<大学ゴルフ授業研究会による全国調査>
「日本の統計2015」(総務省統計局)によれば、4年制大学の数は782大学(国立86、公立90、私立606)であるとされています。「大学ゴルフ授業研究会」(代表:北 徹朗)が2014年の夏に実施した調査によれば、全国の大学で「ゴルフ」をとり入れている体育授業が、延べ約580存在していることがわかりました。驚くべき実施率の高さです。
例えば、大学体育の教材として比較的人気の高い「ソフトボール」でさえ、延べ約280大学での実施 (2008年,北の調査による)にすぎません。なぜここまで多くの授業でゴルフが教材とされたのか、その経緯は現在調査中ですが、大学の体育授業で初めて クラブを握ったという経験のある人は既に相当数おり、今後も多くの学生が大学体育を通じてゴルフに関わりを持つのです。
<大半の大学ゴルフ授業はコースラウンドをしない>
しかしながら、大学で実施されているゴルフ授業の大半は、学内のスポーツ施設のみを利用し、簡易的な用具(主にボール)で実施されていることもわかっています。例えば、移動式ケージへのショット練習が中心の授業や、学内のゴルフ専用練習場のみを使用した授業、体育館やテニスコートで軽量ボール使用した打ちっ放しを中心に行う授業、教員がグラウンド等に簡易コースを設定し疑似ラウンドをさせる授業など、授業形態は大学によって様々です。
もちろん、学外のゴルフ場で実際にコースラウンドさせる大学もありますが、割合的には多くありません。このような授業実施方法(正式なルールに則るゲームが経験できない)は、大学体育授業の教材としてよく実施されている、サッカー、テニス、バスケットボール、ソフトボール、バレーボール、卓球など、他のスポーツでは考えにくい対応です。
そこで、筆者は数年前に教具や教場 環境の異なる複数の大学におけるゴルフ授業調査(介入研究)を実施しました。その結果、打ちっ放しのみの授業やグラウンドなどでの簡易コースラウンドを中心とした授業に比べ、実際のゴルフ場でラウンドする授業を受けた者の方が、ゴルフに対する継続意欲が統計学的にも顕著に高いことが明らかになりました。
<大学ゴルフ授業とコースデビューの接続プログラム『Gちゃれ』の開始>
この研究結果については、筆者により『大学ゴルフ授業を介した「生涯スポーツとしてのゴルフ」への誘いは「コースラウンド経験」が重要である』(2012年)という演題で学会発表され、『ゴルフ授業における教場環境の違いが学習効果とゴルフ継続意欲に及ぼす影響‐同一教員が担当した5大学における考察‐』(2013年)という論文も発表されています。
これらの研究の内容を大まかに説明すると、「今後もゴルフをやりたい」という意欲は学内施設の疑似ラウンドでは養い難い、つまり、授業とはいえ本コースをラウンドさせる方が継続意欲のポイントがずっと高かった、ということです。
この研究結果を受け、大学のゴルフ授業をさらに魅力ある内容にして行くため、2013年に大学ゴルフ授業研究会を立ち上げました。ここでは、到達目標、授業方法・内容、練習アイディア、教具・教材開発、教場 づくり、シラバス、授業スケジュールの工夫、カリキュラム開発など細部にわたる検討をしていますが、授業後に“ゴルファー”として定着させるには「大学ゴルフ授業」と「コースデビュー」を繋ぐ『接続プログラム』の開発がどうしても必要と考えてきました。
そこで、2015年8月にゴルフ授業を受講した学生向けに、『Gちゃれ』という学生向けのゴルフ企画(学内教場で完結する「授業としてのゴルフ」と「実際の本コースラウンド」との接続プログラム)をスタートさせました。「単位取得のため」に受講するゴルフですが、多くの学生が「もっとゴルフをやりたい」とか「本物のゴルフ場でプレーしてみたい」という気分になって授業を終えますので、このタイミングで本コースでのエキストラプログラムの導入を試みています。
ゴルフ場をはじめ関係各所のご協力があり、大学生がコースデビューしやすい環境整備(費用,用具,教育,交通等々)の第一歩が踏み出されました。(月刊ゴルフ用品界2015年9月号にこの様子が掲載されています)
<引用・参考文献>
〇北 徹朗(2015)月刊ゴルフ用品界連載【北徹朗の学窓からみるゴルフ産業改革案】,第4回:ゴルフ産業の長期的改革案,2015年7月号
〇北 徹朗(2015)月刊ゴルフ用品界連載【北徹朗の学窓からみるゴルフ産業改革案】,第5回:ゴルフの教育現場への導入と市場拡大の可能性,2015年8月号
[…] 全国の多くの大学の教養体育授業でゴルフは行われているが、それらの90%以上はゴルフ場に行かず、大学内の施設(グラウンド、体育館、テニスコートなど)で完結している(北ら […]