青木功の持論 不器用な一徹者がうまくなる

日経電子版2017年10月5日配信

米男子ゴルフツアーの2017~18年シーズンが10月に開幕。国内ツアーも終盤のビッグトーナメントが目白押しで、楽しみな季節がやってきた。

テレビや雑誌などでプロのプレーを眺めるだけではなく、われわれアマチュアにとっても絶好のゴルフシーズン到来。コンペを控えて、足しげく練習場に通っている方も多いだろう。

とはいえ、意のままにならないのがゴルフ。なかなか迷路から抜け出せない。

不器用で頭の固い人向き?

この8月31日に75歳になった青木功がかつて、こんなことを言っていた。

「ゴルフはね、不器用で頭の固いやつに向いているかもしれないね。どちらかといえば、オレもそうだね」

「頭が固い」はともかく、「不器用」だとはとても思えない。

1983年の米ツアー、ハワイアン・オープン(現ソニー・オープン)。最終日18番(パー5)の3打目(128ヤード)をピッチングウエッジで直接カップインさせてイーグル。大逆転で初優勝したシーンは、今も折に触れ目にすることがある。

80年の全米オープンで、その青木と4日間同じ組で死闘を演じたジャック・ニクラウス(米国)は「100ヤード以内のゲームはアオキが世界一」と評価した。事実、部門別ランキングの「バンカーセーブ率」(バンカーから2打以下でホールアウトした確率)や「平均パット数」では毎年上位に名を残し、「オリエンタル・マジック」とまで評判になった。

不器用どころか、ショットの「引き出し」が無数にあるようにすら感じられるが、本人は否定していた。

「一つのことしかできないし、したくない」

青木といえば、独特のスイング、プレースタイルで有名だ。

深い前傾姿勢から、ベタ足、手打ちのショット。キャッシュイン型パターをハンドダウンで構えトゥ部分を浮かせてリストを使ってのパッティング……。どれも「ゴルフの教科書」に書いてあることとは程遠い。

アプローチでも、いまはやりのボールを高く上げて止めるショットはほとんどせず、可能な限りロフトの立ったクラブを使ってボールを転がそうとした。

74年に初めてマスターズに出場したときは31歳。体が大きく、きれいなスイングで遠くまで飛ばす選手がゴロゴロいる米ツアーを目の当たりにして、自分のゴルフ、スイングを見直そうとしてもおかしくない。しかし、それをしなかった。

人は人、自分は自分――を貫き通した。

何でもできるということは…

そして、こうも言っている。

「いろんなことができる、何でもできるってことは、結局、何もできないってことだと思うよ」

ここ一番プレッシャーのかかった場面を乗り越えられるのは「これしかない」という開き直りだろう。できることを愚直に繰り返して自分のものにする。これが青木の言う不器用であり「オレのやり方」である。

と考えると、練習量がはるかに少ないわれわれアマチュアにも似たことがいえそうだ。テレビや雑誌にスイングのヒントが洪水のようにあふれ、その都度、採り入れてみたりする。結果、さらに深い悩みに引きずり込まれていく。

そんな世界に別れを告げ、「オレには、これしかできない」と開き直って練習に取り組むのも、一つの解決方法かもしれない。

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