47.9インチ、ロフト5度のドライバーで7876ヤードを制した
フィル・ミケルソン(米国)が、50歳11カ月7日でメジャー最年長優勝を果たしました。1968年の全米プロ選手権を制したジュリアス・ボロス(米国)の48歳4カ月18日が、今までのメジャーでの最年長優勝だったのです。これを、ミケルソンが53年ぶりに更新しました。半世紀以上に渡り破られていなかった記録がどれほど凄いことが想像がつかないほどです。
第103回全米プロゴルフ選手権は、サウスカロライナ州のキアワアイランドリゾート(パー72)にて開催され、メジャー史上最長7876ヤードと、パワーと体力が必要な難コースです。ミケルソンは、50歳で出場資格を得たシニアツアーも勝ちましたが「若い選手と同じように飛ばせる間はやめない」と、主戦場はレギュラーツアーに絞っていました。
近年は成績が下降し、27年以上守った世界ランキング100位以内からも今年漏れて全米プロ前週は115位と低迷していました。それでも食事制限とトレーニングをかさねて体重を8キロ絞り、前週までのドライバー平均飛距離はツアー48位の302・5ヤードと、5年前より9ヤード伸びています。
今回の全米プロに投入したドライバーは、長さが48インチの制限ギリギリの47.9インチ、ロフトはなんと5度というドラコン仕様ともいうべきものでした。
ミケルソンは、最終日の16番608ヤード、パー5では、追い風ながら366ヤードのビッグドライブを放ちました。一緒に回っていた20歳年下のブルックス・ケプカの361ヤードをオーバードライブしています。ツアー随一の飛ばし屋であるブライヤン・デシャンボーの363ヤードを抑えて、なんと出場選手最長の驚異的なティーショットだったのです。
18番では、なだれ込んだ観衆にもみくちゃにされながらグリーンに向かいました。タイガー.ウッズが復活優勝したツアーチャンピオンシップの最終ホールの再現同様、いやぞれ以上の観衆の興奮が伝わってきました。コロナ禍でギャラリーを通常の各日4万人から1万人に制限されていましたが、最終日のミケルソンとケプカの組にほとんどのギャラリーが付いていました。何度もはい上がってきた英雄に、少しでも近づきたいギャラリーの思いが行動に表れていました。その英雄は「たくさんのサポートがないと、ここにはいられなかった。心から感謝したい」と言いました。
以前よりミケルソンのファンへの対応は、神対応で特別のものがあります。自分の成績に関係なく、ラウンド後は毎回観客のサインに丁寧に応えます。1時間以上にわたり長蛇の列の観客のサインに応えることも少なくありません。自分のポケットに用意していたサインペンを出し、一人ひとり丁寧にサインしていました。
流れ作業になったり、面倒くさそうな仕草になってしまうところを見せるどころか、「自分がサインをさせてもらっている」と言わんばかりに笑顔でサインに応えているのです。そして必ず一人ひとりにサインを返す時、相手の目を見て「サンキュウ!」と言います。
相手がジュニアの場合は、「楽しんでるかい?」と一言つけるのです。サインされた観客は、一瞬にしてミケルソンの大ファンになるのです(ほとんどの場合は、既に大ファンなのですが)。サインだけでなく、写真撮影にも気軽に笑顔で応じます。ミケルソンは「人たらし」だと思います。そんなファンに支えられた優勝ではなかったでしょうか。
米国でのタイガー・ウッズの人気は、確かに凄いものがあります。しかしミケルソンとキャラクターが違い、そばに居ても何か近寄りがたい存在であります。ちょうど、ジャック・ニクラウスとアーノルド・パーマーのような違いでしょうか。
ミケルソンのファンへの対応は、アーノルド・パーマーの神対応を受け継いでいるようでもあります。ツアー会場で気さくに私とでも挨拶を交わしてくれた今は亡きパーマー。アーニーズアーミー(パーマーの応援団)の今後は、フィルズアーミーとして受け継がれていくような気がします。
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