稲森佑貴プロに「真っ直ぐに飛ばす秘訣」を聞いてみた

稲森佑貴(いなもり ゆうき)

1994年生まれ。鹿児島県出身。幼少より自宅にある練習場でゴルフを始める。『日本シニアオープン』にも出場したこともある父親兼隆さんの指導でめきめき腕を上げ、2011年高校2年の時にプロテストに見事一発で合格。

14年シーズン、出場わずか7試合でシードを獲得。以降、賞金ランクは年々上昇。そして18年、初優勝を『日本オープン』のビッグタイトルで飾った。3日目に3打差の首位に立つと最終日は一度もフェアウェイを外すことなく68にまとめて逃げ切った。賞金ランクは3位、8530万円を獲得。フェアウェイキープ率73.69%は歴代最高記録だった。

19年は『全英オープン』に出場、予選を通過して4日間を戦い抜いた。そして、20年『日本オープン』では、最終日最終組での谷原秀人選手との競り合いで、17番ホールで並び、18番最終ホールでバーディを奪い、見事逆転優勝を飾った。フェアウェイキープ率は5年連続1位。ショットの正確性はツアーでも際立っている。

 

以下のインタビューは、18年の『日本オープン』優勝後の201812月に行った。

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パターのストロークの感覚でショットすれば真っ直ぐに飛ぶ

 児玉 稲森プロは過去3年間フェアウェイキープ率1位を維持しています。フェアウェイキープをすることの大切さについて稲森プロの考えを教えてください。

稲森 これは私たちプロだけでなく、アマチュアゴルファーの方々にも言えることだと思うのですが、なんといっても、どのクラブでもフェアウェイから打てば易しくなるというところでしょうね。僕の場合は、プロのなかでも(ドライバーが)飛ぶほうではないので、コントロール重視を考えればフェアウェイキープは必須要素です。もちろん、フェアウェイに球を置いておけば、長いクラブを握っても易しいだけでなく、距離の計算もしやすいので、フェアウェイキープはアマチュアゴルファーの方にとっても大切だと思います。

児玉 つまり、稲森プロにとっては飛距離が出ないことをカバーするためには、ほかのどのプロよりもフェアウェイキープは大切な要素であるという訳ですね。だから、ティーショットでドライバーは真っ直ぐ飛ばそうという意識が働いているのですね。

稲森 いえ、実は僕はドライバーについては真っ直ぐ打とうという意識はないですね。

児玉 そうなんですか。それはどういう理由で?

稲森 僕は曲がってもいいような場所に打っています。僕の場合、元々はドローが持ち球なんですが、現在はフェードに変えています。ただし、ラウンド前の朝の練習場でフェード気味のボールが出ていたら、コースに出たときに右と左に半分に分けて、やや左側に打っていけばフェアウェイにボールは止まってくれます。そうすればセカンドが易しくなるというわけです。

児玉 なるほど。たとえ自分の球筋通りにボールが飛んでいかなくても傾向さえつかんでおけば、そのボールが曲がってしまってもフェアウェイに止まるような保険をかけることができるということですね。

稲森 おっしゃる通りです。

児玉 それでは、感覚的に真っ直ぐなドライバーショットを打つコツを教えてください。

稲森 実は、僕の場合でも、実際真っ直ぐに飛んでいく確率はせいぜい3分の1か、4分の1程度なんですよ。しかし、ほぼ真っ直ぐに飛んでいってくれるために、僕が感覚として大事にしているのは、フェース面を変えないようにすることです。ちょうどパターみたいな感覚で打つことですね。実は、『パターみたいな感覚で打っているね』って言われたのは石川遼プロからなんですけど、言われてみたら自分でもそうだなって気づいて、現在はパターの延長線のような感覚で打っています。だから、アマチュアゴルファーの方もフェース面が打つ前に変わらないようにすることを大事にしてほしいですね。もっと言えば、真っ直ぐに引いて真っ直ぐに下ろすという感覚ですね。

児玉 なるほど。それが1番単純で易しいスイングであり、ボールが真っ直ぐに飛んでいく確率も高いっていうわけですね。

稲森 真っ直ぐに飛ぶボールを打つためには、バックスイングでアウトサイドには引かないことだけは押さえておいてほしいですね。ストレートに引いてストレートに下ろすか、インサイドに引いてストレートに下ろすことを守っていただきたいですね。

ロングホールでは得意な距離に止めてウェッジでベタピンに

児玉 わかりました。それではトラブルショットについて聞かせてください。フェアウェイキープ率が断トツ1位の稲森プロでもラフや林の中に入ってトラブルになることがあると思うのですが、そんなときに留意していることはなんですか?

稲森 トラブルに見舞われたとき、僕はどちらかというと、無謀なことはなるべくしたくないんで、常にスコアを縮めることを最優先して安全な方法でグリーンにできるだけ近いところに打つことに努めます。つまり、目の前の状況に応じて、クラブの選択と打つべきボール軌道についてあらゆることを想定しながらその状況における最善策を選択します。

児玉 わかりました。とにかくリスクの少ない選択をすることが大事なんですね。さて、私も時々トーナメント会場で稲森プロについて回ることがあるのですが、例えばロングホールで2オンできるにもかかわらず、敢えてグリーンを狙わずに、100ヤード地点にボールを置く場合を目にするのですが、そのあたりのことについて教えてください。

稲森 僕は『グリーンにできるだけ寄せよう』という考えよりも得意な距離に残してウェッジでベタピンに寄せるという作戦を優先させます。僕のようなドライバー飛距離がせいぜい260270ヤードの選手の場合、第2打は結構距離が残るので、敢えて2オンを狙ってうまくいかずに距離が残るのが嫌なので、自分が得意なピンまでの距離に第2打を打つこと多いです。だからアマチュアゴルファーの方も2オンが無理であれば、ピンからどのヤーデージに止めればいいかをあらかじめ考えておいて、その距離にボールを止めて3打目で勝負することをお薦めします。

児玉 なるほど。これはアマチュアゴルファーにも貴重なアドバイスだと思います。それではショット前のルーティンについて聞かせていただきたいのですが、稲森プロはアドレスをしてショットをする前に素振りをフルスイングでするルーティンを身につけていますが、あれは随分前から行なっているのですか?

稲森 そうですね。高校時代から身についているルーティンですね。私のルーティンはティーアップから始まります。コースレイアウトにより、ティーアップの位置を決定します。そして、ボールの後ろから狙うポジションをしっかりと確認します。その後アドレスのポジションに動いて素振りをしたあと、正しいアドレスをとってからバックスインクを開始します。

児玉 やはりルーティンは同じ動作、同じリズムで行なうことがショットの精度を高めるためには大事なんですよね。

稲森 僕の場合、どうしてそのルーティンを身につけたかはわからないですが、なんとなく現在のルーティンになってしまっていたというのが実感です。身体の一部として染みついているルーティンをきっちりとやることが、安定したショットを支えているんだと思います。

ラウンドでミスしたクラブの練習に精を出そう

児玉 稲森プロは、ショートゲームの重要性をどのように捉えているのですか?

稲森 これはアマチュアゴルファーの方もそうだと思うのですが、アプローチに自信を持っていれば、たとえミドルホールで第2打でグリーンを外しても、パーチャンスは残っています。つまり、プレーの引き出しか増えるんです。グリーンを外してもアプローチでピンに寄せてパーをとるチャンスが増えるので、メンタル的にも安定してプレーできると思います。

児玉 なるほど。実際にトーナメント当日に行なっているアプローチの練習法を教えていただけますか。

稲森 僕の場合、練習はまずアプローチから入ることが多いですね。初めの10球くらいは身体をほぐすためにポーンポーンと流しながら打って、そこから先は本番感覚で真剣に打つという感じですね。もちろん、サンドウェッジだけでなくピッチングや8番アイアン、9番アイアンで転がすような練習もします。最初の方の練習は、端から見たら遊んでいるようにみえるかもしれないですが、遊び感覚でリラックスしてやったほうがいいと思います。

児玉 アプローチの練習はプロだけでなくあらゆるレベルのアマチュアゴルファーにとって重要であるということですね。それと、これは私が常々感じていることなのですが、ゴルフ練習場でドライバーを振り回しているアマチュアゴルファーがとても多いのですが、練習場でのそれぞれのクラブの練習における稲森プロのアドバイスをお願いします。

稲森 ゴルフを始めたばかりの方は、やはり飛びの快感を味わうためにドライバーの練習に精を出す人も多いと思うのですが、それはそれでいいと思います。実際僕も10代の頃はそうでした。しかし、コースに出てラウンドすると、それ以外のクラブの大切さを実感できるはずです。

児玉 確かにショートホールを除いた14ホールでの第1打はドライバーで打つ確率が高いためにドライバーを握るアマチュアゴルファーが多いのが現実ですが、必ずしもそれがスコアメイクには直結しないということですね。

稲森 はい、コースに出ると、自分がどのクラブが苦手であるかがわかると思うので、それを重点的に練習することに意味があると思います。ラウンドにおける苦手の部分をちゃんと持って帰って練習場でそれを克服する。この心構えが大切だと思います。

児玉 わかりました。それではパターの重要性について聞かせていただけますか?

稲森 私の場合、スタートする直前に3040分かけてパット練習をします。ショートパット、ミドルパットを中心に行ない、途中でロングパットをして残った距離のショートパットをする。そんな感じですね。

下りのパットは決してショートさせてはいけない

児玉 なるほど、さまざまな状況でパットをすることが大事なんですね。なにかアマチュアゴルファーのためのパットに関するアドバイスをお願いできますか?

稲森 真っ直ぐに打ち出すことが大事なので、その練習をしてほしいです。バックスイングに関しては真っ直ぐに引くのは難しいので、打ったあとのフォローを真っ直ぐとることが大事です。ただし、あくまでもそれは練習で徹底的に身につけるもので、実際ラウンドではあまりそのことを考えないほうがパットは入ると思います。

児玉 わかりました。それと『パットはカップを必ずオーバーさせろ!』という教えがありますね。それについてのコメントをお願いします。

稲森 そうですね。これは当たり前のことなんですが、カップに届かなければ絶対に入らないわけですから、カップをオーバーさせることは必須です。僕はカップをオーバーするのが1メートル以内なら許容範囲であると考えています。もちろん、例えば15メートルのロングパットなら、カップの周囲1メートル以内にボールを止めることが目標になりますが、それよりも短いパットなら極カカップをオーバーさせていただきたいですね。

児玉 それは上りのパットでも下りのパットでも同じですか?

稲森 上りのパットならショートしても次のパットも上りのパットになるので3パットすることはほとんどありませんが、問題は下りのパットですね。下りのパットはショートすると次のパットも下りのパットが残るので必ずオーバーさせて、返しが上りのパットになるようにしてほしいですね。

児玉 わかりました。最後になんでも結構ですから、スコアメイクにとって重要なことについてアドバイスをお願いします。

稲森 そうですね。ショートゲームの大切さを自覚して練習に励むことですね。さきほども触れましたが、自分の弱点をラウンドで見つけ出してそれを徹底的に練習することが大事です。あとは、意識的にできるだけフェアウェイにボールを止めることに努めてほしいですね。

児玉 どうもありがとうございました。

 

※出典『ゴルフIQ が高まる秘策“メンタルスコア”CARD 』児玉光雄著(東邦出版)

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児玉光雄

1947年兵庫県生まれ。京都大学工学部卒業。UCLA大学院卒業。修士号取得。82年米国オリンピック委員会にて客員研究員としてバイオメカニクス、メンタルトレーニングの研究に従事。94年より井戸木プロを皮切りに、これまで30人以上にプロゴルファーのメンタカンセリングを務め、現在も数人のプロゴルファーのメンタル面のバックアップをしている。現在追手門学院大学客員教授。日本スポーツ心理学会会員、日本ゴルフ学会会員。スポーツに関する著作も多くゴルフ関連の著作を含めて150册の著書がある。年間7~10回のペースでトーナメント会場を訪れ積極的に取材活動を行っている。今後メンタルトレーニングの分野を中心に積極的にゴルフ関連の執筆を進めて行く。
主な活動・著書
『一日5分!ゴルフメンタルでもっと上手くなる』日東書院
『「一日5分でシングルになる!ゴルフメンタル』池田書店
『なぜゴルフが練習しても上手くならないのか』東邦出版
『「なぜゴルフはナイスショットが「絶対」に再現できないのか』東邦出版