「シニア黄金時代」を支える1人2役会長。 ″鬼より怖い〝マークセンを自ら止めた倉本昌弘(63)

シニア選手を兼務する日本プロゴルフ協会会長の倉本昌弘(63)が、谷口徹(51)とのプレーオフを1ホール目のバーディーで制し、逆転優勝を果たしました。2014年にPGA会長に就任してから兼務で5勝目。シニアでは16年11月のいわさき白露シニア以来の8勝目でした。

今季シニアツアー5戦目のスターツシニア(茨城・スターツ笠間GC)。大会3連覇を目指したプラヤド・マークセン(53=タイ)の快走を会長自ら阻止する意地をみせた1戦でした。昨年7月のシニアオープン(2位)以来シニア2試合目の谷口徹は、またもシニア初優勝を逃がしました。シニアの次戦は8月3~4日の熊本・阿蘇シニア。倉本は今後もシニアの試合には出場してシニアツアーの活性に努めます。

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シニア入りして3年連続賞金王。通算13勝を荒稼ぎしてきたプラヤド・マークセン。ここ3年間日本のシニアツアーはマークセンに蹂躙(じゅうりん)されてきたといっても過言ではないでしょう。

「打倒マークセン」「ストップ・マークセン」がシニアツアーの合言葉でした。今季のマークセンはシニア3戦してまだ優勝はありませんでしたが、4戦目のこの試合、今季初めて初日から首位に立ち″独走気配〝でした。

63歳にして若々しいドライバーショットを放つ倉本昌弘(スターツシニア=茨城・スターツ笠間GC)写真提供:日本プロゴルフ協会

無敵の男にこんなことが起きるとはーゴルフは分からないという出来事が起きました。最終日、首位から出たマークセンは前半9ホールで4バーディー、ボギーなしと独走街道を突っ走っていた14番(パー5)。

5㍍弱のバーディーチャンスにつけながらこれをミスして1㍍弱オーバー。返すパーパットも外して今度は1.5㍍。このボギーパットも外します。4パット目になんとかカップインさせる大ハプニング。「7」のダブルボギーになりました。

同じ14番で一組前の倉本は2オン、3㍍のイーグルパットを決める明暗。9アンダーとした倉本、8アンダーに落ちたマークセン。一気に首位は入れ替わりました(この時点で谷口もトップタイ)。

15番では6㍍のバーディーを決めエージシュートへ向かって突っ走った倉本の勢いは63歳とは思えませんでした。ノーボギーの8アンダー、64。しぶとく食い下がってきた谷口とのプレーオフ。18番(パー5)での1ホール目。3㍍のバーディーパットをここでも決めた倉本が鮮やかに決着をつけました。

思いもよらなかったマークセンの自滅に助けられたとはいえ、63歳・倉本のノーボギーの「64」はお見事。3年前のいわさき白露以来のシニア8勝目で、会長との兼務になってからは5勝目。エージシュートには1打足りませんでしたが、老いてもますます元気な会長さんです。

会長職は6年目(3期目)。当然、多忙なビジネスもこなさなければならない″一人2役〝です。中嶋常幸や室田淳らビッグネームが60歳代になり、時代が変わるシニアですが、昨年から登場の谷口徹や伊澤利光はじめ、今季は手嶋多一、深堀圭一郎。

さらに藤田寛之、丸山茂樹らも今年中に50歳のシニア世代に加わります。まだまだレギュラーツアーと掛け持ちの選手が多く、実力者ぞろいが集まり、まさに「シニア黄金世代」を迎えるシニアツアーです。しかし、倉本会長はコメントしています。

倉本昌弘会長。
☆「マークセンが優勝だろうなと思っていましたが、突然崩れましたからね。自分は10アンダーで3位ぐらいかなと思ってプレーしてました。まあシニアツアーも谷口徹や手嶋多一らと50歳で入ってくる選手は強いですよ。これから入ってくる藤田寛之らも含めてレギュラーと掛け持ちする選手ばかりで実力は十分で頼もしいです。でもシニアツアーはそういう形の活気づきばかりは望んでいません。それよりも、支えてくれているスポンサーの心を繋ぎとめられるツアーでありたいと思うのです。今回のようにスポンサーの方々が総立ちで拍手をして喜んでくださるツアーがほしいのです。それはレギュラーや女子ツアーにはないシニアのいいところだと思います。これからもそういう試合を続けていければいいなと思う。表彰式で、磯崎社長から″来年も開催します〝といって頂いて嬉しい限りです」

20回開催の記念大会で久々日本選手がマークセンを止めて優勝。会長自らがその旗手となってスポンサーを喜ばせた満足感があふれていました。選手・倉本を離れれば会長・倉本の思いも次々と噴出してくる″兼任会長〝です。

目下国内のシニアツアーは18試合。試合数の確保はツアーの根幹にかかわる重要な案件です。そのための営業も日々欠かせません。日大時代のアマとしての数々の栄冠。レギュラーツアーでは通算30勝の永久シード選手(25勝以上)。レギュラー時代は選手会長を8年間務めた実績もあります。

プレーヤーとしてもまたビジネスマンとしても2役を使いこなせる貴重な存在でもあるマッシ―倉本なのです。

プレーオフを戦った谷口徹は「(会長は)60代なのに元気」と舌をまき、進撃を止められたマークセンは「前半はリズムよく回れたのに、後半13番からドライバーが左に曲がった。14番も左に曲げたあとパットがおかしくなって4パットやってしまった。逆転されてもまだ4ホールあると思って焦らなかったけど、クラモトさんが強かった」。

残り4ホールで2バーディーを奪って盛り返したのはさすが。惜しくも1打、倉本に追いつきませんでした。「次はアメリカで頑張ります」と、全米シニアオープンでのリベンジを誓うマークセンでした。

【この記事は2019-6-17 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】

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