エージシューターの3大要素:①健康・体力レベルよりもゴルフテクニック、②ゴルフ以外にも運動習慣がある、③暮らし向きが良い

Gewニュース(2015年10月1日)に「可処分所得が多いと達成率が高い?データで見るエイジシューターの生活環境」という興味深い記事が掲載されています。この記事には[?]がついていますが、この話はあながち間違いでもないと思います。

筆者らの研究グループは過去に「第1回全日本エージシューターズマスターズゴルフ大会」(2011年11月)の参加者(エージシューター42名(77.43±4.24歳),非エージシューター30名(70.13±4.83歳))に調査や体力測定を実施していますが、エージシューターは、必ずしも “健康的” ではありませんでした。

エージシューターの要素として、①健康・体力レベルよりゴルフテクニックが優れていること、②ゴルフ以外にも運動習慣があること、③暮らし向きが良いこと、といった共通点が見られました。本稿ではそのレポートのデータの一部をご紹介したいと思います。

 

エージシューターの睡眠時間
エージシューターの平均就寝時間は7.00時間(±1.169)であり、非エージシューターの睡眠時間は7.16時間(±0.913)でした。なお、就寝・起床の平均時刻は、就寝が22時台であり、起床が5時台でした。

エージシューターの食習慣
『朝食摂取頻度』についてエージシューターの95.2%が「毎日食べる」(非エージシューター:96.7%)、『アルコール摂取頻度』については、45.2%が「ほぼ毎日飲む」(非エージシューター:33.3%)、『バランスを考えた食事をしているか』については、47.6%が「よく考える」(非エージシューター:53.3%)との回答でした。
非エージシューターと比べても、食行動に関して特別な違いは見られませんでしたし、むしろ、非エージシューターの方が多少 “健康的”と言えるかもしれません。
食事に関して、群間で統計学的な相違が認められた項目は、『麺類摂取の状況』と『外食の頻度』でした。エージシューターは外食する頻度が高いようです(図1)。

ASの外食図1.エージシューターの外食習慣

エージシューターと喫煙
僅かの差ですが、喫煙率はエージシューターの方が高かったです。
●吸う(エージシューター:7.1%,非エージシューター6.9%)
●やめた(エージシューター:45.2%,非エージシューター55.2%)
●吸わない(エージシューター:47.6%,非エージシューター37.9%)

ゴルフ以外の運動・スポーツ習慣
エージシューターは非エージシューターに比べて『ゴルフ以外の運動・スポーツもしている』との回答率が高く見られました。具体的な運動・スポーツの内容としては「ウォーキング」が最も多かったです。
●ゴルフ以外の運動習慣がある(エージシューター:66.7%,非エージシューター43.3%)
●ゴルフ以外の運動習慣はない(エージシューター:31.0%,非エージシューター56.7%)

エージシューターの握力
左右の握力ともに、エージシューターの方が低い値でした(図2)(図3)。

握力(右)図2.握力(右)

握力(左)図3.握力(左)

 

エージシューターのバランス能力(開眼片脚立ちテスト)
開眼片脚立ち(片脚で何秒立っていられるか)テストの結果でも、エージシューターの方が低い値でした(図4)。

AS開眼片脚立ち図4.開眼片脚立ちテスト

エージシューターの暮らし向き
「現在の暮らし向きについて」、エージシューターの63.4%が『まあまあ良い』(非エージシューター76.7%)と回答しました。
また、「1ケ月あたりの自由に使えるお金」については、多くのエージシューターが『6万円以上』と回答し、その割合は非エージシューターよりも高かったです(表1)。

表1.1ケ月あたりの自由に使えるお金ASの暮らし向き

 

その他、体組成計を用いて、体脂肪率・筋肉量・内臓脂肪レベル・基礎代謝量を測定したところ、エージシューターにおいては体脂肪率や内臓脂肪レベルの平均値が高く、基礎代謝量・推定骨量の平均値は低い傾向が見られました。

「女性エージシューター」も同様の傾向
女性エージシューターのデータ収集もしていますが、女性においても同様の傾向が認められています。例えば、基礎代謝量、筋肉量、推定骨量、は非エージシュータの方が高く、体脂肪率や内臓脂肪はエージシューターの方が高い、といったことなどです。

 

まとめ:エージシューターの3大要素
エージシュートを達成するゴルファーは、一般熟年ゴルファーに比べて、各種疾患の療養率がやや高く、体力テストの結果は低く、身体組成データにおいても必ずしも優れているとは言えませんでした。
このレポートのまとめとして言えることは、男女を問わず、エージシューターの共通点として、①健康・体力レベルよりゴルフテクニックが優れている、②ゴルフ以外にも運動習慣がある、③暮らし向きが良い、ということでしょうか。

 

参考文献
〇北 徹朗、吉原 紳ほか(2012)女性エージシューターの生活習慣と身体組成、教育医学第58巻第1号、pp.141-142
〇中神 勝、北 徹朗ほか(2012)エージシューターの健康状態および身体組成の特徴、教育医学第58巻第1号、pp.143-144
〇橋口剛夫、北 徹朗ほか(2012)年間50回以上のコースラウンドをする熟年女性ゴルファーのプロフィール、教育医学第58巻第1号、pp.145-146
〇吉原 紳、北 徹朗ほか(2012)エージシュート達成ゴルファーの生活習慣、教育医学第58巻第1号、pp.147-148

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<現職>武蔵野美術大学 身体運動文化准教授・同大学院博士後期課程兼担准教授、サイバー大学 IT総合学部 客員准教授、中央大学保健体育研究所 客員研究員、東京大学教養学部 非常勤講師  <学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程  <主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事