Covid-19が変える日本のゴルフ Part1

前回はゴルフをしない人たちのゴルフに対する視線がどのようなものかの一端を書いてみました。ゴルフには2面性がありスポーツとしてのゴルフと社交としてのゴルフがあり、ゴルフをしない人たちから見ればどちらも同じに見えるために正しく理解されていないことが多いのです。
しかし、ゴルフのゲーム自体はとても面白いので多くの人がゴルフにはまり、プレイを続けるのです。なのに偏見があるのは何故なのでしょうか?

ゴルフをする人の中には常に2面性の両方が混在して、状況によって使い分けなければならないことやプレイスタイルが変わらない息苦しさを感じている人たちもそれなりにいて、もう少し持続可能な多様性があるべき、プレイスタイルにも選択肢があった方が楽しめる、どうしてそれができないの、という方もかなりいるのです。それが原因で楽しめずゴルフをやめてしまった人も少なくないのです。
そのような中でCovid-19が困窮したゴルフの現状を大きく変え始めたのです。ご理解いただくために数回に分けて書かせていただきます。

目次

*日本のゴルフ場の実情
*バブルが引き起こした特殊な日本のゴルフ場
*プレイするにも大変な時代
*ゴルフ場の冬の時代が始まった
*事実上、パブリックコースと言えるのに
*変化できなかった理由
*Covid-19が変えたもの
*今、ゴルフ場でプレイしている人たち
*何が新しく、何が始まるのだろうか

バブルが引き起こした特殊な日本のゴルフ場

現在、日本にはゴルフ場の数は2155コースあります。その総面積はほぼ神奈川県に匹敵する広さがゴルフ場として使用されています。かなりの広さです。
これだけの数があるならば、もっとゴルフの普及が進んでも良さそうなものですが伸び悩んでいます。いろいろ理由はありますが、大きな理由の一つとして日本のゴルフ場の80%以上が会員制を敷いているからです。
つまり、ゴルフ場が会員だけの特別な場所になっているからです。
米国では会員制のゴルフ場は20%くらいで80%くらいが誰でもプレイできるパブリックコースなのです。手軽にできる公営ゴルフ場ももたくさんあります。この日本の数字は異常ですね。

なぜ、このような異常な数字になったのかと言えば、日本で最も人口が多い団塊の世代が30歳代半ばから40歳代になった時(1980年代)、子供が学校に入る、家を建てる、車を買う、電化製品を購入するなどという大きな消費活動がほぼ同時期に行われました。その消費金額は空前のものとなり、日本の景気を大いに引き上げるパワーとなってバブルが始まりました。

ゴルフも世界的にも日本国内でも強い選手が出現してゴルフブームを起こし、社交としてゴルフが仕事でも必要となってゴルフの需要が高まってきたからです。それに伴ってゴルフ場の建設ラッシュが始まったのです。その建設費用は会員を募って集めた金額でまかうシステムにしたことから、当時の新しいゴルフ場のほとんどが会員制のゴルフ場なのです。

プレイするのも大変な時代

ゴルフ場の数が圧倒的に少なかった時は需要が供給を上回っているのでプレイするにはどこかの会員になってプレイする場所を確保しなければならず、多少場所が遠くても、価格も高くても将来会員権は値上がりするという思惑からゴルフ会員権を購入した人が多かったのです。

会員権相場は右肩上がりで上昇し、1億円を超えるコースも出てきました。当然プレー費も高騰していったのです。そのような異常とも思える高いプレイ料金価でも、各ゴルフ場は常に満員状態でそれがバブルがはじける1993年くらいまで続きました。ゴルフ場ビジネスの黄金期とも言えた時代です。

特に週末はプレイ料金が高騰して1日プレイするだけで3万円〜5万円という今では信じられないくらいの金額が普通だったのです。
びっくりですよね。週末はお父さんは早朝からゴルフ、こどもたちや家族との団欒は少なく、しかもかなりのお金がゴルフに飛んで行ってしまうとなれば家族からすればゴルフは敵だったかもしれません。
その時の子供達が大人になってゴルフの印象はどのようなものでしょうか?

ゴルフ場は特に宣伝もしなくても顧客は向こうからやって来て、プレイできるならとゴルフ場が設定するプレイスタイルやサービスのあり方が全て通用したのです。それが普通だったのです。当時のゴルフ人口はおよそ1200万人以上と言われ、国民の10%はゴルフをしていたのです。

ゴルフ場の冬の時代が始まった

バブルがはじけた1993年から現在まで27年間、ゴルフ人口(現在約800万人)の減少に伴いゴルフ市場は収縮傾向が続き、5000億円を超えるものが現在では当時の約半分まで落ち込んでしまっているのです。ゴルフ場の数も2500以上あったものが400コースほどが閉鎖されて、太陽光発電のソーラーシステムの発電所になったり、墓地として再分譲されたりしているのです。

将来の投資になると高額にもかかわらず買った会員権は預託金という形であったため、その償還期限が来た時にゴルフ場はパニック状態になりました。バブルがはじけ不景気のスパイラルが始まって会員が預託金返還請求を一斉に始めたのです。預かったお金はゴルフ場の開発資金などで使い切ってしまったのです。ゴルフ場も会員権の価格が購入時と同じかもしくは、少しでも値上がりしていれば返還要求はごく一部で会員として継続してくれるものと計算していたものが大きく狂ってしまったからです。
ゴルフ場は経営が困難となり、ファンドを目的とする投資会社に安値で買い叩かれ、ゴルフ場は存続するものの会員権はほとんど価値はなくなってしまったのです。
このような大激震の直撃を受けたにもかかわらず、ゴルフ場のシステムは大きな変化がなく今日まで来ているのです。この辺はちょっと不思議です。

買収されたところでも、生き残ったところでも、会員は年会費を払えば会員としてプレイできることが大きかったのです。いっそのことパブリックにしても良いのですが、会員がいることで新たな顧客開拓の必要もなく、年会費の収入は大きな収益源なのです。手放すことはできません。あるところは株券として返還され、利益が出ると配当もあるので退会せず残っている方も多いのです。
一方、ゴルフ場からすれば、倒産してしまうより民事再生で生き残れば会員権の価値はゼロに近いものになっても会員として存続できるなら預託金が大きく減額されても良いとしたのです。同時に経営も同じ経営者が継続できることから大きなシステム変更にならなかったのです。

顕著に変化があったのは、バブル期のようなプレイ料金が通用せず、生き残るためには来場者を必死に確保するために近隣のコースとの価格競争に陥りプレイ料金が半分、それ以上に安くせざるを得なくなったのです。
そして、プレイ費をこれ以上安くできない中、キャディ付きが当然であったプレイ方法をやめてセルフプレイを導入せざるを得ず、プレイ料金の減額で顧客を食い止めるという厳しい選択の結果でした。

キャディをいきなり外した結果、ゴルフ場は少し荒れた状態となりました。ガイドがいないためにプレイ時間が遅くなり、本来プレイヤーがやるべきバンカーの均し、芝生を削り取ったディボットの修復(目土)、グリーン上のボールの落下跡(ピッチマーク)の修復をキャディ任せにしていたため、それらをプレイヤーがやらなくなったからです。

事実上パブリックコースと言えるのに

このような会員制のゴルフ場のほとんどが経営を維持するために非会員(ビジター)を積極的に受け入れて、いまでは多くの会員制のゴルフ場でもビジターは予約ができパブリックのゴルフ場と同じようにプレイできるようになっているのです。会員制であれば会員の紹介もしくは同伴でプレイしなければできなかったものが、誰でも予約可能になったのです。会員制のシステムだけでは経営ができないくらい逼迫していたからです。
予約がネットでできるシステムが普及しゴルファーは価格やサービスを比較しながらプレイしたいコースを自由に選択できるようになっていったのです。誰でもがプレイしたいコースを選んでいくことができるなら、事実上パブリックコースと差がないのです。
でも、ゴルフをしない人たちから見れば、このような激変状態は分からないことであり、隔離されたゴルフ場は地元の人にとっては近くて遠い場所であり、ゴルフは遠くから来る裕福な人たちのするお遊びとみられていたのです。

しかし、ゴルフ場は料金、予約の自由度は大きく変わっているにもかかわらず基本的なプレイスタイルはバブル期と同じで、ドレスコードの厳守、9ホール終了後の食事の強要、プレイヤー以外の入場者の拒否、自分でバッグを担いだり、手引きカートでプレイすることを拒否してカートの使用を義務付けるところがほとんどで、どこでも同じゴルフのプレイスタイルがワンパターン化し、プレイの自由度もないことから新たにゴルフを始めた人たちから見るとものすごい堅苦しさを感じているのです。

変化できなかった理由

実は変えたくても変えられなかった理由があります。一つはクラブハウスの維持に固定経費がかなりかかります。クラブハウスはレストラン、会議室、浴場(男性用、女性用)、事務室、パーティ会場、大きなホテルと同じような機能を持つ施設です。昼食は来場者に利用してもらうことはレストランの維持には必要なことでできれば個人でプレイされるよりコンペという大会を受けることで表彰式というパーティも開催できます。プレイ費だけでは苦しい台所事情をレストランの売り上げでカバーしなければならないからです。
2つ目は乗用カートの採用です。顧客の年齢が平均して高くなったことも合わせて乗用カートによるプレイ方式もサービスの一環とされたのです。軽自動車くらいの価格のするカートを一度に数十台の購入となればかなりの投資額です。カートを使用してもらわなければ困るのです。それにカートは車なのである時期が来れば新しいものに交換する必要があります。リース料金もゴルフ場の大きな負担です。
ゴルフ場の経営は本当に厳しいのです。

Covid-19が変えたもの

現在、ゴルフ場の90%以上は営業をしていますが、感染症の予防のために営業するにあたってのゴルフ場協会からガイドラインが設定されてそれに沿った形での営業を要請されています。
これは従来の固定化されたゴルフ場のシステムを根底からひっくり返すようなものです。ガイドラインの内容はおおよそ次の通りです。

1、プレイスタイルの変更
 *18ホールするプレイの導入
*2サム(二人一組)の奨励
2、レストランの閉鎖
*事前予約などによる弁当の提供
*飲食料品の持込み可、テラスや屋外での飲食も可
3、浴室・ロッカーの閉鎖
*浴室・ロッカーの閉鎖
*浴室は閉鎖しシャワーのみ対応
4、乗用カートの使用について
*2名に1台
*カートのフロントガラスを開けたままで使用
*カートへの乗車人数の制限(運転者だけ乗車、他は歩き)
5、営業スタイルの変更
*プライベートコンペの受付停止
*セルフ化の推進(バッグの積み下ろしなど)
*早朝・薄暮プレイの廃止。スタート間隔の拡大
*入場時・会計時のソーシャルディスタンスの確保

今、ゴルフ場でプレイをしている人たち

ゴルフ場に話を聞いてみるとCovid-19の影響は入場者数でおよそ昨年同月対比でみると70%〜90%というものです。場所によっては予約が取れない状況のところまで出てきています。
外出自粛が叫ばれている中でも自身の健康とストレス解消のために細心の注意を払いながらもゴルフ場に来てくれる人はゴルフを日常に取り入れていた人たちでゴルファー層の中心的な部分の人たちと見ることができるのです。
今までのシステムに慣れていたはずの彼らはこの新しいプレイスタイルを率先して受け入れて、ゴルフを楽しんでいます。むしろ新しい発見、ゴルフの原点に触れたことでよりゴルフを楽しんでいるようです。
もし、このプレイスタイルがしばらく続くことを余儀なくされるのであれば、これをゴルフ場が望む、望まないに関わらずゴルフプレイの標準スタイルとして受け入れざるを得なくなります。

このプレイスタイルはゴルフの原点に近いもので、今まで社交だのレジャーだのスポーツだといろいろなゴルフのプレイの仕方、目的が混在していたものが一気に単純化されたからです。
これならゴルフというものが分かり易いはずです。「ゴルフをやろうよ、面白いから」と誘うことが何も臆することなくできます。お金がかかる、敷居が高い、プレイを楽しむまで時間が掛かる、といったネガティブな理由がなくなってぐっとプレイしやすくなるからです。

何が新しくなり、何が始まるのだろうか?

1、18ホールスループレイの定着化
2、プレイスタイルの選択肢の拡大
*競技者中心のプレイスタイルからの脱皮
*担ぎ、手引きカートの使用可
*飲食料の持込み可
3、プレイ料金の平均化
4、クラブハウスの利用の仕方
5、ゴルフ場の新しい利用法

次回はこの部分をしっかり書いてみます。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

松尾俊介

1949年12月23日生れ  神奈川県出身
東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。
その後1994年キャロウェイゴルフからのオファーを受け日本人初の正社員として契約。日本法人では広報担当責任者として6年間担当し、その後2014年までCorporate Relationsの担当責任者として勤務。主に対外的な渉外活動を行う。2015年からフリーとなる。
「日本のゴルフを面白くする」が新たな活動テーマ
キャロウェイゴルフ在職中はゴルフの普及や活性化のために幅広く活動。
◎ゴルフ市場活性化委員会広報責任者
◎一般社団法人日本ゴルフ用品協会 活性化委員、ジュニア委員
◎NPO日本障害者ゴルフ協会理事
◎北海道ゴルフ観光協会顧問
主な活動・著書
*著書:クラブが分かれば上手くなる!(スキージャーナル社)  
*取材編集:ゴルフの楽しみ方(講談社)