『大学のゴルフ授業の充実を目指した産学連携調印式』から1年

『レジャー白書』(日本生産性本部)によれば、日本におけるゴルフ人口(ラウンド)は、1992年のピーク時には約1480万人とされていたものが、20年後(2012年)には約790万人にまで落ち込んでいる。2017年7月に発表された最新の『レジャー白書2017』でも、さらに減少傾向は続きゴルフ参加人口は約550万人(前年比210万人減)であったことが報告されている。

ゴルフの業界関係者の一部からは、肌感覚と著しく乖離したデータではないか(実際にはそれほど減少していないという感覚)とレジャー白書のデータ自体を疑問視する声も聞かれるが、『ゴルフ人口の減少傾向が続いている』事実は否めないだろう。

ゴルフ人口の減少に喘ぐゴルフ産業界が目を向けた対象の1つに「大学の教養体育授業」がある。2016年6月27日に『「大学のゴルフ授業」の充実を目指した産学連携調印式』が執り行われたが、1年を経て大学教育の現場がどのように変わったのか、概略を報告したい。

 

産学連携協定締結の目的

下記の内容が記された調印文書に、(公社)全国大学体育連合 安西祐一郎会長、(公社)日本プロゴルフ協会 倉本昌弘会長、ゴルフ市場活性化委員会(GMAC) 馬場宏之委員長がそれぞれ署名した。

「ゴルフ授業」の更なる充実を目指し、受講大学生の「ゴルフ」継続意欲を高め、生涯スポーツとしてのゴルフ実施率を向上させ、結果として、国民の健康寿命の延伸を図るとともに、ゴルフ関連産業の経営安定化と継続を実現し、地域社会の発展に貢献する。

(2016年6月27日、於:TKP東京駅八重洲カンファレンスセンター)

 

改善事例①:ゴルフ場での教育が可能になった!

全国の多くの大学の教養体育授業でゴルフは行われているが、それらの90%以上はゴルフ場に行かず、大学内の施設(グラウンド、体育館、テニスコートなど)で完結している(北ら、2016:大学ゴルフ授業における雨天時授業、安全対策、ICT教材利用の実態調査)。

この現状から、(一社)日本ゴルフ場経営者協会の全面支援を受け、学内でのゴルフ受講修了者向けに「Gちゃれ」を展開している。2015年度から開始されたGちゃれは既に12回の開催されており、2017年度内だけで、東京、神奈川、埼玉、山梨、兵庫、愛知などのゴルフ場で19回の開催が予定されている。2017年6月4日(於:八王子CC)の様子はコチラ

 

改善事例②:教具(クラブ)が充実した!

大学ゴルフ授業で使用されている用具の傾向として、「古い」(危険)、「スペックがバラバラ」、「レディスやレフティが不足」、といった課題があった。この改善のために、(一社)日本ゴルフ用品協会が窓口となり、メーカー各社の協力で常時数千本を大学教養体育授業向けに確保し無償提供頂けることとなった。連携協定後の1年(2017年7月現在)で、48大学に対して約1600本のクラブが無償提供されている。

 

改善事例③:教本や指導マニュアルが示された!

あらゆるスポーツ種目の中でも「ゴルフ」に関する書籍は特に多い。また、多くの週刊誌・月刊誌等があるのも「ゴルフ」くらいではなかろうか。大学ゴルフ授業担当者の多くは、筆者を含め他のスポーツを専門としてきた教員が多い。そのため、研究成果(エビデンス)に基づく指導書や指導法を求めていたが、それが見つけ難い状況にあった。この改善のために、(公社)日本プロゴルフ協会が「PGAカレッジゴルフテキスト」、「大学向け指導マニュアル」等を共同作成したり、これらを用いた大体連研修会での講習大学での特別授業などでの支援が開始された。

(PGAカレッジゴルフテキスト、編集協力(一社)大学ゴルフ授業研究会)

 

改善事例④:ウェブサイト・情報共有網が強化された!

大学ゴルフ授業研究会は、筆者が起案し、橋口剛夫先生(帝京科学大学)、髙橋宗良先生(当時杏林大学・現在鎌倉女子大学)、安部久貴先生(当時東京工科大学・現在北海道教育大学)に世話人連名の賛同を得て、2012年に全国大学体育連合関東支部の協力を得て立ち上げられた。この4名を中心に様々な実践研究、調査などを重ね、大学ゴルフ授業の実態と課題を明らかにして行った経緯がある。2016年の産学連携協定直後には世話人数が32名となり、2016年11月にはウェブサイトをリニューアル。翌12月には一般社団法人化を果たした。現在(2017年7月)の世話人数は92名。

研究会の運営においては、以下のサポーター企業の皆様にウェブサイトの広告料としてご支援を頂いている。朝日ゴルフ用品 、JKホールディングス 、ダンロップスポーツ、テーラーメイド ゴルフ 、本間ゴルフ、 藤倉ゴム工業 、ブリヂストンスポーツ、 プーマジャパン、 プロギア、 ニューアート・クレイジー、 二木ゴルフ 、マルマン、 渡辺製作所。

また、(株)ゴルフ用品界社には『月刊ゴルフ用品界』誌において、毎月【我が大学のゴルフ授業】というリレー連載企画を提供頂いている。

 

「Gちゃれ」がもたらす、副次的・波及的な効果

産業界や社会から大学ゴルフ授業に目が向けられることで、副次的・波及的な効果も生まれている。八王子周辺のゴルフ場に都内および多摩地域の大学生が集うことにより、様々な交流や支援が始まった。日本学術振興会の安西会長も地域コミュニティの活性化にゴルフ授業が貢献していることを語っている。我々はこれを「八王子モデル」と呼んでいるが、兵庫県(有馬CC)、山梨県(上野原CC)等ではまた別の形のモデルが形成されようとしている。学生においては、他大学の学生とゴルフを通じて交流できる楽しさは「体育授業ならでは」と喜び、産業界との交流も「就活」や「インターンシップ」としての役目もある。

(Gちゃれ 八王子モデル;北作図)

また、大学においても「2018年問題」という、過ぎ去ることのない嵐と対峙する局目に来ている。今後、大学の再編・淘汰が間違いなく加速する。大学と地域の連携、地域コミュニティの形成、地方創生、と言う点でも「Gちゃれ」や「大学ゴルフ授業」が貢献できる可能性がある。

(大学・産業界・地域を「大学ゴルフ授業」がブリッジング;北作図)

 

引用・参考文献:北 徹朗「大学ゴルフ授業の充実を目指した産学連携活動の報告」、2017年第2回ゴルフサミット会議(2017年7月28日) 報告資料(全17ページ)

 

 

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北 徹朗

<現職>武蔵野美術大学 身体運動文化准教授・同大学院博士後期課程兼担准教授、サイバー大学 IT総合学部 客員准教授、中央大学保健体育研究所 客員研究員  <学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程  <主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事