可視化されたことを生かそう

赤坂 厚

新型コロナウイルスの世界的感染拡大、日本の感染者数増に伴う緊急事態宣言、そして解除。この3カ月、経験したことがない災厄に見舞われた。
その中で、今まで見えなかったことが見えてきた。確かに災厄ではあるが、その間に誰が何をしたか、何をしなかったか、など、今後のためにしっかり覚えておく必要がある。それを「ウイズ・コロナ」のこれからに生かしていかないといけない。
覚えておきたいことをいくつか、拾ってみた。
「安倍政権は国民が収めた税金を必要な時に国民に還元しないことが分かった」「国会議員・地方議員は、自分たちの収入だけはしっかり確保することが分かった」「都合のいい法案をどさくさに紛れて通そうとする政治が分かった」「マイナンバーが機能しないことが分かった」「リモートワークの普及で、出社しなくてもできること(人)が分かった」「自分の正義を振りかざして弱者を苦しめる人たちがいることが分かった」…。

これらはほんの一部で、世の中の動きの中でもっとたくさんの「分かったこと」があった。覚えておいて、次の行動に生かそう。SNSでの誹謗中傷など、法制化が必要なことも出て来た。

ゴルフ界で図らずも分かったこと

ゴルフ界にも多くの「分かったこと」があった。ゴルフ界ではゴルフ人口減、右肩下がりの業界の立て直しなどがここ数年、大きな課題となっている。ただ「こういうことができればいいんだが」「それはできないだろう」「やらない方がいいかも」「失敗したら困る」「景気さえ良くなれば」「プロのスターが出てくれば」といった先入観、既得権、希望的観測、決断力…そういった内側の事情で新しいことになかなか踏み切れなかった。
ところがコロナによって、事情が変わった。「図らずも」これまでアイデアや提案で止まっていたことが「やらざるを得ない」ことにもなった。

◆ゴルファー
「スループレーの良さが分かった」。これまで、北海道、沖縄を除くと、日照時間や組数の関係もあり、折り返しの待ち時間ができてしまうため、コースが空いているときに「行ってもいいですよ」という形以外はスループレーを認めていなかった。レストランや風呂をクローズしたこともあって「スループレーしかだめ」というゴルフ場もでてきた。スループレーの経験がなかったゴルファーは、実際にやってみて「これはいい」と感じた人も多いはずだ。午前中に回って、午後からは仕事などの時間ができる。時間短縮という課題を克服する方法が実体験として見つかった。
「1人でもラウンドできることが分かった」。「3密」対策として、またコンペ中止が相次いだことで1人でも多くの集客のため、1人プレーを受け付けたゴルフ場も多かった。これまで1人ではコースのメンバーでもない限りは難しかったが、1人プレーを認めるゴルフ場がコロナ後も残るかもしれない。

◆ゴルフ場
「緊急事態宣言下でも『ゴルフをしたい』人がいることが分かった」。個人客として一部のゴルファーは宣言下でも積極的にゴルフをした。自粛要請の県外移動もしている。ゴルフは「3密」になりにくい環境なのはゴルファーには理解できても、ゴルフをやらない人に「ゴルフは不要不急なのか」という疑問を持たれたことは確かだ。パチンコと同じとは思わないが、「何が何でもやりたい」という気持ちを抑えきれない人のために、多様な予約、プレー時間の設定や、可能ならばハーフプレーだけではなく、ホール数の設定などをしていきたい。

◆練習場
「屋外練習場はいい運動になることが分かった」。大規模な練習場は休業したところもあったが、屋外練習場は平日も人が入ったところが多い。練習場はもちろん技術を磨く場ではあるが、リモートワークで自宅勤務が長くなり、推奨された散歩など運動の延長として利用した人も多かったと考えられる。背景音はちょっと気になるが、携帯電話さえあれば仕事になる人も多い。今後もリモートワークは残るだろう。平日需要を掘り起こしたい。

◆レッスン
「ネット配信が有効だと分かった」。レッスンは「3密」になる可能性があり、インドア練習場も多いこともあって「リアル」は壊滅と言われた。レッスンをネット配信するプロも多く出て来た。「リアル」だと対応できる人数は限られるが、ネットだと地理的距離に関係なく見てもらえる。課題は、それをどう「収入」に結び付けるか。

◆ショップ
「練習器具が売れることが分かった」。巣ごもり対策として、家でもできる練習器具がよく売れたという。2カ月半ほどの在宅という特殊な環境の中で、コロナをきっかけ(言い訳)に買った人が多かったことは確かなようだ。家でもちょっとした練習をしたいと思っている人が潜在的にいる。練習場へ、ゴルフ場へ迎え入れたい。

やるべきことが浮かんできた

これらもほんの一部だが、これまで想像やアイデアの域だったことが「可視化」されたことは多い。

コロナ禍をきっかけに「ゴルフをする」ことがあらためて見直された気がする。これはゴルフというスポーツの基本でもある。感染対策の上で、飛ばすことばかりに目を向けるのではなく、幅広く「ゴルフを楽しむ」手助けになることをやっていく。これまでよりは、目標が明確になった。

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赤坂厚

1959年北海道札幌市生まれ。札幌南高―北海道大学工学部卒。82年日刊スポーツ新聞社入社。同年から計7シーズン、ゴルフを取材した。プロ野球巨人、冬季・夏季五輪、大相撲なども担当。2012年、日刊スポーツ新聞社を退職、フリーに。
著書に「ゴルフが消える日」(中公新書ラクレ)、「ビジネス教養としてのゴルフ」(共同執筆、KADOKAWA)
日本プロゴルフ協会、日本プロゴルフ殿堂、国際ジュニアゴルフ育成協会のオフィシャルライターでHPなどに執筆。「行ってみました世界遺産」(https://世界遺産行こう.com/ )「ゴルフ上達への18ホール」( https://www.golflesson90.com/)を公開中。
【東洋経済ONLINEより】
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