時代は変われど… 守り続けたいゴルフの歴史

日経電子版2017年8月10日配信

ゴルフウエアをめぐって最近、気になった話題が2つある。

1つは、男子の日本ゴルフツアー機構(JGTO)が7、8月に行われる4試合の練習ラウンドに限って、短パン着用を認めるというもの。

もう1つは、米国女子プロゴルフ協会(LPGA)が、登録選手に「短いスカートをはいてはダメ!」との禁止令を出したことである。

■LPGAの危機感の表れ?

男性の短パンと女性のミニスカ。似てはいるが、興味の度合いはまったく違うようで、短パンの話は埋もれてしまっている。それはともかく、考えてみたいのは背景に何があるかだ。

練習ラウンドの短パン着用OKは、すでに欧州ツアーなどで認められている、選手から要望があったというのがその理由だという。JGTOはトーナメント会場では長ズボンの着用を義務付けており、ハイソックスをはいても短パンは「NO」としている。

ということは、「ギャラリーがほとんど来ない練習日はいいじゃないか。海外でもやっているし」が選手の本音だろう。でも、それでいのだろうか。

かつて、ニッカボッカーズにハイソックスがゴルフウエアの主流だったことがある。長ズボンのようにスソがプレーの際にじゃまになることもなく、機能的でもあった。

個人的に、短めのズボンをはくのはトーナメントでもOKだと思う。ただし、いま流行のくるぶしまで見える短い靴下はやめてもらいたい。短パンにするなら、プロゴルファーは必ずハイソックスにしてほしい。上着はもちろんズボンの中に。

そうでないと、日本では歯止めが利かない。

一方のLPGA。選手に送ったドレスコードは以下の内容だったとされる。

襟(えり)なしや胸元の開いたトップはダメ。ボトムもジョガーパンツやジーンズは禁止。さらに、スカートやスコートなどは「立っているときもかがんだときも、ボトムエリア(下着をつけている部分)が見えない長さでなくはならない」というものである。

違反した場合は1000ドル(約11万円)の罰金を科す厳しさ。逆に見れば、いままでそういったウエアがまかり通っていたことで、このまま進むと収拾がつかなくなるのではないか、とのLPGAの危機感の表れともいえる。

ほとんどの人は、この話を聞いて日本の女子プロトーナメントを思い浮かべただろう。今回LPGAが禁止条項にあげたようなウエアは、日本でもごく当たり前に着られている。また、そのことがスコアそっちのけで大きな話題になることがあるのが現状だ。

■賛否両論、それぞれ言い分

「いいじゃないか、着るものにいちいち目くじら立てなくても……。昔とは違うんだから」と思う人もいる。確かに、時代は変わり、服装も変化している。中には機能的なものもあるので、一概にダメだとはいえない。

しかし、「守らなくてはいけないものがある」のは事実だし、そう思っている人もたくさんいる。

ゴルフと並ぶ長い歴史を持つスポーツにテニスがある。その最高峰の大会がロンドン郊外で行われるウィンブルドン選手権だが、ウィンブルドンに出場する選手は「白いウエアを着用すること」が義務付けられている。

ロジャー・フェデラー(スイス)も錦織圭も、ルールと伝統を守って上下ウエアもシューズもすべて白で出場している。

もちろん毎年、選手や関係者から批判の声があがる。時代遅れかもしれない。それでも、主催するオールイングランド・クラブは譲る気配がない。「いやなら出てくれなくても結構です」とばかりに。

ウィンブルドン選手権の第1回は1877年。ゴルフ最古のトーナメント「全英オープン」は1860年。ゴルフの歴史は守っていきたい。

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