<大学スポーツ選手に対する学修支援の必要性>
タイトルを読んで「当たり前だ」と思われた方もおられるかもしれません。しかし、ゴルフに限らず、大学における運動部活動においては「学業はほどほどに」という雰囲気が常態化し、大学当局も運動部学生の学修支援を十分に行ってきたとは言えない状況が長年続いてきました。その結果、学生の本分である学業が疎かになり、半ばその状況が放置されてきたと言えます。
従来からの大学の運動部活動の諸問題の一例として、公式戦と重なって授業を欠席せざるを得ない状況になったり、学生生活がクラブ活動に偏りがちになるなどのケースが挙げられます。こうした問題の解決のために、学生の学修支援に向けた資料を収集することを目的として、筆者が常務理事を務めている(公社)全国大学体育連合の課外活動支援特別委員会(委員長:北 徹朗)と朝日新聞社が共同で今年(2015年)2つの調査を実施しました。
<全国大学体育連合×朝日新聞社による共同調査の概要>
1つめは、全国の大規模大学と体育系大学(110校)に対して、「大学としてクラブ活動や選手に対して学修支援をしているか」という内容の調査であり、2つめは、大学スポーツの競技団体(学連24競技,42組織)に対して同様の趣旨での調査を実施しました。
1つめの調査の結果、73%の大学が「運動部学生に特化した学修支援が必要」と回答しましたが、大学スポーツの場合、平日に公式試合が開催されることが多く、その結果授業に出席できない、という状況が生じています。
そこで、2つめの調査として、学生スポーツ競技団体を対象に、「平日の試合を避ける取り組み」や「選手が学業に取り組める環境づくりをしているか」についての回答を求めました。
<1年間で16単位未満の者は出場資格を失う>
その結果、多くの大学スポーツ連盟のうち、関東大学ゴルフ連盟からの回答は真に文武両道であるべきという態度がうかがえる、他の連盟には無い取り組みが記されていました。
具体的には、連盟の規程に『1年間の修得単位数が16単位未満の者は出場資格を失う』と定められ、出場登録には大学が発行する成績証明書の添付が義務付けられている、というものでした。ただ、「1年間に16単位」では4年間での卒業は難しいので、さらに多くの単位の取得を目指す必要がありますが、具体的な数字を示して取り組んでいること自体、先駆的であり評価されると思います。
朝日新聞の取材に対し、関東学生ゴルフ連盟の阿部靖彦専任理事は「連盟はプロを育てる集団ではない。学生なのだから文武両道を目指すのは当たり前」(2015年8月8日付朝刊)とのコメントをされています。
<関東学生ゴルフ連盟の取り組みは大学スポーツ選手の範>
また、関東学生ゴルフ連盟では毎年の大会参加者に対して作法の遵守の徹底も行われており、シャツ出しやヘソ出しプレーをしないことを求め、クラブハウスに一歩足を踏み入れたところから脱帽することを徹底させているそうです。これは関東学生ゴルフ連盟の中島敬夫会長の「学生ゴルフファーが全ゴルファーの作法の範になる」という強い意志によるものとされています。
関東学生ゴルフ連盟の取り組みは、「文武両道」という側面においても、大学スポーツ選手の範となることは間違いないでしょう。
<第1回カレッジ・スポーツ・シンポジウムを開催>
上記の共同調査結果を踏まえ、「第1回カレッジ・スポーツ・シンポジウム」((公社)全国大学体育連合主催,朝日新聞社後援/実行委員長 北 徹朗)を10月17日(土)に日本大学文理学部百周年記念館において開催することに致しました。ご興味のある方は是非ご参加ください。
<参考文献・参考資料>
・伊東 克、北 徹朗ほか(2015)「スポーツ・クラブ統括組織と学修支援・キャリア支援に関する調査報告」、大学体育105号、pp132-135
・朝日新聞、2015年5月8日付朝刊、22面および34面「文武両道手探り 大学運動部員に関する全国アンケート」
・朝日新聞、2015年8月8日付朝刊、17面「学業優先へ7割が「対策」実情は・・・」
・福島 靖(2015)「クラブハウス内での脱帽」『千年不変のゴルフマナー』、アルバトロスビュー683(9月10日号)、p.175