全米、全英の2大メジャー出場権を1週間でつかんだ無名男・秋吉翔太(27)。石川遼、池田勇太、谷原秀人らがあえなく落選の裏で何が・・

まさに″奇跡〝のような出来事でした。世界のメジャー、全米オープンゴルフの出場権「3枠」を争う日本地区最終予選(36ホール=5月21日)でトップ通過した無名の秋吉翔太(27=熊本出身)。3日後からのミズノオープン(茨城、ザ・ロイヤルGC)ではたて続けに難コースを克服し通算1アンダーでの逆転ツアー初優勝して驚かせました。

上位4人に与えられる全英オープンの出場権までもゲットしてしまったのです。この1週間で秋吉翔太の身に起こった天にも昇るような3つのハプニング。石川遼や池田勇太も予選落ちで涙を飲んだ大会で勝ち抜いた秋吉翔太は、この1週間で″無名〝から一躍″有名プレヤー〝に変身しました。
(全米OPは6月14日~17日、米ニューヨーク州シネコックヒルズGC。全英OPは7月19~22日、スコットランド・カーヌスティGL)

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世界最高峰の夢の舞台、全米オープンの出場権を目指して日本地区最終予選会(兵庫・ジャパンメモリアルGC)にエントリーしたのは32人。石川遼、池田勇太、谷原秀人らをはじめ今平周吾、星野陸也、藤田寛之、川村昌弘、稲森佑貴、片岡大育ら。

前日終わった関西オープンで優勝した時松隆光も休み返上で駆けつけて「3枠」を競いました。一日36ホール勝負の短期決戦。最も注目を集めたのは米国から日本ツアーに復帰した石川遼。第1ラウンドでは4アンダー、67で回り好スタートでした。第2Rの18ホール。

健闘を続けながら、大詰にきた16番で痛恨のダブルボギー。もう挽回するあとがなく、第2Rは1オーバーの72で通算3アンダー、8位タイ。3位に食い込むには3打足りませんでした。

全米OP日本地区最終予選で出場権を得た左からD・ブランスドン(豪)、秋吉翔太、梁津満(中国)=(5月21日、兵庫・ジャパンメモリアルGC)提供:USGA

16年17年と連続本戦に出場した池田勇太は、ともに予選落ちしたリベンジをしたかったところ。最終予選は1、2Rともに69で回りましたが、通算4アンダーは当確の3位へ2打及びませんでした。今年は欧州やアジアンツアーを転戦、世界へ羽ばたこうとしている谷原秀人にも期待がかかりましたが、1Rで67を出しながら2Rで70と足踏みして通算5アンダー。星野陸也とともにあと1ストローク足りずに3位入賞は成りませんでした。

有名選手がいま一つスコアを伸ばせない中、グンと頭をもたげてきた男が秋吉翔太、27歳です。第1Rを終えて首位に6打差も離され7位タイと目立たなかった翔太が、前半はスコアを伸ばせなかったのに、捨て身の勝負をかけた最後の9ホールにドラマが潜んでいました。

「後がない状況になり、もう行くだけ、という感じだった。12番(パー5)は2打目が250ヤード。奥のカラーからの10㍍のイーグルパットが入ってチャンスが残ったかなと思いました」(秋吉)。難しいパーパットも決まリ始める。チャンスについたバーディーパットはきっちり沈める。終わってみればインは30。トータル6アンダー65のベストスコア。

通算8アンダーとして一気にトップ通過という結果を出したのです。最後のハーフ9ホールで勝負を決めた秋吉は、思いもかけなかった全米切符を手にして興奮がさめやりませんでした。

「1日36ホール勝負は体力的にも大変で、ショットが右へ右へいってミスもしましたけど、アプローチとパターでカバーできた。メジャーに出たいと思い続けていましたが、いまはまだ実感はないです。現地へいけば緊張もすると思うけど、メジャーの雰囲気を楽しんできたいですね」(秋吉)

4月下旬に行われた中日クラウンズで″秋吉翔太〝の名は目についたのです。2日目63で2位に上がり、3日目66で単独首位に立って周りを驚かせたのが秋吉です。最終日は最終組で回るも74と崩れて結局クラウンズは4位タイに終わりましたが、今季は一つ一つ大きな自信をつけてきたロングヒッターの男として注目され始めました。

全米予選から3日後の24日、場所は史上最長(73年ツアー制度施行後)8007ヤード(パー72)のモンスターコース、茨城・ロイヤルGCでのミズノ・オープンです。休みなしで秋吉も出場してきました。特に16番、705ヤードのパー5は詳細な記録が残る92年以降ではツアー史上最長。しかも左右には深いラフ。

大きなグリーンには厄介なアンジュレーションがあって、プロといえども手こずる舞台でした。日ごとにアンダーパーの選手が減り、最後は優勝した秋吉の通算1アンダーが唯一のアンダーパーの選手でした。3打差6位から出た最終日の秋吉は、5バーディー、3ボギーの2アンダー、70で回り、大逆転のツアー初優勝をつかんでしまったのです。飛ばし屋の秋吉にはうってつけの超ロングコースだったのも、ラッキーを呼び寄せた一因だったのでしょう。

2年前までは下部ツアー(当時のチャレンジツアー)中心の選手。昨年の日本オープンで最終日に5連続バーディーを奪って自己ベストの4位に入り、初のシード選手として臨んだ今季でした。熊本出身で高校は鹿児島・樟南高に進学。松山英樹らを抑えて「国体少年男子個人」で優勝(08年)したこともあります。全米OPの日本地区最終予選に挑戦したのは初めて。

それでつかんだビッグな切符。バッグに入れたアイアンには、1歳半の長男・湊斗(みなと)くんの名前が刻まれている子煩悩。
「もしかしたら人生に1回かもしれないからできれば一緒に(全米に)連れていきたいですけどね」と親ばかの一端ものぞかせる秋吉です。

「僕、追い込まれるといいのかもしれないです」と、翔太は笑っていますが、石川遼も池田勇太も及ばなかった全米予選の狭き門をトップで通過。また全英の予選をかけたミズノOPでは難コースで大番狂わせの初V。日本男子プロに久々に、突然に、話題満載、楽しみな男が頭をもたげてきたといえそうです。

全米予選では出場権を得る上位3人には、秋吉のほか豪州のベテランD・ブランスドン(44)と中国の梁津満(リャン・ウェン・チョン)が入りました。日本勢の大量落選はいただけませんが、すでに決まっている松山英樹、小平智の確定組に加えてシンデレラ男・秋吉を加えての本戦が見もの。

シネコック・ヒルズはニューヨーク近くの半島に位置するヒーリーなコース。過去何度か全米OPの会場になっていますが、95年にはジャンボ尾崎が3日目にグレグ・ノーマン(豪)と最終組を回ったことや、04年大会では丸山茂樹が1R、2Rでトップに立ち、最終的には4位タイに入ったことがあります。日本選手には馴染み深いコースともいえます。

マスターズに続く今季2つ目のメジャーに注目ですが、3つ目のメジャー7月開催の全英オープンへの興味も、これで一気に盛り上がってきそうな秋吉翔太のパフォーマンスでした。(了)

【この記事は2018-5-28 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】

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児島宏

早大第一文学部卒。昭和33年デイリースポーツ社入社。プロ野球では長嶋、王らの巨人V9時代を担当。ゴルフではマスターズ、全米全英オープンなど国内外のトーナメントを数多く取材。デイリースポーツ東京本社運動部長などを経て、現在日本ゴ ルフジャーナリスト協会員。東京運動記者クラブ会友。