ゴルフが高齢者の認知に及ぼす効果

6月23日に公開された学術誌<Journal of Epidemiology and Community Health>に、Effects of golf training on cognition in older adults: a randomised controlled trial.(高齢者の認知に及ぼすゴルフトレーニングの効果:ランダム化比較試験)という論文が掲載されている。この論文はおそらく3月にメディア等で話題となった実験であると思われる。

これまでの多くの先行研究で、身体活動や生活習慣が認知低下や認知症を予防する可能性があることが示されてきた。しかしながら、最適なタイプの運動やスポーツはどの様な内容や種類であるか、などについては不明な点が多い。本研究はこうした背景から高齢者におけるゴルフトレーニングプログラムによる認知機能を検討することを目的としていた、とされる。

2016年8月から2017年6月の間にランダム化比較試験を実施し、65歳以上の106人が被験者となった。被験者は、24週間(90-120分/週)「ゴルフトレーニング群」または「健康教育のみのコントロール群」のいずれかにランダムに割り当てられ活動した。

被験者に対する検査には、認知機能については、タブレット型 PC 上でNational Center for Geriatrics and Gerontology functional assessment tool(NCGG-FAT)を用い、ミニメンタルステート検査(Mini-mental State Examination:MMSE)、単語記憶テスト、Trail Making Test や Symbol Digital Substitution Test(決められた時間内に同じ形の図形をいくつ見つけられるかといったテスト)が、主要なアウトカム指標とされた。

また、副次的な成果指標として、身体的能力(歩行速度,グリップ強度等)の変化と、高齢者用うつ尺度であるGDS(Geriatric Depression Scale)スコアが調べられた。

「記憶のテスト」として実施されたのが、『ロジカルメモリ(LM)』であった。LMとは短い文章(刺激文A と刺激文B)の「直後再生」および「遅延再生」などの課題からなる記憶検査であり、国際的に、この検査をひとつの操作的基準として用い、軽度認知障害(MCI)が選出されている。

「ゴルフトレーニング群」では、全てのLMが対照群よりも有意に改善されたとされる(直後再生;p = 0.033、遅延再生;p = 0.009、等)。しかし、MMSE、単語記憶、Trail Making Test 、Symbol Digital Substitution Testのスコアに有意な変化は観察されなかった。また、グリップ強度や歩行速度、またはうつ尺度においても有意な変化は観察されなかった。要するに、この研究においては、ゴルフによる運動介入は、高齢者のLM改善は観察されたが、他の認知試験では有意な変化がなかった。

この論文では、今回の実験で見られた効果が、高齢者における軽度の認知障害またはアルツハイマー病の発症の遅延に関連するかどうかを決定するために、さらなる追跡調査が必要である、と結論付けられている。

 

<参考文献>
Shimada H,. et al.:Effects of golf training on cognition in older adults: a randomised controlled trial.  J Epidemiol Community Health. 2018 Jun 23

 

 

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北 徹朗

<現職>武蔵野美術大学 身体運動文化准教授・同大学院博士後期課程兼担准教授、サイバー大学 IT総合学部 客員准教授、中央大学保健体育研究所 客員研究員  <学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程  <主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事