会員権名義書換時に於ける印鑑証明書有効期限に付いて

 

ゴルフ会員権の名義書換手続きに於いて、名義人の印鑑証明書有効期限を3ヶ月としているクラブが多く存在している。しかしながらこの縛りが、ゴルフ会員権の流通面に於いて大きな弊害となっているのも事実であり、バブル経済が崩壊してから約20数年が経過し、ゴルフ会員権の在り方が問われている今日、印鑑証明書の有効期限に付いての再考が、今まさに求められている。

これは会員制クラブ活性化へ向けた、運営主体への一提言である。

 

■ 印鑑証明書の役割と会員権譲渡手続きについて

かつて、ゴルフ会員権価格は、何億円、何千万円だった。その当時、あまりにも古い期日の名義人印鑑証明書による入会申請では、会員権自体が詐取されたものではないかと疑わしく、安易に名義変更を認めてしまうと、後日名義人より売却した覚えは無い等との訴訟を起こされた場合、対抗要件として不備なのではないかと言う危惧が有り、3ヶ月に固執するクラブが多かった。

しかしながら3ヶ月以内の名義人印鑑証明書を入会申請時に提出されたからと言って、当該会員権が詐取されたものでは無いと言う根拠は、見出されるものだろうか。ここには期日が新しい古いというだけでは、判断しかねる問題が内在している。

例えば名義人は一年前にご自分の会員権を、妥当と思われる価格で売買したとする。売買であるから当然金銭の授受を伴う訳だが、この時点で商行為は成立しており、名義人が引き渡した印鑑証明書は、立派な譲渡意思の証拠である。この行為により整えられた譲渡書類と印鑑証明書をもって、会員権取得者は1年後にクラブへ入会申請した場合、クラブ側は名義人の印鑑証明書期日が古い為に受け容れられないと言う論理は、ある意味無理があると言わざるを得ない。

クラブ会則及び規則に、3ヶ月以内の印鑑証明書以外は受け付けないとの文言が明記されている場合は別として、クラブではどの様な根拠を持って拒否するものなのなのだろうか。クラブとしては 「今迄その様にして来たから」 と言う、習慣性以外に明確な回答は出来得ないのが、現実ではないだろうか。

名義人の意思確認の為にクラブ側が求める印鑑証明書、この期日が古い新しいと言う問題を、発展的に消化していく為の方策としては、いくつかの案が考えられる。その最善なものとしては、名義人による退会届_特定の第三者へ譲渡した事を明確にする届出書作成と共に、その書類へ公証役場で確定日付を取得させる事だ。そしてこの様な商行為があった事を、会員権取得者は内容証明郵便にてクラブ側に告知する必要が出てくる。

この一連の行為により、会員である名義人が預託金債権を第三者へ譲渡した事、更には会員資格を第三者へ継承させる事に異議のない事が、明らかに成る。そして何よりもその後に起こり得る根拠の無いクレームに対しては、充分なる対抗要件と成り得、名義書換を受け容れたクラブ側への瑕疵は、問われない事になる。

 

■ 印鑑証明書の有効期限3ヶ月がもたらす様々な障害

たった3ヶ月間で何十万円、何百万円もした会員権の商品価値が無くなってしまう、この様な多分にリスクのある商品は、ゴルファー保護に繋がらないと共に、ゴルフ会員権の意義を希薄なものとしてしまっている。

例えば会員権を購入したものの、出張が続き入会手続きを行うのに3ヶ月以上経過してしまった。

例えば会員権を購入したものの、会員権業者から渡された書類の名義人印鑑証明書期限が古く、トラブルになってしまった。

例えば会員権を購入したものの推薦者と仲違いをし、入会意欲が無くなり転売したくなったが、会員権業者より印鑑証明書を再取得する為には、時間と費用がかかる事を伝えられた。

上記3例以外に様々なケースが考えられるが、印鑑証明書の期限が短すぎる事が様々な障害を引き起こす要因となっている。

 

■ 印鑑証明書期日の法的根拠に付いて

そもそも印鑑証明書の期日設定は、どの様な法的根拠に基づいて行われているのだろうか。ゴルフ会員権業界に於いては、それを取り扱ういわゆる会員権業法が無い。では何に基づいて会員権業界は日常業務を行っているかと言えば、商法であり民法であると言える。そこに印鑑証明書の期日は3ヶ月以内でなければならない、などという規定が明記されているのだろうか。

法務局へ確認したところ、その様な規定は無いとの事だ。

 

■ 印鑑証明書の有効期限改定によるメリット

2016年現在、会員権価格はとても安価となり、会員権を詐取する様な動きは皆無であり、又融資の見返りに、ゴルフ会員権を担保提供させる様な金融機関も、ほとんど見当たらなくなっている。この様な現在の社会的背景から、ゴルフ会員権の名義書換に対するかつての危惧は、杞憂になりつつある。

現在の印鑑証明書有効期限3ヶ月と言う内容を、半年へ改定する事のデメリットは考えづらく、会員、ゴルフ場・クラブ、会員権業者と多くの関係者にとってメリットが多く有ると言えるし、何よりもそこには会員制クラブ事業が大きく発展していく要素を、垣間見る事が出来る。

 

■ 最近の事例

2016年1月1日よりレイクウッドグループ4クラブでは、名義人の印鑑証明書有効期限を3ヶ月から半年へ改定し、受け付け開始している。

当該4クラブでは、会則、規約に名義人の印鑑証明書有効期限は3ヶ月で無ければならないと言う規定が無い為、クラブより業務委託を受けたゴルフ場経営会社の内規を変えて対応したとの事だ。3月に入り同グループのレイクウッド大多喜カントリークラブも、同様に変更された。

 

■ 印鑑証明書期限を半年としているクラブ一覧 (2016年3月現在)

  1. 1、あさひヶ丘カントリークラブ
  2. 2、アバイディングクラブ ゴルフソサエティ
  3. 3、阿見ゴルフクラブ
  4. 4、伊勢原カントリークラブ
  5. 5、イーグルレイクゴルフクラブ
  6. 6、内原カントリー倶楽部
  7. 7、エヴァンタイユゴルフクラブ
  8. 8、大秦野カントリークラブ
  9. 9、大日向カントリー倶楽部
  10. 10、岡部チサンカントリークラブ
  11. 11、鹿沼カントリー倶楽部
  12. 12、笠間カントリークラブ
  13. 13、カントリークラブ ザ・レイクス
  14. 14、霞ヶ浦カントリー倶楽部
  15. 15、鹿沼72カントリークラブ
  16. 16、川越グリーンクロス
  17. 17、京カントリークラブ
  18. 18、クリアビューゴルフクラブ&ホテル
  19. 19、グランドスラムカントリークラブ
  20. 20、KOSHIGAYA GOLF CLUB
  21. 21、相良カントリー倶楽部
  22. 22、皐月ゴルフ倶楽部 鹿沼コース
  23. 23、皐月ゴルフ倶楽部 佐野コース
  24. 24、サンヒルズカントリークラブ
  25. 25、ザ・ゴルフクラブ竜ヶ崎
  26. 26、ザ・インペリアルカントリークラブ
  27. 27、スプリングフィルズゴルフクラブ
  28. 28、千成ゴルフクラブ
  29. 29、セゴビアゴルフクラブ イン チヨダ
  30. 30、総武総合平日会員権
  31. 31、総武カントリークラブ
  32. 32、玉造ゴルフ倶楽部
  33. 33、中央道晴ヶ峰カントリー倶楽部
  34. 34、中央都留カントリー倶楽部
  35. 35、千代田カントリークラブ
  36. 36、長太郎カントリークラブ
  37. 37、富岡カントリークラブ
  38. 38、栃木ヶ丘ゴルフ倶楽部
  39. 39、東名厚木カントリー倶楽部
  40. 40、中峰ゴルフ倶楽部
  41. 41、成田の森カントリークラブ
  42. 42、飯能くすの樹カントリー倶楽部
  43. 43、秦野カントリークラブ
  44. 44、パーシモンカントリークラブ
  45. 45、平塚富士見カントリークラブ
  46. 46、ピートダイゴルフクラブ
  47. 47、扶桑カントリー倶楽部
  48. 48、富士御殿場ゴルフ倶楽部
  49. 49、富貴ゴルフ倶楽部
  50. 50、富士チサンカントリークラブ
  51. 51、プレステージカントリークラブ
  52. 52、三木の里カントリークラブ
  53. 53、美浦ゴルフ倶楽部
  54. 54、山田クラブ21
  55. 55、レイクウッドゴルフクラブ
  56. 56、レイクウッドゴルフクラブ 富岡コース
  57. 57、レイクウッドゴルフクラブサンパーク 明野コース
  58. 58、レイクウッド大多喜カントリークラブ
  59. 59、ローレルバレイカントリークラブ

 

■ 会員権の安全性へ向けて

バブル経済崩壊以降、会員権価格は雪崩を打ったが如く右肩下がりとなり、会員権が有していた資産価値と言う側面も語られる事が少なくなり、もっぱらプレー権としての価値のみが取りざたされる様になった今日、ゴルフ会員権は多くのゴルファーにとってあまり魅力の無いものとなっている。

その大きな要因は、ゴルフ場倒産による信用崩壊と言える。現在会員制ゴルフ業界が求められている喫緊の課題は、如何に失った信用を取り戻すかだ。そこには様々な問題があると言え、少なくとも会員権に関しては、その商品の安全性を高める事無くして、ユーザーからの信頼感を取り戻す事は、困難なのではないだろうか。

特に名義人の印鑑証明書取り扱いに付いては、安全性の根幹を成すものであり、この点が担保されない限り、会員制ゴルフ場事業の発展は見込めないものと断言出来る。

 

■ 最後に

近年の傾向として、ゴルフ会員権を取得してクラブの会員に成るゴルファーは、年齢的には50歳過ぎの方が多く、競技志向と言うよりはゴルフを通じて残された人生楽しく過ごしたい、体が元気な内はゴルフをしたいと考える方が、多くなって来ている様に思われる。

日本社会の高齢化と、60歳を境にしてリタイアしなければならない現実が、この現象の背景にはある様に思われる。一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会の資料によると、2003年時の非課税者が占めていたゴルフ場来場者数が、10年後の2013年には3倍へと大幅に増加している。

日本の人口構成が短期間で若者社会へ戻る事はあり得ない点を考慮した場合、如何に高齢者にゴルフ場へ来場して頂くか、そして今後の日本社会のテーマは家族・夫婦・友人・絆であるから、この内容を吸収し得るシステムを構築していく事が、ゴルフ場・クラブの繁栄に繋がっていくものと思われる。

最後にもう一度述べさせて頂くならば、印鑑証明書の有効期限を半年へ改定する事で、会員権の流通性が高まる事は間違い無く、リスクよりもメリットが多い事、そして倶楽部の発展に大きく寄与するものだと、申し上げなければならない。

2016年3月23日東京神田神保町にて

ABOUTこの記事をかいた人

大野良夫

大学卒業後30歳を契機にゴルフ業界へ身を置く様になり、ゴルフ会員権業者へ勤務の後2003年8月に独立。現在、タクト株式会社代表取締役。
主な活動・著書
「 ゴルフ事件 過去帖 」「 ゴルフ 偉人、名人、達人 列伝 」をWEBにて公開中。
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