2018年5月3日にウェブで先行公開された、韓国の学術誌【Clinical and Experimental Otorhinolaryngology】に、<Cochlear Damage Caused by the Striking Noise of Titanium Head Golf Driver>(Park YH,et al.)という論文が発表されている。
ドライバー打球時の衝撃音暴露と聴力障害について考察した研究が、2008年と2014年にイギリスの雑誌等に報告されているが、Parkらのグループはこれらの先行研究を踏まえ、チタンヘッドドライバーのインドア使用での条件によっては、頻繁に練習する人には危険なことがあることを示唆してきた(Kim YH, et al.,2014)。
本研究では、動物実験(マウス)により、基礎的な検証が試みられている。
研究の目的は「マウスの蝸牛(かぎゅう/内耳にあり聴覚を司る感覚器官・蝸牛管(cochlear duct)が納まっている側頭骨の空洞)がチタンヘッドゴルフドライバーの打撃音の影響をどのように受けるか」を調べることであった。
実験には正常な聴力を有する32匹のマウス(BALB/cタイプの20〜22g)が使用され、これらのマウスは2グループ(16匹ずつ)に分けられ、下記の2つの方法で実験が行われた。
<反復騒音群>:5秒に1回、ドライバー衝撃音(0.2秒)を2時間(1,440回)反復して聞かせる。総暴露時間は288秒(7,200秒/ 5秒×0.2秒)。
<連続騒音群>:288秒間、連続的にノイズに暴露させる。
聴性脳幹反応( Auditory Brain-stem Response ; ABR )は、ノイズ暴露前、ノイズ暴露直後、ノイズ暴露後7日目、および14日目に測定された。その後、マウスは屠殺され組織が抽出され、免疫組織化学的な考察もされている。
実験の結果、反復騒音群のマウスは、連続曝露群よりも有毛細胞(蝸牛にある音を感じ取る細胞)の損傷が大きく、組織学的にも構造的相違が観察されたとされている。
本研究の結論として「チタンヘッドのドライバー打球音への過度の暴露は、蝸牛に有害であり、反復暴露は連続暴露より大きな損傷を誘発する可能性がある」とまとめられている。
※本研究はマウスを用いた基礎実験であり、ヒトでの影響は不明※
<引用文献>
・Park YH, Chung J, Lee MY, Lee DY, Kim YH. Cochlear Damage Caused by the Striking Noise of Titanium Head Golf Driver. Clin Exp Otorhinolaryngol. 2018 May 3.
<参考文献>
・Buchanan MA, Wilkinson JM, Fitzgerald JE, Prinsley PR. Is golf bad for your hearing? BMJ. 2008 Dec;337:a2835.
・Zhao F, Bardsley B. Real-ear acoustical characteristics of impulsesound generated by golf drivers and the estimated risk to hearing: a cross-sectional study. BMJ Open. 2014Jan;4(1):e003517.
・Kim YH, Kim YC, Lee JH, An YH, Park KT, Kang KM, et al. Analysis of impact noise induced by hitting of titanium head golf driver. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2014 Nov;271(11):2885-90.
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