アイドル系の先輩格、香妻(こうずま)琴乃(26)がプロ8年目、涙のツアー初優勝です。マンシングウェア東海(愛知・新南愛知CC美浜)の最終日、3打差10位から出た香妻、
バーディー、ボギーなしの「64」の大爆発で通算15アンダー。1打差2位に4人が迫る大混戦を制する大逆転劇でした。腰痛やパットの不調でシード権も失い、大スランプに落ち込んでいた彼女。
この試合も資格がなく、申ジエ(韓)が右手首とひじの痛みで欠場したおかげで3日前に決まった繰り上げ出場。ウェイティングからの優勝は、日本選手では史上初という快挙でした。男子ツアーで3週前、RIZAP・KBCオーガスタでツアー初優勝した出水田(いずみだ)大二郎(25)とは鹿児島の同郷で、横峯さくらの父・良郎さんが指導する「めだかクラブ」で学んだ仲。TVで見たRIZAPでの出水田の″攻めるゴルフ〝が強い印象に残り、大いに刺激を受けたという香妻。男女プロが続けて挙げた鹿児島勢の気勢も燃え上がっています。
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所属は、アイドル系との契約が多いバッグやウエアのサマンサタバサ。車はベンツとの使用契約。ゴルフ用具はスリクソン。電動工具や遠心機を扱う工機ホールディングス。他にJALなども加わって、いま香妻とスポンサー契約を結んでいる企業は実に7社。ゴルフウエアや帽子などにはそれぞれのロゴをあしらって、まるで歩く広告塔です。
鹿児島鹿屋市生まれですが、宮崎・日章学園時代はナショナルチームのメンバー。卒業後、11年夏にプロテスト合格。下部ツアーでは2勝を挙げ、ツアーでも14年はプレーオフに2度進出(2度とも負け)するなど何度も優勝争いを演じ、賞金ランク19位で初シード権を獲得しました。
キュートな”美人選手” とうたわれて人気も急上昇しましたが、初優勝がこないまま14年10月に腰痛を発症。一時は歩けない、寝返りも打てない、咳をしても痛い・・という重症で、これがパッティングにも影響がおよび、1メートルのパットに苦しみました。
15年は賞金ランク48位で辛うじてシード権を保ちましたが、16年、17年と連続シード落ち。17年暮れのQTも104位、リランキング55位と振るわず、今季は推薦待ちの状態でした。
″黄金世代”など若手が次々と台頭してくる女子プロ界。「香妻琴乃」の名前も消えかかる日々。「スポンサーさんに申し訳ない。レギュラーツアーに出られないとスポンサーさんについてもらってる意味がないのでは・・。試合に出ると、私が思っているよりも本当にたくさんのファンがいて18ホールついて回ってくれる。こんなに応援してもらってるんだったら、1日でも早く優勝する姿をみせたいなと頑張っていました」(香妻)と、述懐しました。
3打差10位から逆転を狙った最終日。前日まで苦しんだパットが冴えわたりました。1番で5メートルを決めると、アウトは1ホールごとに訪れたチャンスをことごとくモノにして5バーディー。後半は11、12番をとったあと、バーディーラッシュが止まってしまい、岡山絵里、新垣比菜、イ・ミニョンが迫ってきます。さらに急追してきたアン・ソンジュの影も恐怖でした。
「絶対にプレーオフになると思っていました」と覚悟を決めていた香妻。最後の18番は右ラフから121ヤードのセカンドをPWで2.5メートルにつけ、この最後のチャンンスを見事に決めてホールアウトしました。この日8つ目のこのバーディーがウィニングパットでした。
先に上がって約50分間を練習グリーンでPOに備えた香妻。怖かったアン・ソンジュが最後は1打差で追い上げてきて18番は3メートルのバーディーパット。入ればPOの場面でした。ところが、アンがこのパットを外す”ラッキー”。勝負の女神は香妻に微笑み、琴乃は父親やキャディーと抱き合う感激の一瞬でした。
2週連続優勝していた申ジエが、突然の欠場届け。普通なら出場できない試合でツアー初優勝までが転がり込んできたのですから、こんな幸運はめったにありません。懸命なストレッチ治療やトレーニング。
50万円もした電気治療器を購入して腰に当てた毎日。なんとか持ちこたえてきた腰と、復調したパターが今週の香妻を支えてくれました。7社とスポンサー契約を結ぶ人気プロにようやく明るい陽光が差し込み始めました。
男子ツアーの出水田大二郎からは、さっそくお返しのSNSが届いたという。「優勝おめでとう。ウェイティングからの優勝なんて、ホント半端ない。自分にも最高の刺激になりました」と。二人は鹿児島で小中学時代の同級生。「めだかクラブ」でともに腕を磨いた仲。3週前、出水田がRIZAP・KBCでツアー初優勝したときに香妻が打った祝福のメッセージへのお返しでした。
遅ればせながら26歳で大輪の花を咲かせた香妻琴乃。″黄金世代”には負けてはいられないでしょう。国内賞金も44ランクアップで獲得賞金も2000万円を超え、ランク40位まで浮上してきました。飛ばし屋ではありませんが、14年には平均パット1位になった実績もあるパターを含めたショートゲーム巧者です。
「まだ1勝しただけです。シーズン最終戦のリコーカップ(ツアー選手権)が地元の試合(宮崎)なので、このメジャーに勝ちたいのが、近い目標です」(香妻)。ウェイティングから勝ち上がった選手が、次はメジャーを狙うという。その意気やよし!でしょう。
【この記事は2018-9-18 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】
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