難コース川奈を制した22歳、女子ツアーにまた気鋭の永峰咲希(さき)がツアー初勝利です!首位に3打差5位から出た永峰は、5アンダー66で大混戦を抜け出し、通算10アンダーで並んだ菊地絵理香(29)とのプレーオフ決戦。2ホール目で菊地がパーパットを外して感激の初Vをつかみました。宮崎市出身、昨年の賞金ランクは47位。
今季は8戦して予選落ち3回。前週のKKT杯バンテリン8位で波に乗り、一気にトッププレーヤー(賞金ランク7位)に躍り出るシンデレラ娘を演じました。次戦は国内メジャー「ワールドレディス・サロンパス杯」をこなし、全米女子オープンの日本地区予選(5月8日 茨城)にも挑戦することが決まっています。川奈で咲いた新鋭が″世界〝を目指すニューヒロインに突進しますかどうか?!
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苦しい戦いを演じながら、常に明るい笑顔を絶やさずにプレーする永峰咲希が印象的でした。菊地絵理香とのプレーオフ2ホール目(18番)。ショット―メーカーの菊地が珍しく第1打を右のラフに入れ、打ち上げのセカンドショットを難しくしました。
案じた通り、ラフからの菊地のセカンドは、グリーンに止まらず奥のエッジまで転がりました。対する永峰のショットは、最後までブレませんでした。プレーオフ2ホールとも計ったようにベストポジションのフェアウェイ左サイド。
セカンドが狙いやすいポジションです。2度ともピンには寄りませんでしたが、カップ左10㍍前後に確実に2オンさせました。
グリーンオーバーした菊地の寄せは、ピンそばに止まらず2㍍オーバー。これを見た永峰の9㍍の第1パットはラインに乗って入ったかと思われたほどのナイスタッチ。カップそばについて楽々のパー。2㍍のパーパットを入れなければ負け、と追い込まれた菊地の2打目のパットは、無情にカップ左に外れました。その瞬間、永峰のプロ初勝利が決まりました。
両手を広げて喜びを表現した咲希に涙はなく、いつもの明るい笑顔がはじけました。
「泣かなかったですね。嬉しさは、想像していたのより何倍も大きかったですが、涙は出ませんでした。菊地さんが外した瞬間、何が起きたのか分からなくなりました。勝ったの?決まったの?っていう心境でした。その前、自分のバーディーパットはラインがよく見えて、途中ラインに乗って入ったかなと思いましたが、最後ちょっと弱かったんですね。バーディーで決まったわけではなかったので、表情もあまり変わらなかったのでしょうね」
(永峰咲希のコメント)
川奈の高麗グリーンは有名です。ベントグリーン全盛のいま、数少なくなった高麗グリーと対するとき、プロでもかなり神経を使います。永峰は話しました。「きょうはショットもよくて、ほとんどバーディーチャンスばかりでした。
もっと入れたいところはあったのですが、″入れる〝という気持ちを最後まで出し過ぎると、高麗は打ち急いだりするので、リズムだけを考えながらプレーしたら入ってくれました」。
1打リードで迎えた永峰の本戦18番グリーン。8㍍のバーディーパットを2㍍オーバーさせて、返しも外して菊地に追いつかれました。
「寄せて2パットでいくつもりだったのですが、思いのほかヘッドがスパッと出ていって打ってしまった。当たった瞬間、アッと思ったのですが、やはり転がっていってしまった」(永峰)と、危なかった一度だけの大ミス、高麗グリーンの難しさを述懐していました。
苦節5年目。南国・宮崎で生まれ育った咲希は、自宅近くにあった高岡ゴルフセンターの役員をしていた祖父の手ほどきで、10歳からクラブを握りました。小4から試合に出るようになり、それまでやっていた硬式テニスから本格的にゴルフに取り組むよになりました。アマチュア時代、九州高校ゴルフ選手権に優勝(11年)。12年には全国高校ゴルフ選手権優勝、日本女子オープンのローアマにも輝きました。
11~13年はJGAナショナルチームのメンバーとして活躍。14年のプロテストには一発合格と、順調な成長を続けました。12月のファイナルQT37位で15年からのツアー出場権を得ました。15年は優勝こそ遠かったですが8回のトップ10入り。
16年はヤマハレディスで5位タイに入る上々のスタートを切りながら、5月ごろからドライバーショットがおかしくなるスランプで苦しみました。平均飛距離250ヤード近くまで距離が出るようになり、その分曲がるリスクも抱えたのが原因でした。
16年は初Vの夢もむなしく、賞金ランク23位に上昇したのがせめてもの収穫でした。17年は35戦に出てトップ10入り4度。しかし賞金ランクは47位とパッとせず、今季5年目の飛躍を誓ったシーズンに、一気に大輪の花を咲かせたのです。
★永峰咲希の優勝コメント。
「今までは優勝争いらしい争いはしていなかった。今回、初めて上がり3ホールが″こんなに緊張するんだな”と感じました。そんな中でも冷静にゴルフを出来ている自分がいたので、そこは新しい発見でした。自信もできました。時間はかかったけれど、いい勝ち方が出来たのでよかったかなと思います。
すごくドキドキしているんだけど冷静だった。何ででしょう。ショットが悪くなかったので″きょうはいける〝と思っていた。それが大きかったのかな。3日目は風が吹いてショットがバラバラになった。手打ちになっていた。練習場で、もっと体幹を意識して打とうと思ってやったらショットがよくなってきました。
最終日は、試合でも体幹に力を入れてインパクトすることだけを考えていました。そこが3日目とは違っていました。去年は春先からショットも悪く、パターも入らない試合が続いて一番辛かった。去年のスイングを見ると、イメージとスイングがバラバラで、よくこれでシードが取れたなと思います。でもその苦しさがあって、今年があると思います」
このオフ、古閑美保プロとある番組で会い「芝生の上での練習もいいけど、人工芝のマットで打ったらもっと球数を打てるよ」と聞き、12月、1月はそれを実行したという。今までは1日300球くらいだったのが、今年は600~700球は打ったのがよかったそうです。
練習の虫になったのも、咲希を大きく飛躍させたのでしょう。「ツアーについてきて世話をしてくれる母(香奈子さん、46)にもお世話になった。それに私は宮崎で生まれてなかったらゴルファーにはなってなかったと思います。いい環境で周りの方々が沢山応援してくれたおかげです。次は早く2勝目を挙げたい。そこしかないです」(咲希)。
安定した素晴らしいショットを連発。ロングパットのアプローチも人並み以上のタッチを身につけている永峰咲希のゴルフ。女子プロ界にこつ然と現れたニューヒロインのこれからが見ものです。
【この記事は2018-4-23 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】
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