2018年8月1日に公開された Journal of Sports Sciencesに、オーストラリアの研究者らによる、<Examination of the neuromechanical factors contributing to golf swing performance.(Sheehan WB., et al.)>という論文が掲載されている。
「ニューロメカニクス」とは、神経生理学とバイオメカニクスの両概念を統合した造語であり、ヒトの身体運動の制御メカニズムをより詳細に理解するために近年提唱された比較的新しい研究分野である。この研究では、ゴルフスイングのパフォーマンスにニューロメカニカル的な要因が寄与するかの検討をするため、下半身と上半身におけるニューロメカニカルの変数とゴルフパフォーマンスの関連について調べられた。
被験者は個々の筋硬度、Kvert(いわゆる“バネ”の指標)、柔軟性、筋パワー、最大等尺性筋力について評価された。ゴルフパフォーマンスについては、ハンディキャップとクラブヘッドスピードによって評価された。被験者はクラブヘッドスピードが高い群(HC)と低い群(LC)の2グループに分けられ評価された。
この実験の結果、主に以下の点がわかったとされている。
・クラブヘッドスピードは、Kvertと筋パワーとの間に正の相関関係を示し、ヒップモビリティとの間に負の相関関係が認められた。
・HCグループでは優れたKvertとパワーを示したが、筋パワーと柔軟性の尺度はパフォーマンスには関係していなかった。
・下半身の剛性レベル(変化のしにくさ。曲げ・ねじりなどの力に対して歪まない性質。)が高いと、力の発生率および出力が高まり、クラブヘッドスピードを高めるのに有益である。
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また、2018年8月15日には、European Journal of Sport Scienceにイギリスの研究者らによる、<Examining the influence of grip type on wrist and club head kinematics during the golf swing: Benefits of a local co-ordinate system.(Carson HJ., et al.)>(ゴルフスイング中の手首およびクラブヘッドの動きにグリッププレッシャーのタイプが及ぼす影響)という論文が公表されている。
手首の動きは、ゴルフのスイングを成功させる上で重要な要素であると認識されているが、複雑な動きはクラブヘッドの速度と方向に影響する。この研究では、ゴルフにおける手首の角度に関する先行研究が不十分であることから、手首全体の動きとクラブヘッドの特性について、「弱いグリップ」・「ニュートラルなグリップ」・「強いグリップ」の条件下での違いを調べることが目的とされている。被験者には12人の男性プロゴルファーが選ばれ、3つのグリップ条件下でのドライバーショット(24球)を実行した。
実験には、前腕遠位部とヘッドの動きは、10台のカメラを利用して3次元モーションキャプチャーシステムを用いて関節角度の差異が分析された。調べられたのはスイングの開始時、トップ時、インパクト時のクラブヘッドスピードおよびクラブフェース角度であった。
この実験の結果、主に以下の点がわかったとされている。
・すべてのスイングで両方の手首の屈曲/伸展および内転/外転の角度には有意差があること。しかし、尺骨/橈側偏位には、有意な相互作用はほとんど見られなかった。
・クラブフェース角はいずれのグリップの条件下においても有意な差が認められた。
<参考文献>
・Sheehan WB., et al.(2018)Examination of the neuromechanical factors contributing to golf swing performance. J Sports Sci. 2018 Aug 1:1-9
・Carson HJ., et al.(2018)Examining the influence of grip type on wrist and club head kinematics during the golf swing: Benefits of a local co-ordinate system. Eur J Sport Sci. 2018 Aug 15:1-9
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