香妻陣一朗プロにスコアをうまくまとめる秘訣を聞いてみた

香妻陣一朗(こうづま じんいちろう)

1994年鹿児島県生まれ。2歳のころ父親の影響で初めてクラブを握り、2012年に松山英樹プロらはともに世界アマ代表に選ばれ、この年プロに転向。2016年にチャレンジツアーで初優勝。この年『マイナビABCチャンピオンシップ』で4位に入り。初シードを確定させた。そして、2020年11月三井住友VISAマスターズトーナメントで最終日最終18番ホールの逆転イーグルで、見事初優勝。特にバンカーショット(2018年度サンドセーブ率3位)とパット(2018年度平均パット4位)には定評がある。姉は女子ツアーで活躍している香妻琴乃プロ。

 

以下のインタビューは2018年12月に行った。

ティーショットを成功させる心構えとは?

児玉「今回は実際のラウンドでスコアをうまくまとめる秘訣について香妻陣一朗プロにお話を聞いてみたいと思います。まず、ティーショットでドライバー以外のクラブを選択するときのヒントについて教えてください」

 

香妻「私が普段から気をつけていることは、飛んでいく地点をしっかりと観察してドライバーを使うか、フェアウェイウッドを使うかを決定することです。ボールが止まるポジションにハザードがあったり、フェアウェイが狭いときには迷わずスプーンを握ります。私の場合、少なくとも2割の確率で、ドライバーの代わりにフェアウェイウッドを握ります」

 

児玉「ティーショットでは必ずしもドライバーを使う必要はないのですね。それでは、ティーショットで注意すべき点を教えてください」

 

香妻「まずターゲットをしっかり決めて、自分の球筋でそのターゲットをひたすら狙いにいきます。私の持ち球はドローですけれど、もちろんホールによってはフェードが有利なホールもあるので、フェードを打つ練習も積極的にしています。まずボールの後ろから目の前の景色にこれから打ちたいボール軌道を描く。このことをしっかりと遵守してほしいのです」

 

児玉「わかりました。まず球筋をしつかりイメージしてその軌道にボールを乗せる感覚が大事なんですね。それではショット前のルーティンの話に移りましょう。私はショット自体よりもむしろショット前のルーティンが安定していることのほうが大切だと考えています。香妻プロにとってティーショットにおけるルーティンの大切さについて教えてください」

 

香妻「ルーティンに関しては、常に同じような動作とリズムを維持することを心掛けています。僕の場合、素振りをしたあとこれから打つボールの弾道を決めて3歩でアドレスに入ります。そして、左手でボールの後ろにクラブヘッドをセットしてからワグルを経てバックスイングを開始します。アマチュアゴルファーの方には、ルーティンでは、できるだけ同じリズムで同じ動作を実行してもらいたいですね。あとは実際のショットで、とにかく余計なことを考えないでフィニッシュまで振り切ることが大切です」

 

児玉「なるほど。ルーティンにおいては自分なりの仕草を決めてしっかりとそれを同じリズムで行なうことが大事なんですね」

 

香妻「アマチュアゴルファーの方はボールの後ろからのボール軌道をイメージ出しにあまり時間をかけないですが、その作業がほとんどボールの行方を決定するわけですから、きっちり行なってほしいですね。アドレスをしたときにちょっと右に行きそうだな、左に飛んでいきそうだな、と思ったときにはいったんアドレスを外してやり直してください」

 

児玉「わかりました。これは私が常々感じていることなのですが、ゴルフ練習場でアマチュアゴルファーの方がドライバーの練習をしているシーンをよく目にしますが、香妻プロはトーナメント当日どんな練習をしていますか?」

 

香妻「僕の場合、ショット練習ではドライバーの練習はせいぜい2割程度です。特にアイアンの練習に精を出します。アマチュアの方もドライバー一辺倒の練習をもう一度考え直してスコアを向上させるためのスコア寄与度に応じたクラブの練習をしていただきたいですね」

 

児玉「スコアに影響を及ぼす度合に応じて練習時問を配分するという当たり前の原則を遵守することが大事なんですね。それでは、グリーンを狙うとき、香妻プロはどんなことを考えていますか?」

 

グリーンを狙う際に心掛けるべきこととは?

香妻「常に先を読むことがスコアを向上させる大きな要素です。例えば、ピンが右端に切られているとき、右に外すとピンに寄らない状況では決してピンサイドに打たないことが鉄則です。グリーンセンターに乗せておけば2パットで上がれる確率が高いのでそんな状況では迷うことなく、僕はその選択をします。アマチュアゴルファーの方は原則としてピンがどこに切られていようと、グリーンセンターを狙っていただきたいです」

 

児玉「深いラフに入ったとき、アマチュアゴルファーにはどんな心構えが有効ですか?」

 

香妻「例えば、ピンまで150ヤードの深いラフに入ったボールはアマチュアゴルファーの方はハンディがシングルの方でなければ、花道の一番いいところに出してアプローチ狙いでパーをとる作戦をお薦めします」

 

児玉「香妻プロも林の中にボ~ルを打ち込むことがシーズンに何度かあると思いますが、そんなときどんなことを考えていますか?」

 

香妻「僕の場合は、前が開いていて、確率が5割なら敢えてグリーンを狙いにいきます。ただし、その選択がうまくいかなくて状況がより悪くなるようなら、迷わずレイアップします。これから打つショットだけでなく、その次のショットまで想定して総合的に判断するということです。しかし、アマチュアゴルファーの方の場合は、僕たちプロのようなショットの精度がないわけですから、まずレイアップすることを最優先に考えていただきたいですね」

アプローチショットを成功させるための秘訣とは?

児玉「私も含めてアマチュアゴルファーはプロトーナメントを見ているため、自分の技術を度外視して無謀なショットを試みる傾向があるのですが、やはりレイアップを選択する勇気がアマチュアゴルファーには求められるのですね。さて、アマチュアゴルファーはパーオンする確率が低くてグリーン周りからのアプローチショットをすることが多いのですが、このショットに関してなにか良いアドバイスはありませんか?」

 

香妻「僕がアプローチショットで一番重要視しているのはボールの落とし場所ですね。感性を精一杯働かせてカップに寄る理想のボール軌道を描いて落とし場所を決めて、そのイメージ通りのショットを打つことに專念します。アマチュアゴルファーの方もぜひイメージを働かせてアプローチショットを成功させてください」

 

児玉「アブローチのボール軌道もその状況に応じて変えるべきなんですか?」

 

香妻「例えば、グリーンエッジから30ヤード離れたバンカー越えの深いラフにあるボールを打つときはフェースを開いて高い弾道のボールを打つことに努めてください。ただし、同じグリーンエッジから30ヤードでもフェアウェイにボールがあってバンカーのない花道の延長線上にピンがある場合は、リスクの少ないランニングアプローチを選択してほしいですね」

 

児玉「それ以外にも香妻プロがアプローチショットで球筋を変えている状況を教えてください」

 

香妻「僕の場合、同じ花道にボールがある場合でも、2段グリーンでピンが奥の一番高い場所に切ってあるときには高い弾道のアプローチ、そして同じ奥に切ってあっても平坦なグリーンの場合はランニングアブローチを選択します。状況に応じて失敗するリスクの少ない選択をすることがメンタルスコアを縮める重要な要素です」

 

児玉「なるほど。スコアメイクを重視してアプローチショットも変化をもたせることが大事なんですね。香妻プロは2017年度のサンドセーブ率3位(61・11%)という成績を残したバンカーショットの達人だと思うのですが、簡単で結構ですから、バンカーショットの距離の出し方の秘訣を教えてください」

 

香妻「距離の出し方は振り幅を変えると楽になります。アマチュアゴルファーの方にアドバイスしたいのは、グリップを緩めないでフェースを開いてウェッジのバンスで砂を勢いよくとること。その感覚を大事にして練習を籟み重ねさえすれば、バンカーはライも安定しているし、それほど難しくないショットになるはずです」

 

パットの達人になるための練習法について考えてみよう

児玉「それはバンカーショットに苦しむ一般ゴルファーにとつて、勇気を与えられるアドバイスですね。それでは最後にパットのことについて教えてください。香妻プロは2018年度の平均パット数4位(1.7418)という素晴らしい成績を収めていますが、パットの練習ではなにを心掛けていますか」

 

香妻「これはあくまでも僕の考えなのですが、ロングパットの練習がとても大切だと思います。アマチュアの方でも3パットの原因はファーストパットであるロングパットのミスが原因だと思うんです。だから、スコアをまとめるには、ロングバットの練習に精を出してもらいたいと思います。もちろん、僕は試合前の練習はずっとロングパットの練習をします。トーナメント当日、ショット練習のあとに僕はパット練習を30~40分くらいかけて行ないますが、最初20~25分くらいロングパットでタッチを合わせるのが、僕にとってとても大切な練習メニュ~です。ロングパットでは、カップの周囲1メートル以内に寄せることを目的に練習に精を出しください」

 

児玉「つまり、ロングパットの距離感を磨くことにより、3パットをなくすという発想ですね。ストロークの際になにか心掛けていることはありますか?」

 

香妻「僕にとって大切な意識は、パターの10センチ先のスポットにボールを出すことに集中することです。『カップを狙う』という意識よりも、ライン上の10センチ先に最適なパターヘッドの速度で球出しをするという感覚を大切にしています。この練習を意欲的に行ないます」

 

児王「正しいストロークの軌道を徹底することが大事なんですね。ショートパットで心掛けていることがあれば教えてください」

 

香妻「ロングパットの練習のあと、スタート前の最後の10~15分かけてショートパットのストレートのラインで正しいライン出しの練習をします。ショートパットの練習に関しては、僕自身はスライスラインやフックラインの練習はあまりやらないです。ストレートラインの1メートルのパットを繰り返し練習して、それがきっちり入ればいいという考えです」

 

児玉「なるほど。それではストレートではないラインのパットの大切なポイントは何ですか?」

 

香妻「スライスやフックのラインで大事なことは、まず入念にライン読みをしてボールがカップに入る軌道を決めることです。これをイメージすることに時間をかけて最適の速度でそのラインに乗せて打つという感覚ですね」

 

児玉「つまり、ラインのイメージを描くことに意識を注ぐことが大事なんですね」

 

香妻「はい。それとこれは当たり前のことなのですが、パットはカップをオーバーさせる感覚を持つことが大事です。たとえ1メートルオーバーさせても普段から1メートルのパットの練習さえしておけば、入るわけですから、カップをオーバーさせてください。当たり前のことですが、ショートすればそのボールは100%カップに入らないのですから、こんなもったいないことはありません」

 

児玉「やはりプロだけでなく、アマチュアゴルファーも果敢にカップをオーバーさせる勇気が必要なんですね。どうもありがとうございました」

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

児玉光雄

1947年兵庫県生まれ。京都大学工学部卒業。UCLA大学院卒業。修士号取得。82年米国オリンピック委員会にて客員研究員としてバイオメカニクス、メンタルトレーニングの研究に従事。94年より井戸木プロを皮切りに、これまで30人以上にプロゴルファーのメンタカンセリングを務め、現在も数人のプロゴルファーのメンタル面のバックアップをしている。現在追手門学院大学客員教授。日本スポーツ心理学会会員、日本ゴルフ学会会員。スポーツに関する著作も多くゴルフ関連の著作を含めて150册の著書がある。年間7~10回のペースでトーナメント会場を訪れ積極的に取材活動を行っている。今後メンタルトレーニングの分野を中心に積極的にゴルフ関連の執筆を進めて行く。
主な活動・著書
『一日5分!ゴルフメンタルでもっと上手くなる』日東書院
『「一日5分でシングルになる!ゴルフメンタル』池田書店
『なぜゴルフが練習しても上手くならないのか』東邦出版
『「なぜゴルフはナイスショットが「絶対」に再現できないのか』東邦出版