リーダーが求められる日本のゴルフ界

Covid-19が示唆しているもの

新型コロナウィルス感染症(Covid-19)は世界的に猛威をふるいゴルフ界も大きな影響を受け続けています。感染を防止するためには効果的なワクチンや治療法が確立されていないために日常的に行われていたすべての活動を止めて、人の行動、接触を極力避けることが唯一の防止策だからです。そこで4月7日に緊急事態宣言が出され、行動の自粛が求められました。

ゴルフ練習場やゴルフ場は休業要請の対象施設から外れているとはいえ、通常の営業はできず、顧客と従業員の健康に細心の注意を払いながら営業しているのが実情です。施設内で感染者がでると即営業停止となりしばらくは営業ができない状態が続きます。

プロのトーナメントも男女共、開幕から中止や延期が相次ぎました。アマチュアの大会も同様でプライベートコンペから地域のゴルフ大会、日本を代表する大会まで中止や延期が相次いでいて、この先どうなるのか先が見えない状況が続いています。

このような未曾有の危機に際した時、現状をつぶさに視察し情報を集め行動指針(ガイドライン)を示して進むべき方向とゴールを設定しなぜそれを行うかの説明をした上で実行に移すことがリーダーの役目だと信じます。

リーダーは平時の時は静かに状況を見ながら予定通りコトが進んでいるかをチェックするだけで、目立たない存在ですが、危機の時は先頭に立ち混乱状況で右往左往している状況からいち早く抜け出し、正しいと思われる方向へと舵を切る役目を担っています。

真のリーダーは自分の役割、立場が分かっている人で、それだけに仲間たちから尊敬されリーダーに推挙されるのです。

ゴルフ界においてはゴルフ関連の16団体が集まって組織されたゴルフサミット会議というものがあり、ここが率先してメンバーを招集しゴルフアーにはメッセージをゴルフ施設やゴルフ用品販売関連、そしてプロのトーナメントやアマチュアの大会などについてのガイドラインを作成して各団体に呼びかけ、統一した指針の中で行動できることがベストなのかもしれません。しかし、残念ながら日本ではサミット会議からは何も発信されませんでした。

海外では各国のゴルフ業界の中心となる団体が率先して状況を把握し、そこから得られた情報を開示ながらが行動のガイドラインを作成し、Covid-19の感染の拡大や収縮状況に応じた規制レベルを複数提示して行動していた点は業界としてまとまっている、組織として機能している感を日本のゴルフ関係者は強く受けたと思います。

なぜ、日本はできなかったのか

私にはゴルフ関連団体が16もあるにもかかわらず、それを統括する部門がないことが最大の要因と思います。そして、各団体は個々独立した形で存在するので、横(他の団体)との情報共有や連携がないので全体が一つの組織として機能できないからです。あたかも日本の役所と同じように縦割り的な形になっているからでもあります。

Covid-19の感染拡大という緊急の事態に対して各団体は会員のための指針や行動という内向きに対処を迫られる状況の中で、どこかが率先して全体を見てリーダーシップを発揮することはできないのです。ゴルフサミット会議はせっかく全てのゴルフ関連団体のトップが集まって行う会議なのですがゴルフ業界を取りまとめて活動していこうという基本的な考えがないためにリーダーが不在となり、日本のゴルフ界がカオス(混沌とした)となっているのです。

海外のゴルフ関係者からは「日本のゴルフはどこに話しを持って行ったらことが足りるのかが明確になっていない」という指摘を受けます。16ものドアがあればどれをノックしていいのか迷いますよね。日本のゴルフ界の玄関口がわからないので中に入りにくい状況なのです。

各団体とも、歴史や組織、人材などから日本ゴルフ協会(JGA)がやるべきでは、と思っているのか、それとも何か気兼ねしているのか、わかりませんがサミット会議が中途半端な状態のままを見れば、危機感があるとはこの段階においても感じていないのではとすごく不安です。

このままでは日本のゴルフ界は各団体の組織がそれぞれの思惑の中で活動を行うので日本のゴルフ界がどこに向かうのか、どのように発展していくのかが見えないのです。このような状況で一番不利益を被るのは日本のゴルファーなのです。

JGAは競技団体なのか、それとも…

日本ゴルフ協会(JGA)の基本はゴルフ競技団体、アマチュアの由緒ある日本を代表するゴルフの協会です。この点では誰も異論はないと思います。

ただし、組織の母体がJGA加盟コースというゴルフ場なのです。競技者という個人ではないのです。JGAは日本を8つのブロックに分けた地域のJGA加盟コースで構成される組織の上にそれを統括される形で存在しているものです。JGAの個人会員は地域の加盟コースのメンバーであることが基本的な条件となっています。競技団体ですが選手が主体となっているものではなく、加盟しているゴルフ場が正会員である点が特異な点です。

JGAの存在意義、目的はなんでしょうか?

JGAの約款、第3条は協会としての目的ですが、このように記されています。

この「法人は我が国におけるゴルフ界を統一し代表する」とともに、我が国のゴルフ規則制定などの最高機関として、ゴルフの健全な発展と普及を図り、もって国民体力の向上、社会、文化の発展並びに国際親善に寄与することを目的とする。

第4条は事業で10項目を挙げています。1〜9項目までは競技に関することですが10番目として、その他「目的を達成するために必要な事業」と記してあります。

JGAは約款からすれば競技団体であることは間違いないのですが、目的の最初には日本におけるゴルフ界を統一し代表するとあり事業も目的を達成するために行う、となっています。

日本のゴルフ界の将来を考えると統一した組織は必要

感染症という一つのウィルスがもたらした影響は世界を激震させています。

私たちはCovid-19の被害者という認識ではなく、これからはこのようなことが常に起こりうるものという認識を持って新しいやり方をこの貴重な経験から学ぶ時が来たと思います。

そのためにはいつどのような形で感染症や自然災害など大きな出来事が起こっても対処できる柔軟かつ多様性があり持続可能な組織や体制を作る必要に迫られています。

同時にCovid-19の影響で経済的な問題でゴルフができなくなる人が相当増えると予想されるからです。現状の中でもゴルフを積極的にしている人は多いのですが、経済的な影響が広く出てくるのはもう少し後になってからです。それに2025年には団塊の世代が75歳を越える年齢に達し今のペース以上にゴルフ人口が減少します。若年層や女性は思ったようにゴルフに興味を示していない現状もあり、今、抜本的な対策を取らなければ間に合わない、躊躇している時間などないのです。

新・日本ゴルフ協会構想

JGAがその目的に日本のゴルフ界を統一し代表とするのであれば、率先してその形をより明確にして行動に移す時期に来ていると思っています。16団体をあるべき形に統合するものです。

そのためには何かたたき台的なものが必要ですが自分としては(全くの私見ですが)このように考えてみました。

新しい統一された組織の一つの例(案)としては8つの部門にわかれます。

  • 競技部門(プロ、アマの競技全般の企画及び開催)
  • 施設部門(ゴルフ場、練習場などの施設)
  • 普及・育成部門(ゴルフアカデミーの構築、この中にプロ認定、インストラクター資格認定、ゴルフマネージメント業務の認定、ゴルフの普及活動)
  • マーケティング部門(協会としての活動戦略、ブランドの構築と管理)
  • 国際部門(海外のゴルフ協会との交流)
  • 用品用具部門(製造部門、小売部門)
  • 財務部門(財務に関するすべて)
  • 渉外部門(ゴルフ業界以外の団体や組織、企業との関係構築)

 

各部門の業務内容は次回書かせていただきます。

 

新しい組織がなぜ必要なのか

なぜ、そう思うのか、先走りすぎないか?今の日本では無理、まとめて引っ張って行く人がいないから、という声も聞かれます。

しかし、それぞれの組織の中にはこのような改革をしなければ、と考えている人たちも少なからずいます。その人たちが明日の日本のゴルフ界を牽引していく基礎を作る人たちです。考えるだけではダメでできることから行動に移さなければ、何も変わらないからです。

よく考えてみてください。

日本のゴルフ用品市場は世界のゴルフ市場の中でアメリカの44%に次いで世界で第2位の24%という規模を持つ(2018年データーテック調べ)もので、ゴルフ場数、ゴルフ用品市場も単一国家の規模としてもその雇用数も最大規模なのです。

しかし、その内情は厳しく従来のやり方では発展どころか縮小現象を食い止めることができない状況下にあることが明白となっているのです。

バラバラに機能している組織の集まりではダメなのです。早急に全く新しい組織を構築し、人心を一新して新しい時代にふさわしい活動をしていくしか方法はないのです。

新しい組織は米国やヨーロッパそしてアジアを始めとする国々にも影響を与える要素を持つだけでなく、優れた品質、開発能力を持つ日本の各種産業とも連携をとれば世界でビジネスチャンスを広げる可能性を持てるからです。

業界全体を網羅し、あらゆる事態にも対処できる柔軟で多様性に富み継続可能な組織を構築する、今がその時なのです。

いみじくもCovid-19が「新しい日常」を示唆したのなら、これを絶好のチャンスと捉え前進しようではありませんか。日本のこれからのゴルフの正しい発展と普及のために。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

1949年12月23日生れ  神奈川県出身
東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。
その後1994年キャロウェイゴルフからのオファーを受け日本人初の正社員として契約。日本法人では広報担当責任者として6年間担当し、その後2014年までCorporate Relationsの担当責任者として勤務。主に対外的な渉外活動を行う。2015年からフリーとなる。
「日本のゴルフを面白くする」が新たな活動テーマ
キャロウェイゴルフ在職中はゴルフの普及や活性化のために幅広く活動。
◎ゴルフ市場活性化委員会広報責任者
◎一般社団法人日本ゴルフ用品協会 活性化委員、ジュニア委員
◎NPO日本障害者ゴルフ協会理事
◎北海道ゴルフ観光協会顧問
主な活動・著書
*著書:クラブが分かれば上手くなる!(スキージャーナル社)  
*取材編集:ゴルフの楽しみ方(講談社)