タイ人プロゴルファーの強さを探る

(GOLF&GOLF 2017年2月号掲載)タイ人プロゴルファーの強さを探る 大東将啓

今年の米国女子プロツアーでアリヤ・ジュタヌガーンが大活躍しました。  タイ人の若干21歳です(1995年11月23日生まれ)。

2016年のヨコハマタイヤLPGAクラシックでLPGAツアー初勝利を飾り、同時にタイ人としては初のLPGAツアー勝利者となったのを皮切りに、続く2つのLPGAトーナメントにも連勝し、LPGA史上において初優勝から3連勝を飾った初のプレーヤーとなりました。 また、全英女子オープンで2位に3打差をつけて優勝し、メジャー初制覇も果たしまた。 今期は、通算5勝をあげて、利ディア・コをおさえて見事賞金女王に輝きました。

ジュタヌガーンのキャディーバックに、ドライバーを入れていません。 3Wでも、280ヤード以上と規格外の飛びで他の選手を圧倒しているのです。 飛距離ばかりがスポットを浴びているが、最大のライバル、コは、「キャディーバッグにドライバーが入っていないなんて、私には信じられないことだけど、彼女はそれが当たり前。 アマチュア時代からライバル関係にあって、彼女はパッティングが素晴らしい」と証言しています。

我々のタイゴルフツアーで幾度もお世話になっているサイアムカントリークラブ。 毎年ホンダLPGAトーナメントが行われています。 ジュタヌガーンは2007年、11歳でホンダLPGAタイランドに出場し、LPGAツアー最年少出場記録を作りました。 2013年のホンダLPGAタイランドでは17歳で最終ホールに向かう時点で2位に2打差をつけていましたが、最後にトリプルボギーを叩き韓国の朴仁妃に1打差で敗れました。 姉のモリヤに抱きかかえられ泣き崩れたアリヤの姿は、今でも忘れられません。 その時の苦い経験が現在の活躍の糧となっているのでしょう。

ジュタヌガーン以外にも現在多くの対人がプロゴルフ界で活躍しています。

プラヤド・マークセン (50)は、今年レギュラーツアーと並行しながらPGAシニアツアーにも参戦しました。 いきなりメジャー大会である日本シニアオープンと日本プロゴルフシニアを制すなど、参戦1年目でシニアツアー賞金王を獲得する快挙を成し遂げました。

タイにはもともと多くのゴルフ場があり、多くの海外旅行者がゴルフを楽しんでいましたが、今では、一流ツアープロの輩出国になりつつあるのです。

なぜ、タイのプロゴルファーたちは世界のトップレベルに成長していったのか?  タイは1年中温暖な気候であり、タイガー・ウッズの母親がタイ人でもあります。 タイガーが鮮烈デビューをしてタイに凱旋した時からゴルフブームが始まりました。 もう一つの要素として見逃せないのが「シンハービール」の手厚いサポート体制です。 タイで一番人気のあるシンハービール。 ほとんどのタイ選手たちのシャツに刻まれている獅子のエンブレム。 タイを代表するビールブランド「シンハービール」です。 「シンハービール」はプロゴルフの支援に積極的で、契約選手には月数万円の給料を支払っています。その他、トップツアーを戦う際の遠征費を負担しているのです。

また彼らが躍進を続けるもう一つの理由は、タイ国内で多くのツアーが開催されていることです。 タイには年間10試合以上を開催するツアーがあり、アジアをはじめトップツアーを目指す若手の登竜門となっているのです。 これらの試合には、マークセンをはじめ欧州でも活躍するトンチャイ・ジェイディといったスター選手が積極的に出場しています。 優勝賞金が50万円にも満たない小さな試合なのですが、下にいる選手たちがトップクラスのプレーを間近で見られる良い機会となっているのです。 日本の下部ツアーは世界のビッグツアー同様の4日制の試合がありません。しかしタイでは、どんなに小さな試合でも最初から4日間の試合を経験することができるのです。

何から何まで上と同じ環境でやることができるんです。そういったこともあり、タイの選手は練習場にいる時間よりも試合をしている時間の方が長いのかもしれません。 こういったことがタイのプロゴルファーたちを成長させていっているのです。 タイの国内ツアーで腕を磨いた後は、日本などのアジアツアーに出る必要もなく、すぐに海外のトップツアーに参加することだってできるのです。  日本では、『日本ツアーである程度成績を残してからでないと海外に行っても仕方がない』という考え方があるようですが、タイの選手たちにそんな考えはありません。

今回、桜ゴルフの福崎栄治さんにもインタビューさせて頂きました。

15年にタイガーがプロデビューしてお母さんの母国でのタイを訪れました。

タイゴルフやアルパインカントリーをプレーして、それまでは外国人の為のゴルフであったのがタイ人の関心を持つきっかけとなりまいた。 当初はタイ人の富裕層の為のゴルフであったのが、だんだんと大衆化されてきました。

タイゴルフの利点としては

  • 年中にゴルフができる気候である
  • プレーフィーが安い
  • 親がメンバーであれば、子息は無料ないし半額でゴルフができる
  • キャディーが帯同で着くので、初心者に優しい
  • 日本が寒い時にベストシーズン(11月から3月まで)
  • バンコク市内から1時間以内に100コースを超える
  • フェアウエー走行可能なプレーヤー単独カートでプレー可能
  • 1日で2ラウンドでも可能(ゴルフ場のはしごも可能)
  • マッサージが安い(2時間で1500円程度)

今後もタイゴルフから目が話せない状況が続くことでしょう。

ABOUTこの記事をかいた人

1958年(昭和33)6月9日生まれ
1981年 同志社大学経済学部卒業
1983年 ダラス大学院経営修士課程(MBA)卒業
(社)日本プロゴルフ協会(PGA)会員、A級インストラクター
 文部科学大臣認定ゴルフ教師
1997年 PGAコンベンションティーチング部「優秀賞」受賞
1999年 PGA 研究発表 「最優秀賞」受賞
2000年 高知工科大学起業家コース博士後期過程入学
2001年 PGAコミュニケーションプログラム「優秀賞」受賞
2003年 高知工科大学起業家コース博士後期過程終了
主な活動・著書
日本ゴルフ界初の博士プロ。
デビット・レッドベター、ジョー・ティールをはじめ、通訳、翻訳、
インタビュー等を通じて100人を超える海外のティーチングプロと親交を持つ。 主な著書
「ザ・ゴルフボール」ごま書房
「驚異の新ハンマー打法」ごま書房
「ゴルフが上手くなる考え方」週刊パーゴルフ
「目からうろこが落ちまっせ」ゴルフ&ゴルフ
「一人でやれるコンペ必勝法」スポーツニッポン
「ナチュラルゴルフスイング」週刊パーゴルフ
「45分でゴルフがうまくなる!」PHP研究所
「Tee あんどTea」読売新聞のゴルフコラム
東香里ゴルフセンタ― 所属