月刊ゴルフ用品界2016年6月号 【北徹朗の若人にゴルフを!「産学協同」奮戦日記】連載(第3回)より一部抜粋したものであり、現況と異なる場合があります。
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調査会社研究員のY氏から電話があった。『錦織圭選手の著しい活躍とメディアへの露出が長期間続いているにもかかわらず、高校・大学のテニス部への加入者は減っているようです。体育授業としてのテニス履修者数も同様らしいですが、北先生の大学での状況を教えて頂けませんか?』とのことだった。都心の某大学の担当教授からテニスの受講者が減っているという話を聞いたらしい。そこで、他大学の状況を聞き、確信を得たかったのだろう。
実際のところ、武蔵野美術大学でも、近年、テニス授業の履修者は激減している。つまり、錦織選手が世界で大活躍し、メディア露出が多いからといって、それがきっかけでテニスに参加したいと思う人はあまりいない、ということである。
本学では、従来、テニスやバドミントンなどのラケットスポーツの人気は高く、1週間に多数の授業が開講されてきた。バドミントンの人気は今でも相変わらず根強いが、テニス授業の履修者はここ1~2年で激減している。例えば、ある曜日の授業には、定員40名のところ履修者が8名しかいない。そのため、新カリキュラム作成に向けて、テニス授業の改廃を検討している。同じ理由で、今年度、ソフトボール授業を一部廃止している。
研究員のY氏からは『屋外種目は日焼けや土埃などの理由で敬遠されているのでしょうか?』という質問もあった。これに当てはまらず、屋外種目であるのに、全開講授業が抽選となる人気種目が1つだけある。そう、それが「ゴルフ」である。本学では、今年度ゴルフの授業数を増コマしたが、相変わらず人気が高い。彼らの中に、松山英樹選手やイ・ボミ選手に憧れてゴルフ授業を履修した学生はおそらくいない(少なくとも筆者の授業でそう回答した者はいない)。純粋に未知のスポーツである「ゴルフ」に触れてみたかったというのが授業履修の動機であろう。
授業担当者としては、学生の興味や期待に応えられるよう、優れた教育環境を整えて行く努力を今後も惜しまない。その点で、産業界との連携は欠かせないと思っている。
昨年、ラグビー界に五郎丸歩選手というスターが誕生した。結果的にそれに乗じた格好になったが、本学では今年度より「ラグビー」の授業を2コマ新規開講した。教場は体育館(屋内)を使用し、接触のないタイプのラグビー(タグラグビー)を教材としたが、残念ながら「五郎丸効果、ゼロ」だった。2コマともに定員に満たず、一方のクラスにはたった2人。大学ラグビー界でも名の知れた、若い先生を他大学から招いたが、その後2人の学生も出席しなくなり、開店休業状態にある。
よく、「ゴルフ界にスター選手がいないことが新規ゴルファーが増えない要因だ」とか、「プロトーナメントを活性化させることこそが底辺拡大につながる」というゴルフ人口拡大論を見聞きすることがある。この考えを全否定はしないが、安易な発想であるし、その可能性はかなり低いと思う。