太平洋クラブ御殿場コースの改修を目の当たりにして

加藤俊輔氏の原設計をリスペクトしつつリース・ジョーンズの世界観が実現される

「御殿場コースを国際水準に準ずる、日本を代表するトーナメントコースとするべく」韓俊太平洋クラブ代表取締役社長の大英断で実行されている全面改修。

改修を担当する世界的名設計家のリース・ジョーンズ氏とリース氏のアシスタントのブライス・スワンソン氏が来日して直接工事の進捗状況をチェックすると同時に、韓社長の意向を組み入れながら最終的な理想のコース造りへの打ち合わせを行うということで、現地に赴いて同行取材をさせていただいた。

妥協することなく理想を追求する韓社長とリース氏の熱き想い

リース・ジョーンズ氏に会えることはとても楽しみだった。40年近く前、ゴルフ雑誌の編集記者時代のこと。書斎派の編集長から、「ゴルフコースの基本はスコットランドのリンクスにあるが、これからゴルフの主流となる米国の多くの名門コースやチャンピオンシップコースはスコットランドやイングランド出身の設計家が関わっている。

その中でも、ロバート・トレント・ジョーンズ・シニアはこれから注目される。最大の特徴は、それまで持てはやされていたペナルティ型のデザインではなく、それぞれの腕前のゴルファーに見合うルートが用意されている、戦略型と言われるデザイン手法を採り入れた設計をする設計家だからだ」と教えられたのを覚えていたからだ。

御殿場コースに着いて2階のレストランから見える改修中の18番ホールには強烈なインパクトを受けた。グリーン手前のエプロン部分からの左サイドが大きく削られ、濃い茶色の土が剥き出しになっている。

グリーン左サイドの3つのバンカーも形状と深さに変化を持たせて掘り直されている。また、グリーン右手前の池がグリーン右サイドまで伸び、グリーン周辺を見ただけでも相当に難度が高まるであろうことが窺える。

コースに出てカートに乗って改修中のホールを案内してもらって最も眼を見張ったのは、5番ホールのティーボックスからと7番ホールのグリーン地点からハッキリと富士山の美しい姿を眺望できるようになったことだ。

5番ホールは左サイドの林を、7番ホールはサブグリーンの右横の林の左側部分の木を伐採したことで、従前は中腹付近までしか見えなかった富士山がなだらかな裾野まで見渡せるようになった。

太平洋クラブ御殿場コース7番ホール

富士山をプレー中にもより見ることができるようにしたい、というのは韓社長の最もこだわるところで、リース氏も富士山が御殿場コースの価値をより高めることを承知していて改修が行われている。

リース氏はブライス氏とともに、まさに陣頭指揮にあたって改修中のホールをチェックしていた。御殿場に滞在中のスタッフの2人のシェーパーにも細かい指示を出し、歩きながらティーボックスやフェアウェイからグリーン方向を見たり、逆にグリーンからティーボックス方向を振り返ったり、富士山の見え方などを確認していた。

ランチを兼ねてメディアとの交流時間も設けられ、私もいくつかの質問をさせていただいたが、終始穏やかな表情で丁寧に答えてくれた。最初は当然というか、会員の方だけでなく日本のゴルファーの多くに関心を持たれている、原設計家の加藤俊輔氏のデザインについて。

リース氏は、「第一印象は、ルーティングが素晴らしい。特に、この地形に見合った1番ホールから18番ホールまでが形成されていて、静と動のフローというか流れが見事と言えます。

距離のバランスも、パー3には短いホールも長いホールもあり、パー5では特に18番ホールは秀逸なデザインがなされています。ドラマが生まれる最終ホールということを念頭に置かれて設計されていますよね。その点は私たちが手掛けたトーリーパインズやイーストレイクの最終ホールと共通しています。

イーグルも取れますがリスクが伴いますよ、という素晴らしいデザインです。改造前の加藤さんのデザインに悪い評価をする人はいないはずです」とリスペクトしていた。

太平洋クラブ御殿場コース5番ホール

一般のゴルファーでも楽しめる戦略型コースデザインを採用

私のもう一つの興味は、どのようにして難度を高めるか、だった。

メディアの間で、「御殿場コースは距離を長くする余地がないらしいから、リース氏がどのようなコースに変えるのか完成後が楽しみ」といった声が多かったからでもある。距離と戦略性の関係も知りたかった。

リース氏は、「距離を長くすることだけが難度を高めることにはつながりません。米国のトーナメントコースの距離が長いのは、毎日使用ティーの位置を変えるので、総ヤーデージは長くしておく必要があるのです。

全ホールで最長のティーボックスを使用することはなく、300ヤード近くの短いパー4ホールもあります。距離を長くしなくても、ティーショットのランディングゾーンを絞ったり、ハザードを用意することで難度を高めることはできます。

特に御殿場コースに関しては、林帯で各ホールが絞られていますから、そこに戦略的なデザインを施すことで、難度を上げることができます」と説明してくれた。

ランチを終えて再びコースに足を運んでいくリース氏らに付いていくと、「リース氏が最も力を入れて臨んでいる」18番ホールで戦略的なデザインの具体的な説明と指示内容を聞くことができた。改修のポイントは、左のフェアウェイバンカーの縁取りを複雑な形状にすると同時に砂面がティーボックスから見えるよう奥を高くしている。

18番ホール

太平洋クラブ御殿場コース18番ホール

次に、従前はロングヒッターがフェアウェイバンカーの右にティーショットをキャリーさせるとフェアウェイが右傾斜しているために右のラフまで転がり落ちていたが、その部分をフラットにするよう指示していた。理由は、「フェアウェイバンカー右のわずかなフラットなところにキャリーさせるには、リスクが伴います。

少しでも左に行けばフェアウェイバンカーに捕まりますし、右に行けば以前のように右のラフまで行ってしまいます。でも、その部分にキャリーさせることができれば、真っ直ぐに転がってランを稼げ、イーグルのご褒美のチャンスが大きくなります。つまり、リスク&リワードの設計思想に基づいて造形を変えました」とのこと。

父親のロバート・トレント・ジョーンズ・シニアの影響を強く受けているであろうことを強く実感したのは、グリーン手前100ヤード付近まですでに大きく削られているところに立って、韓社長や河本副社長とフェアウェイのラインをどこまで広げるか、意見交換しているシーンを間近で見た時だ。

また、セカンドショット地点からグリーン左のガードバンカーをどう配置したら最も効果的であるかにも多くの時間を割いていたのも印象的だった。大きな存在となっているグリーン右手前の池は、レストランから確認した通り、グリーンの右横まで入り込ませている。

2オンのチャンスがない一般のアマチュアには、必然的にどの位置から第3打を打ったら良いかの判断を求められる。

そのことを考慮して、フェアウェイをどこまで広げるのがベストか、クライアントと相談していたのだ。

今回の改修については、日本を代表する難度の高いトーナメントコース仕様に当然注目が集まっているが、14番や17番などの池が絡むホールに代表されるように、一般のゴルファーがリスクを犯さなくれても楽しめるルートも用意されている。

自分の飛距離や腕前に見合うルートを選択すれば十分に満足できるようにも改修されている。まさに、ロバート・トレント・ジョーンズ一族が標榜する「戦略型デザイン手法」が採り入れられていることも確認できた。

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ABOUTこの記事をかいた人

初見 進

12歳からゴルフを始め、「ゴルフの素晴らしさを一人でも多くの人に伝えたい」との想いから、ゴルフ雑誌の編集記者に。1981年からはフリーのライターとして活動。数多くの雑誌や単行本、DVDの制作に関わる。1998年に第1回JGJA論文大賞準大賞受賞。
シニアツアー活躍中の初見充宣プロは実弟。