コロナ禍で創意工夫が求められるゴルフ場

コロナ禍でアウトドアスポーツであるゴルフが注目を集めている。9月に発表された株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの8月のゴルフ場送客件数では、前年比125%超えを記録したほど、プレーをする人が増えている。このような状況下で、会員権価格はどうなっているか、また、ゴルフ場ではどのような取り組みが行われているのかについて、関東ゴルフ会員権取引業協同組合員で、タクト株式会社の大野良夫代表取締役に話を聞いた。タクト株式会社は2006年設立。

プレーヤーの数が増えているとのことですが、現時点で日本にどのくらいのゴルフ場があるのですか。
「1990年には約2450のゴルフ場がありましたが、閉鎖などもあり、現在では約2200のゴルフ場が営業しています。そのうち約200がパブリックコースで、東京ゴルフ倶楽部のように株主会員制というコースが約180コースほどになります」

ゴルフ場はどのように収益を上げているのですか。
「パブリックコースや株主会員制のコースを除いた約1800のコースのほとんどが、プロモーションや集客のために、予約サイトを利用しています。これは来場者1人につき、成果報酬を支払うというものです。年間で4万人ぐらいを集客が見込まれる18ホールのゴルフ場でにおいて、そのうちの4割程度に当たる約1万5千人はゴルフ場予約サイト経由での集客というところも多いです」

2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災の時と比べて、今回のコロナ禍で会員権価格の推移として特徴的なことはありますか。
「会員権価格は、1990年2月からずっと下がり続けています。リーマン・ショックの時ですが、前年の2007年から、すでに影響が出ていました。そして、それ以降は下げ止まり傾向が続いている状況です。また、東日本大震災の際には、会員権の売買そのものが不謹慎と思われ、商材が出てこないという時期が秋頃まで続きました。
価格の変動としては、2011年に安倍晋三前総理が就任した時に、インフレも影響して、一部の名門コースで価格が一時的に上がったことがありましたが、特に大きな動きは見受けられません」

プレーヤー数が増えていくことで、会員権価格は上がっていくと考えますか。
「個人的には、現在の価格が適正価格と考えています。現在、プレーフィーの割引が多くのゴルフ場で行われていますが、当初はメンバーが自身のゴルフ場にゲストを招待する際に、ビジター価格が高いからということで、メンバーにもっと同伴プレーヤーを連れてきてもらえるようにと割引が行われるようになりました。それが、ゴルフ場予約サイトにも出るようになり、メンバーとビジターでのプレー代の差がほとんどなくなってしまいました。
会員権価格と名義変更料を払ってメンバーになることを考えると、それに見合っただけの魅力のあるゴルフ場が、現在では残念ながら少ないです」

これからゴルフ場が求められることは?

コロナ禍でゴルフ場は変わったと思いますか。
「緊急事態宣言中など、ゴルフ場で働くスタッフにとって、今後について再考する機会があったと思います。今までは、支配人らのトップダウンで全てのことが決まっていたといたゴルフ場が多かったという話を聞きましたが、最近は、現場のスタッフから改善案を募っているというところも増えてきています。
また今後は、人件費の削減なども考慮し、スタッフの方もフロントなど1つの役割を担当するだけではなく、持ち回りで他の業務ができるようにと、1人1人のスキルアップが求められていくようになると思います」

今後、ゴルフ場はどのような取り組みを行っていくべきか。
「スペースの有効活用は1つの重要なポイントだと考えます。クラブハウス内のショップに、ゴルフウエアの取り扱いがあるのにフィッティングルームがないなど、お客さんの目線に立ってみると改善点は多く見受けられます。プレー代や飲食費以外のところにも目を向けてみることは大事なのではないでしょうか」

大野さんが面白いと思った物がありますか。
「御殿場方面のゴルフ場では工夫をしているところが多く見られます。例えばグリップメーカーと組んで、キャディマスター室にサイズ、カラーバリエーションと豊富な種類を取りそろえ、交換サービスを行っているという事例があります。
それらのゴルフ場では、お客さんの両面テープの巻き方や、色など好みを購入履歴として残し、新商品が入った際や、交換時期になると提案するといったことを行っています。最近では、速乾性の高い交換液もあり、昼休みの間などに作業をしてくれるなど、お客さんとしては、わざわざショップに行く手間を省けますし、交換後すぐにコースで試せるということで好評です。
これらはクラブやボール、そしてシャフトにも応用ができると思います。オウンネームのボールなどは、特定の日にショップに行かなくても、昼休みまでに作っておいてもらい、ラウンド後半からは利用できるとなれば、需要はあるはずです。
また、用具という話題を介して、ゴルフ場とメンバーとがコミュニケーションも図れるという利点がありますし、ただ用具をゴルフ場に卸しているだけというメーカーにとっても、新たな販売ルートとして期待できるのではないでしょうか」

これからも来場者は増えると思いますか。
「この30年でゴルファー自体の数は減っていますが、1ユーザー当たりがゴルフ関連に使う金額は増えていると思います。例えば、有名なクラブフィッターを月に1度呼んで、フィッテイングのイベントを行うなどして、メンバーの方に友人を連れてきてもらうといったことが考えられます。プレー終了後の1番ホールを使って、実際に試打ができるなどの工夫をすれば、ゴルフ場は用品を売る最高の舞台になります。
今後はさまざまなサービスを提供するという営業努力を行っていくことで、集客は伸ばせると考えます」

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ABOUTこの記事をかいた人

1981年7月12日生まれ
平成18年5月~平成20年11月イーゴルフ株式会社 携帯サイトでのコラム執筆。メールマガジンでのゴルフ場紹介コラム。提携先雑誌「GolfStyle」ホームページでのコラム執筆。提携先のゴルフ専門サイト「GolferWeb」でのコラム執筆。
平成20年12月~平成21年4月株式会社ゴルフトゥデイ ゴルフトゥデイ主催の大会ページ、ドライバーカタログなどを担当
平成21年5月株式会社ベンチャーリパブリック(現オセニック株式会社)新製品の紹介やトーナメント記事に関するブログ記事を執筆。ゴルフクラブ、ボールの選び方コンテンツ記事の執筆。