自己最悪・5戦連続予選落ちの過酷な現実。石川遼、来季は国内復帰の方向転換か?

ティーグラウンドでシャドースイングしてイメージを作る石川遼。(三井住友VISA太平洋=太平洋御殿場コース)

あの石川遼(26)が、プロ10年目にして苦悩の日々を送っています。先週の三井住友VISA太平洋(静岡・太平洋御殿場)でも2日間通算8オーバー、″ブービー”の79位で予選落ち。同組で回って優勝した小平智(28)には2日間で17ストロークの大差をつけられました。米ツアーで出場権を失って帰国した10月から5試合の国内ツアーすべてに予選カット(国内自己ワースト)。

米ツアーを主戦場とした13年から5年間。初優勝に届いていないばかりか、賞金シードを取ったのは2年のみ(14、15年)。今季は入れ替え戦となる下部ツアーでも一部に戻れる25位以内に入れず、ついに米ツアーの出場権を喪失しての帰国でした。この状態では来季はどこでどう戦うのでしょうか。

今季、国内で出場できる試合は、残りダンロップフェニックスとカシオの2試合。このどちらかに奇跡の優勝でもすればともかく、ゴルフ人生の一大危機に直面している石川遼必死の″もがき”が続きますー。

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晩秋の富士山ろく。太平洋クラブ御殿場コース。夕暮れが近づくと急激に寒気が増す練習場。初日、2日目と連続76を叩いて最下位近くをうろついた石川遼は、だれもいなくなる打球場で一人黙々と白球を打ち続けました。予選落ちが決まった2日目の試合のあともです・・。

2日間で6ボギー、2ダブルボギー。2日目最終18番(パー5)でようやくこの日の初バーディを奪ってホールアウトすると、キャディーに力のない笑顔をみせてパターとボールを手渡しました。右や左に曲がるティーショット。2日間のフェアウェイキープ率は35.71%(71位)。

多くのギャラリーに見守られてティーショットする石川遼。(太平洋御殿場コース)

多くのギャラリーに見守られてティーショットする石川遼。(太平洋御殿場コース)

パーオン率は44.44%(68位)。すべてのショットに精度を欠き、あのころのはつらつとした石川遼は、いまどこにもいません。気のせいか、体全体が小さく見えてしまいます。

帰国して予選落ちした試合は、日本OP、ブリヂストンOP、マイナビABC、平和PGM、そして三井住友VISA太平洋。そのすべてにアンダーパーで回ったラウンドはありません。そんな遼でも絶大の人気はまだ健在です。大勢のギャラリーがついて声援を送りました。ピンチを切り抜けるとため息がもれ、パーセーブに拍手や歓声です。ナイスプレーに湧き、バーディーやイーグルに酔いしれたあのころの遼フィーバーは、いまや遠い過去のものですが・・。

御殿場で5度目の予選落ちした”最新の”遼のコメントです。

「全く別人になっちゃいましたね。練習場ではいい感じで打てているのに、試合になるとその感じが出ない。試合に入り込めていない。試合は楽しいものなのに、楽しむだけの時間もない。アイアンは大分改善されてきてるけど、ドライバーがダウンスイングで意識してるところへ降りてこない。イメージが出ない。フェースがどこに向いているかも分からない。そんな自分なのに、大勢のファンに励まされて、応援のありがたさを感じている。一日でも早く、いいプレー、いいスコアで応えたい。何倍にもして恩返ししたい。一番は優勝だと思う」

米国での5年間。僚友・松山英樹が快調に世界トップ級に登りつめ、すでに米ツアー5勝を挙げているのに反し、遼との差は開く一方。2位が2回あるのはせめてもの実績ですが、スイングの進化を求めて抜本的な「フォーム改造」に踏み込んだ道は、多難の連続です。開く体についていけず、フェースが開いてプッシュアウトする打球。

優勝した小平智(左)とティーグラウンドで話す石川遼(右)=三井住友VISA太平洋マスターズ=太平洋御殿場。

優勝した小平智(左)とティーグラウンドで話す石川遼(右)=三井住友VISA太平洋マスターズ=太平洋御殿場。

それをカバーしようと手首を使ってフェースローテーションするので今度は左へ曲がる、といった具合です。求める新スイングは、体を開かずクラブを下ろし、脇をしめて振りぬく。手首も過剰には使わない、と遼。「目先の予選通過を最優先するのではなく、5年先、10年先を考え、いまやらなければいけないことなんだ」と、遼はいいます。

2週前のマイナビABCの練習場ではジャンボ尾崎に「ちょっとドライバーを打ってみろ」といわれて”10分間の即席レッスン “を受けたりもしました。その結果は「トップからダウンスイングにかけての”間”が全然ない」(ジャンボ)と指摘され「基本中の基本をジャンボさんから教わって気持ちが楽になった」(遼)と感激ひとしおでした。

練習好きでは誰にも負けない遼です。いまは打って打って打ちまくるという状態で、 太平洋の初日など、スタート前の練習場で約200球を打ち続ける遼がいました。通常、スタート前の練習では「50~60球そこそこ」の″調整〝なのに、200球の打ち込みは異常。しかし「新しいことと取り組んでいるので」(遼)と、承知の上でのこと。ホールアウト後にはまた練習場にこもり、約500球を、最後に一人になるまで打ち込んだ遼でした。

何事にも少し神経質になり過ぎではないかとう声も聞かれます。しかし「自分はそういう性格だから」と、取り合わない遼です。結果が出るまで、どこまでも思う道を突き進もうというのですから、見守るしかありません。今季米ツアーでは出場20試合のうち12試合が予選落ち。

3月から7月にかけては3試合連続落ち。1試合あけてまた6試合連続落ち。つまり10試合で9試合予選落ちといういばらの道を過ごしました。これでは賞金ランクも下がるのは当然で、年間ポイントランキングは175位(125位までが来季シード)。下部ツアーの入れ替え戦4試合も賞金ランク31位。25位までの来季ツアー出場権には及びませんでした。

米ツアーでも5年間戦ったのだから、もう日本ツアーに戻ったらいいのでは・・との声も多く聞かれます。国内でやれば、メンタル的にももう少し楽に戦えるのではないか。事実、米ツアー転戦後も、14年・長嶋茂雄招待セガサミー杯。15年・ANAオープン、ゴルフ日本シリーズJT杯。16年・RIZAP KBCオーガスタと、毎年帰国後には優勝を遂げているのです。

来季、米国で戦うには厳しい条件が揃っています。現在、米国はいきなりQT受験でツアーを目指すというシステムがありません。下部のウエッブドットコム・ツアー出場は可能なので、石川が米国で戦うならドットコム・ツアーで上を目指すしかありません。日本ツアーなら18年まで出場権があります(16年のRIZAP KBC優勝で2年間シード)。

米ツアー制覇の夢を追い、日米を往復しながら戦いたいとの意向を持っているようですが、米国では2部ツアーしか出られませんから、必然的に来季は国内ツアー重点にならざるを得ないでしょう。あるいは米国に滞在して、数多くいるプロ・コーチについて徹底的なチェックとスイング作りに取り組むのも一つの方法かもしれません。

07年、高1、15歳のアマでプロツアーのマンシングウェアKSBに優勝。ゴルフ界に旋風を巻き起こした石川遼。08年にプロ転向するや12年までに通算10勝。09年には18歳の史上最年少賞金王にもなって13年からは米ツアーを主戦場に。 日本の男子ゴルフ界を変えた男といわれながら、米ツアーに乗り込んでからはその勢いを失ってしまいました。

いま遼も26歳。いや、まだ26歳、といえるかもしれませんが、これから熟年期を迎える遼のゴルフ人生の大きな分岐点を迎えます。右を取るか左へ行くか。人気男・遼はどこへ行く?!

優勝賞金4000万円をゲットして賞金ランキングもトップに浮上した小平智(三井住友VISA太平洋=太平洋御殿場)提供:JGTO

優勝賞金4000万円をゲットして賞金ランキングもトップに浮上した小平智(三井住友VISA太平洋=太平洋御殿場)提供:JGTO

【この記事は2017-11-13 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】

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