リンクスコースで開催された第97回全米プロゴルフ

第97回全米プロゴルフは、ミシガン湖畔のウィスリングストレイツGCで開催されました。 4月のマスターズ、6月の全米オープン、7月の全英オープン、そして4大メジャー最終戦になる全米プロは、毎年8月に開催されています。

今年は、全米オープンのチェンバーズベイGC、全英オープンのセントアンドリュース、全米プロのウィスリングストレイツGCとマスターズ以外の3大会全てがリンクスコースでの開催となりました。私は80年代からメジャー大会を中心に現場にて見てきました。 全てのゴルフ場には設計者の意図が表れ、「ゴルフ場が選手を育てる」と言われています。リンクスタイプのゴルフ場では、天候により大きく条件が変わり、プレーの順応性がより要求されることが多いようです。

役者がそろって活躍した今年の大会

アメリカ第3の都市のシカゴから北に250キロ、ウィスコンシン州のほぼ真ん中のミシガン湖畔に位置するウィスリングストレイツGC。トウモロコシ畑と牧場が一面に広がる地域でゴルフ設計者のピート・ダイが多くの土砂を動かしリンクスタイプのゴルフ場に仕上げました。特色は、963個もあるのバンカーでしょう。その殆どは、プレーと関係ないものですが、荒野にゴルフ場を開拓したような雰囲気をかもし出しています。2010年にも同コースで全米プロが開催されました。最終ホールにダスティン・ジョンソンが、バンカーをウエストエリアと間違いショット前にソールをしてしまいました。2ペナルティーが課され、メジャー初優勝を逃しました。また、今年の全米オープンでは最終ホールで3パットをし、ジョーダン・スピースのメジャー2連覇となりました。圧倒的な飛距離でコースをねじ伏せるダスティン・ジョンソンは、ショットの安定性とショートゲームに卓越したジョーダン・スピースとは対象的な存在です。今回の全米プロの会場では、両者が人気を二分しており、何処に行くにも大勢のギャラリーからサインをせがまれていました。 それに対して自分のサインペンを出し、黙々と応える姿にファンサービスの基本を見たような気がしました。

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初日66の6アンダー、単独トップで飛び出したダスティン・ジョンソンに一気に注目が集まりました。2010年の全米プロと今年の全米オープンの雪辱を果たす絶好の舞台としてこれ以上のケースはありません。二日目は73と崩れてしまいましたが、トータル5アンダー10位タイは、まだまだチャンスがあります。反対に、初日1アンダー71と出遅れたジョーダン・スピースは、二日目に5アンダー、トータル6アンダーの7位タイと優勝戦線に躍り出て役者が揃い、会場のテンションが一気に盛り上がりました。

岩田寛のメジャー最小スコア記録・日本勢も全員予選通過

日本勢では岩田寛が初日に0バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの77から、二日目には1イーグル、8バーディー、1ボギー、63のメジャー最小ストロークタイを記録して、トータル4アンダーの15位タイに躍り出ました。18番、520ヤード、パー4は、第二打地点からグリーン左手前までウォータハザードがあります。4.539のアベレージスコアは、ランク1で18ホール中、一番難しいホールとなっています。iwata2

岩田選手の第二が、グリーン右手前のブッシュに入った瞬間、ギャラリースタンドから大きなため息が漏れました。カップがバンカー越えのすぐ近くのグリーン右手前にきられていたので、寄せることが不可能だからです。それでも岩田選手が18番グリーサイドへ歩みよる時、ギャラリーからの大きな拍手で迎えられます。「TODAY・-9」は、見知らぬ日本人プレーヤーではあるが、感嘆に値するものであったことは間違いありません。「今日一難しいアプローチショット」は、グリーン手前バンカーを越えた僅かのスペースに1クッションしてスピードを落とし見事にカップの淵をすり抜けて1メートルに止まりました。「Wonderful !」「Beautiful!」「Fantastic!」と拍手と共に大声援があがりました。このようなミラクルショットが出るのも、世界一の舞台とギャラリーだからこそ、選手から引き出される、そんな思いがして鳥肌が立ちました。岩田選手は、スコア提出後にインタビューで、63がメジャー最小スコアタイであることを知らされると、「1日だけのことだから、、、」と冷静に淡々と応えていました。「あと1ストローク縮めたかった」との応答に、地元のインタビューアーからは「素晴らしいチャレンジャー」と評されていました。

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松山英樹は、米国でも人気があります。 また他のプレーヤー達からも米ツアーの一員として不動の地位を築いているようなコメントが松山選手に向けられていました。初日はスタートダッシュで一時5アンダー、トップタイに躍り出ましたが、後半に3ボギーをたたいてしまい2アンダーの15位タイでフィニッシュとなりました。 二日目も2アンダーでトータル4アンダー、15位タイは、岩田選手と同じ順位です。 3日目14番までスコアを4つ伸ばしていました。しかし15番ホールフェアウエーから打ったセカンドショットをグリーン手前のバンカーに入れてしまいました。グリーンサイドにあるスコアーボードを見て、「優勝争いに残るためにはこのバンカーを寄せなければ、」と思ったとのことです。結局バンカーショットが強く入り、グリーンをオーバーして、このホールをトリプルボギーとしてしまいました。「最終日も、どこかで昨日のトリプルを引きずっていた」と言っていたように、この一打で今年の松山選手の全米プロが終わったような感じでした。

もう1人の日本人選手は、小田孔明。初日の79、141位タイから、二日目の67でトータル2オーバー70位タイで予選通過となりました。前週「WGCブリヂストンインビテーショナル」の練習日に急きょ出場が決まり、帰りの航空券をキャンセルしての全米プロへの出場。シカゴで日本食を大量に買い込み、キッチン付きの宿舎で調理した料理とご飯をたんのうしているとのこと。予選落ちした2010年の雪辱を「日本食パワー」で果たしました。

決勝ラウンドで一気にヒートアップ

決勝ラウンドで初日、68,67,66と素晴らしいプレーを日増しに続けるジェイソン・デイが15アンダーで単独トップに躍り出ました。今年の全米オープンでは、優勝争いをしていながら持病のめまいで倒れ、全英オープンではプレーオフに1打及びませんでした。今までメジャー20戦し、トップテンフィニッシュが9回。「メジャータイトルのない世界一の選手」のレッテルをはがすチャンスです。

観客を愛し愛されている、ジョーダン・スピースjs

そこに待ったをかけたのが、全米の期待を一身に背負ったジョーダン・スピース。3日の16番から3連続バーディーでフィニッシュし、13アンダー、トップのデイと2打差で2位となり、最終日最終組となりました。最終ホールのバーディーパットが入った時、ギャラリースタンドから割れんばかりの拍手と声援があがりました。タイガー・ウッズの次のスーパースターとして君臨するジョーダン・スピースの姿を確認できた瞬間です。今年のマスターズ、優勝を決めたスピースも観客に向けて拍手する姿を覚えている方が少なくないでしょう。観客を愛し観客から愛される、22歳にして実力だけでなく人格者としてのスーパースターを見た思いです。全米の期待を一身に受けて最終日は善戦しましたが、惜しくも2位となりました。今年のマスターズ、全米オープンでのメジャー連覇から、全英オープンの4位タイと全てのメジャーで優勝争いを演じ、ローリー・マキュロイを抜いて世界ランク1位となりました。最終日の17番、デイがロングパットをOKに寄せたのを見て、スピースはサムアップで称えました。相手のナイスプレーを賞賛するスピースの映像を繰り返しテレビが流しているのを見るにつけ、愛されているプレーヤーのスピースを再確認できました。

 

ジェイソン・デイに感動

1508271最終日の、ジェイソン・デイは、まさに横綱相撲でした。「今までメジャーを7、8勝している選手のようなプレーぶりだった」と最後まで食い下がったスピースがコメントしたほどです。「今までの惜敗がなかったら、この勝利はなかった」とデイが言うとおり、辛酸をなめてきたからこその勝利だったのでしょう。「12歳で父を亡くし、貧困から不良に走ったデイが、ゴルフで立ち直り、メジャーチャンプになる!」こんな、漫画のようなストーリーが現実に結実したのです。ウイニングパット前から目頭を押さえ湧き出てくる感情を抑え、タップインした瞬間から嗚咽しキャディと伴に泣き崩れる姿にどれだけの観客が感動したことでしょうか!?ジェイソンの今までの苦労や克服してきたストーリーを知らない人までも、貰い泣きしたことでしょう。「人生もゴルフも筋書きのないドラマ」と言われます。デイに惜しみない拍手を送りながら、私の隣いたギャラリーが「良いドラマを見せてもらった」とポツリと語りました。 私自身も「Me too, I agree with you 100 %」と心の中で呟きました。
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ABOUTこの記事をかいた人

大東将啓

1958年(昭和33)6月9日生まれ
1981年 同志社大学経済学部卒業
1983年 ダラス大学院経営修士課程(MBA)卒業
(社)日本プロゴルフ協会(PGA)会員、A級インストラクター
 文部科学大臣認定ゴルフ教師
1997年 PGAコンベンションティーチング部「優秀賞」受賞
1999年 PGA 研究発表 「最優秀賞」受賞
2000年 高知工科大学起業家コース博士後期過程入学
2001年 PGAコミュニケーションプログラム「優秀賞」受賞
2003年 高知工科大学起業家コース博士後期過程終了
主な活動・著書
日本ゴルフ界初の博士プロ。
デビット・レッドベター、ジョー・ティールをはじめ、通訳、翻訳、
インタビュー等を通じて100人を超える海外のティーチングプロと親交を持つ。 主な著書
「ザ・ゴルフボール」ごま書房
「驚異の新ハンマー打法」ごま書房
「ゴルフが上手くなる考え方」週刊パーゴルフ
「目からうろこが落ちまっせ」ゴルフ&ゴルフ
「一人でやれるコンペ必勝法」スポーツニッポン
「ナチュラルゴルフスイング」週刊パーゴルフ
「45分でゴルフがうまくなる!」PHP研究所
「Tee あんどTea」読売新聞のゴルフコラム
東香里ゴルフセンタ― 所属