レディスモデルは女性に不向きという「新現実」

女性用クラブ

フィッティングスタジオにいると時々、奇妙な現象に遭遇します。それは、女性客にフィッティングすると、ほとんどの女性に対してレディスモデルを推奨することがないという事実です。彼女たちはアスリートゴルファーではなく普通の女性。それなのに女性用のスペックが合いません。一体、なぜでしょうか? 

一般的に、女性用と表記して販売されるゴルフクラブのスペックは、男性用と比べてクラブの長さは約1.5インチ 短く、重さは10~20gほど軽く、シャフトは軟らかい。グリップも細く軽いものがほとんどです。結論からいえば、これでは飛距離を稼げません。その理由は後述しますが、現状は最も飛距離が欲しい人に最も飛ばないスペックを販売しているのです。どうしてこのようになってしまったのでしょうか。

そもそもゴルフクラブはゴルフをするための道具であり、私は「道具」を次のように定義します。

ある目的を達成するために、素手で行うよりもはるかに効率良く確実にできるもの――。

道具としてすぐイメージできるものには調理器具の包丁、鍋、フライパンなどあり、スポーツではテニスやバドミントン、卓球などのラケット、野球であればバットにグローブがそれにあたります。

これらに、明確に女性用というスペックが存在するでしょうか?ないはずです。道具は使い手の目的によってスペックが決まるものであり、性別で区分けする必要がないからです。

性別で区別されるものは「身につけるもの・ウェア」です。これは明らかに男女の違いがあり、着るもので男女の違いがないものは、道具としてのウェアであり、それは競技用のものとして性別に関係なく、誰でも使える道具です。

軽いと手打ちに

道具としてのゴルフクラブに、なぜ、女性用が存在し、誰もが何の疑問も持たずここまで来てしまったのでしょうか。その答えは、開発者である男性の心理に女性に対する固定概念、つまり女性は男性に比べて小さく非力(筋力がない)で、体力がないと見ているからでしょう。

それ自体は間違っていませんが、小さくて非力だから「軽いスペック」とはなりません。以下、その理由を詳述しましょう。

女性は確かに男性に比べて力はありません。ヒトにもよりますが、女性の平均的なヘッドスピードは35m/s ほどではないでしょうか。だから、女性の力に合わせる必要があるのですが、クラブが軽すぎると手
打ちになり、その結果ヘッドスピードが出なくなります。しかも、クラブの重さを利用してトップの位置から加速度をあげることもできません。

また、柔らかすぎるシャフトにも問題があります。シャフトがしなりすぎるとタイミングが取りにくく、正しいインパクトを迎えにくい現象も起こります。

非力なゴルファーは基本的に、体全体を使ってスウィングします。ジュニアもそうです。非力な人はボディスウィングをすることでエネルギー効率を高めますが、そのためにはクラブは少し重さがあり、シャフトも元調子気味がよいと考えられます。

反対に力のある男性ゴルファーは、速く振るためにはクラブ重量が軽い方がよりスピードが出せるので、シャフトは先調子タイプの方が急激な加速度に対して反応できる、だから使いやすい道具となるわけで
す。

以上の判断は、特に難しいことではありません。日々ゴルファーと接していれば容易にわかることだと思います。それにも関わらず日常的に「レディスモデル」が製造販売されるのはなぜでしょう。

少しキツイ言葉になりますが、開発が理解を欠いているのか、それとも販売員が「女性には女性用が勧めやすい」と、メーカーを動かしているからか・・・。

いずれにせよ、女性ゴルファーの立場になってクラブという道具を真剣に見ていないことになります。

ここで私は断言します。ゴルフクラブに女性用というカテゴリーは必要ありません。

単純に男女で分けるのではなく、個々に様々なスペックが用意され、その中から自由に選べる状況をつくることが急務です。

325gのドライバー

15年ほど前、私が勤めていたキャロウェイゴルフでGES(Game Enjoyment System)という初心者用のクラブが発売されました。なかなか上達しない女性ゴルファーをテストセンターに集め、どんな時にミスが出やすく、どのようなことで悩んでいるのかを徹底的に分析、製品化したものです。

そのセット構成はドライバー、ロングFWウッド、ミッドFWウッド、ロングアイアン、ミドルアイアン、ショートアイアン、パターという組み合わせでした。ドライバーは325gほどの重さで、グリップは少し太めで柔らかいものが装着され、シャフト硬度もレギュラーに近く、俗に女性用とされるスペックとは真逆のものでした。 
女性用クラブ

当時、流通関係者からは「こんなに重くて、硬いシャフト、しかも太いグリップのクラブなんか絶対に売れない」と敬遠され、店頭に並ぶ機会はほとんどありませんでした。少し、時期が早すぎたのでしょう。

GESは今でも十分に使えるものですが、正しく実験し、検証を重ねたものが正当な評価を受ける時代にならなければ、女性はいつまでたっても上達できず、ゴルフを楽しめない状況が続きます。

フィッティングの現場から開発担当者に言いたいことは、本気で女性ゴルファーを、上達できない女性の悩みを、徹底的に分析して開発に生かして下さいということです。

そうすれば、「女性用」と称するクラブの必要性がないことが理解できると思います。 女性はもっと飛ばせるだけではなく、もっとゴルフを楽しめます。正しい道具としてのクラブを使うことで‥‥。

月刊ゴルフ用品界 2018年5月号掲載

1 個のコメント

  • 以前、かみさんにドライバー(市販品のレディースモデル)をプレゼントし、その試打会を兼ねて打ちっ放しへ。何球か打ったとこで『打ちにくい』と言われ、いろんなクラブを取っ替え引っ換えしながら試打した結論は、オイラの愛機の3Wの方が打ちやすくて距離が出るというもの。

    シャフト長はハーフインチ短く、ロフトは1.5度ほど寝てて、重さは40g以上重い、メンズのFWの方が、女性が使っても打ちやすくて球が飛ぶという事実、実は気づいてました。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    松尾俊介

    1949年12月23日生れ  神奈川県出身
    東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカを取材し、記事として各誌に掲載する。「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続ける。1989年米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深める。
    その後1994年キャロウェイゴルフからのオファーを受け日本人初の正社員として契約。日本法人では広報担当責任者として6年間担当し、その後2014年までCorporate Relationsの担当責任者として勤務。主に対外的な渉外活動を行う。2015年からフリーとなる。
    「日本のゴルフを面白くする」が新たな活動テーマ
    キャロウェイゴルフ在職中はゴルフの普及や活性化のために幅広く活動。
    ◎ゴルフ市場活性化委員会広報責任者
    ◎一般社団法人日本ゴルフ用品協会 活性化委員、ジュニア委員
    ◎NPO日本障害者ゴルフ協会理事
    ◎北海道ゴルフ観光協会顧問
    主な活動・著書
    *著書:クラブが分かれば上手くなる!(スキージャーナル社)  
    *取材編集:ゴルフの楽しみ方(講談社)