタッフであり、役員の仕事であると。そういう関係だからみんなに対して強制力は本当にない。出場停止とか罰則規定あるけど、それはよっぽどのことをしない限り関係ない。それを平易な言葉で伝えたんで分かってくれたんじゃないかなと思います。その後アメリカやオーストラリアの選手もいたんで集まってもらってちょっと話して、僕のアドレスを教えてメールくれって言ったらすごい喜んでくれたんで、良かったと思いますよ。
【小川】 最後にこの機会をお借りして、日本のゴルフジャーナリズムについて、コメントしていただきたいのですが。
【諸星】 やっぱり褒めて人を育てていくか、人間としてくだらないことでは叩かないでっていうのが一番。みんな一生懸命やっているんで、とにかく褒め殺ししてやってください。選手は木に登って、力を出しますから。
【小川】 選手は褒めて、組織には厳しく、ということでよろしいですかね(笑)
【諸星】 はい。それで全然大丈夫です(笑)。
聞いてみたいと思っていたことが全てインタビューに網羅されています。さすが小川さん、これからもこういった記事をアップしていただけるようお願いします。
温かいメールをいただき、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
JGTO新会長の諸星会長と小川会長‼️日本の男子トーナメント発展のため、素晴らしい記事ありがとうございます。
答えるのは選手ですね。
すべてのお言葉に意味があり、前を向けます。
諸星会長の就任は、時代が要求したものだと思います。持ち前の国際交渉力で選手の戦いの場を国内にとどめず、環太平洋から世界へと広げてくれるはずです。折田さんがおっしゃる通り、私たちも前を向いて、レベルの高い情報発信に取り組んでいきたいと思います。
諸星会長のご就任おめでとう御座います。知人の元桜美林の近藤先生からもお人柄、ゴルフ腕も聞いておりましたので、両手をあげて待ち望んでおりました。男子ゴルフの発展にご尽力お願いします。