レベルの高いプロほど試合中に怪我をしない ー韓国女子プロ(KLPGA)に対する調査研究ー

2018年8月14日にオンラインで先行公開されたJournal of Sports Science and Medicineに、延世大学校(韓国)の研究グループによる、<Injuries among Korean Female Professional Golfers: A Prospective Study>(韓国女子プロゴルファーの怪我に関する研究)という論文が掲載されている。

韓国女子プロ勢は、ロレックスランキング(女子ゴルフ世界ランキング)において、『ランキング入り選手数最多国』として知られる(149人の選手がトップ500入り、39人の選手がトップ100入り、4人の選手がトップ10入り)が、この論文によれば、韓国女子プロゴルフ協会(Korean Ladies Professional Golf Association :KLPGA)には、2017年現在、1644名のプロが登録されているとされている。

韓国では女子プロゴルファーの増加に伴い、ゴルフによる怪我の増加も課題とされている。多くは子ども時代からの激しいトレーニングに起因していることが先行研究でも示されてきた(Cabri et al.,2009; McGuffie et al.,1998; McLain and Reynolds, 1989)。

3つのディビジョンに区分されるKLPGAトーナメント

ところで、KLPGAトーナメントは、3つのディビジョンに分類されている。最高ランクのディビジョンⅠ(1部)は、シーズンごとに31のトーナメントが開催され、それぞれ3~4ラウンド(18ホールストロークプレー)で争われる。ディビジョンⅡ(2部)では19、ディビジョンⅢ(3部)では16のトーナメントであり、下位のレベルでは2ラウンドで争われる。
※論文記載内容に基づいているため、現況と異なる場合があります※

この研究では、2015年と2016年のプロトーナメントに出場した363名のKLPGAプロゴルファーに対して行われ、
・ディビジョンⅠ:119名
・ディビジョンⅡ:121名
・ディビジョンⅢ:123名
の各選手に対して、アンケート調査を5月と11月に計4回の実施した。調査内容は、IOCや米国NCAAなどで用いられる内容を含むYISSEM ISSというシステムが用いられたとされている。

ディビジョンⅠでは怪我の発生率が少ない

怪我の発生率をディビジョン別にみると、レベルが高くなるほど試合中に怪我をしないことが明らかとなっている。
<怪我の発生割合>
・ディビジョンⅠ: 5.6%
・ディビジョンⅡ:11.1%
・ディビジョンⅢ:13.4%
このように、ランクが下がるほど、トーナメント中に怪我をする割合が統計学的にも有意に高い(p <0.05)。

怪我の多い部位:ディビジョンⅠでは下肢、ディビジョンⅢでは上肢

調査の結果、KLPGAゴルファーの最も多い怪我の部位は、上肢(40.7%)であり、次いで、頭部および胴部(33.2%)、下肢(26.1%)が多かったとされている。レベル別にみると、ディビジョンⅠの選手は下肢の怪我の割合が高く、ディビジョンⅢの選手では上肢の怪我の割合が高かった。(但し、統計学的有意差は無い)
<上肢の怪我>
・ディビジョンⅠ:35.9%
・ディビジョンⅡ:41.5%
・ディビジョンⅢ:45.4%
<下肢の怪我>
・ディビジョンⅠ:32.8%
・ディビジョンⅡ:23.0%
・ディビジョンⅢ:21.8%

怪我の特徴と場面:インパクト時に負傷しやすい

ディビジョンを問わず、肩/鎖骨の怪我が多く(I:14.1%、II:15.7%、III:17.3%)、怪我のタイプとしては腱障害(21.2%)(I:23.7%、II :21.2%、Ⅲ:18.5%)のような負傷が多い。また、受傷のタイミングはレベルを問わずスイング中(47.9%~51.6%)であり、特にインパクト時(23.5%~30.9%)に怪我が発生する。具体的には、ボールインパクト時(26.5%)、ダウンスイング時(11.4%)、バックスイング時(11.1%)、フィニッシュ時(10.7%)、フォロースルー時(10.3%)の順に受傷の割合が高かった。

この論文のまとめとして、今後も継続的にKLPAG選手ならびにアマチュア選手等に対する研究を行い、傷害防止のためのプログラムや、あるいはガイドラインが策定される必要があるとされている。

 

 

<引用文献>
・Joeng HS et al.(2018)Injuries among Korean Female Professional Golfers: A Prospective Study,J Sports Sci Med. 2018 Sep; 17(3): 492–500.

<参考文献>
・Cabri J.et al. (2009) Golf-related injuries: A systematic review. European Journal of Sport Science 9(6), 353-366.
・McGuffie A.C.et al. (1998) Golf related head injuries in children: the little tigers. Scottish Medical Journal 43(5), 139-140.
・McLain L. G.et al. (1989) Sports injuries in a high school. Pediatrics 84(3), 446-450.

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ABOUTこの記事をかいた人

北 徹朗

<現職>武蔵野美術大学 身体運動文化准教授・同大学院博士後期課程兼担准教授、サイバー大学 IT総合学部 客員准教授、中央大学保健体育研究所 客員研究員  <学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程  <主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事