2016年会員募集の現状と今後_その2

4、中間的価格帯の成功例
 中間的な価格帯に位置する募集で成功した千葉県の南総カントリークラブの件は、忘れてはならない事例と言える。
 同クラブは2010年1月22日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請したのだが、その後幾多の変遷を経て、2011年6月30日に更生計画案が認められ、同年7月20日以降間接株主制のゴルフ場として再生した。
 再生に至る過程は、自主再建を目指す会員側と、ゴルフ場経営会社の株式を保有するゴールドマン・サックスグループとの、闘いの構図でもあった。この闘いを勝ち抜く為には活動資金が必要であり、この資金負担を任意で立ち上がった多くの会員が拠出し、外資と闘ったのである。そして自主再建を目指す会員グループが、勝利したのである。

 自主再建グループ会員が拠出した資金に付いて、再建した暁には営業利益で返済する事を、闘いのスローガンとしていた。そしてこの返済へ向けた資金調達計画が、数次に渡る会員募集計画であった。
 2012年1月から開始された第1回目の募集は、消費税込み1,832,500円で100口の募集を行った。瞬く間にこの募集は完売した。2月27日に終了した募集は、1ヶ月間で50名を単純計算で集めきった事に成る。
 この募集は翌年2013年も行われた。第2回目の募集と言う事に成る。募集金額は前回同様に1,832,500円で100口と言う内容だったが、3月1日から開始された募集は3ヶ月間で、5月30日には終了する事になった。

 更にその年の8月には、金額を2,042,500円へ若干上げて70口の募集が行われたのだが、暮れの12月末には定員に達した。
 終わってみれば合計270名が、新規会員となったのである。この3回に及ぶ会員募集を通じてクラブ側は、5億円ほどの資金を集める事が出来、この資金が自主再建へ資金を拠出した会員への、返済原資と成ったのである。

5、その他の会員募集
 これまで会員募集の成功例を見て来た訳だが、それではその他の会員募集は、どの様な状況なのであろうか。
 その他多くのクラブは、苦戦しているケースが多い様に思われる。多くのゴルフ場が募集活動成功への道のりが見えずに苦しんでいる姿は、単に募集環境の悪さだけに原因を求められず、募集に関するノウハウを持ち合わせていない事も、一要因として理解するのが自然なのではないだろうか。

 さかのぼる事30年も前は、会員権業者へ丸投げして募集をしていたケースが多かった。それで済んでいた為、クラブには募集に関するノウハウの蓄積が少ない様に思える。この問題は、募集体験を分析した資料として残されていない為であり、更には事業主体の度重なる交代も挙げられる。

 ここまで会員募集の状況を見て来て言える事は、大成功を収めた数える程のクラブと、苦戦している多くのクラブと言う構図である。
 この状況を打破する為には、少なくとも現在行われている募集価格の見直し、募集体制の見直し、会員制システムの再構築と言う作業が、否応無しに求められてくるものと考える。この作業は、現在必須条件では無いだろうか。

6、会員権業者の役割
 現在、多くのクラブで行われている会員募集活動に於いて、会員権業者の果している役割が低下している。
 これは主に会員募集に於ける募集金額が低額に成った事で、事業主体から会員業者への利益分配が、極端に減少した事に起因するものだ。更には個人情報保護法に則った営業体制を、構築しにくい事も後押ししている。

 利益の少ない分野へ、会員権業者も又積極的に係って行けず、関係は現在希薄に成りつつある。双方が助け合った等と言う協力・補完関係は、過去の物語と言える。
 部分的にはゴルフ場と会員権業者による協力関係と言う形跡も確認出来るが、それをもってしてゴルフ業界全体を語り得る様な現象とは成っていない。

7、会員募集の今後
 預託金を有する会員権の歴史は、日本に於けるゴルフ場発展の歴史でもあった。社団法人制から株主制へ、そして預託金制へと歴史が流れて行く中で、この預託金システムはゴルフ場開発へ多大な貢献をした。

 新規ゴルフ場開発資金をこのシステムが担い、膨大な資金を会員権購入者より吸い上げて来た。新規ゴルフ場開発の募集へ手を上げた会員権購入者は、インフレ経済を背景に、将来会員権売却益を得られる可能性が高かった為、事業主体及び会員権購入者は共にWIN-WINの関係を構築出来たのである。

 しかしながら1990年を頂点としたバブル経済と、その崩壊に伴い出現してきたデフレ経済は、この様な会員権の預託金システムを崩壊させてしまったのである。

 インフレ経済社会への転換が実現しない限り、販売価格の大半を預託金が占める従来型会員募集は検討課題にも成り得ず、可能性があるとすれば、預託金を預る組織の信用度が、高い場合では無いかと考えられる。
 しかし単なるインフレ経済待望論では、過去の失敗から何も学んでいない事になり、仮にインフレ経済に成ったとしても、募集活動が再燃するかは、何人も確約出来ないのでは無いだろうか。

 何よりも売れる会員権、魅力ある会員資格とは、クラブに於いて会員、ゲスト、ビジターに対する明らかな待遇差が、ある事と言える。これはゲストやビジターに対して、冷遇_差別すれば良いと言う問題では無い。

 このクラブによる待遇差の問題を無視して、会員システムの深化は有り得ない。これはホスピタリティの問題とも絶妙に関連して来るのだが、たとえ質素であれ会員にとっては満足度の高い、高揚感を得られるクラブシステムは、何ものにも換えがたいのではないだろうか。

 魅力的な会員制組織、このシステムを構築出来たクラブの会員権こそが、売れ筋だと言える。

2016年7月2日東京神田神保町にて

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大野良夫

大学卒業後30歳を契機にゴルフ業界へ身を置く様になり、ゴルフ会員権業者へ勤務の後2003年8月に独立。現在、タクト株式会社代表取締役。
主な活動・著書
「 ゴルフ事件 過去帖 」「 ゴルフ 偉人、名人、達人 列伝 」をWEBにて公開中。
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