18歳の畑岡奈紗が、どえらい快記録を打ち立てゴルフ界は騒然としています。アマチュアで史上初めて日本女子オープンを制した昨年に続き、プロに転向した今年、今度は日本女子オープン史上最少スコアの通算20アンダーで大会2年連続制覇。
大会連覇は、レジェンド樋口久子が残した77年大会以来40年ぶり2人目の快挙です。プロに転向した今季、いきなり挑戦した米ツアーは、出場18試合で予選落ち11回、棄権1回という地獄の大苦戦。しかし、秋に帰国すると、前週のミヤギテレビ杯ダンロップ女子OPでプロ転向後の初勝利で2勝目を挙げ、続くメジャーを2週連続で優勝。
優勝賞金2800万円と、ミヤギテレビ杯の1260万円と合わせ2週で4060万円を稼ぐシンデレラ娘を演じました。茨城・笠間市出身、茨城・ルネサンス高卒。ゴルフ界に大旋風を巻き起こした奈紗・18歳の今後はどうなっていくのでしょうか?
国内女子メジャーの最高峰の大会。千葉の名門、我孫子コースは、厳しいセッティングが施され選手を迎えました。
ただひとつ、例年の女子OPと違ったところは、短めのラフとフェアウェイを広くとったことでした。ラフを広げてフェアウェイを狭め、正確なショット以外は、深いラフが待ち受けるというメジャー恒例のセッティングではなく、「選手にのびのびとしたティーショットを打たせる」(大会関係者)というコンセプト。
しかし、アンジュレーションの強いグリーンに、連日厳しいピンポジションが設定されて選手が息を抜くことはできませんでした。
大会より2週前、奈紗はコースのメンバーと2日間練習ラウンドをし「コースの隅々まで教えてもらって、自分の中で攻め方、マネジメントが出来上がっていた」そうです。その練習ラウンドで見たコースの印象は「すごく(フェアウェイは)広いなと思い、自分向きだなと思っていた」(奈紗)と、振り返っています。
1メートル58セントと小柄な畑岡ですが、厳しいトレーニングで仕上げた足腰の強靭さ、体幹の強さは抜群でした。ドライバーの平均飛距離は250ヤード超。日本の女子プロでは飛ばし屋に入りますが、広いフェアウェイを十分に使って大会で見せた奈紗の徹底した”攻めのゴルフ”は、4日間を通してぶれることなく、スイングも一切乱れませんでした。
1シーズン、米ツアーの厚い壁にははね返され苦労はしましたが、目に焼きつけ、鍛えられショートゲームの精度は18歳とは思えぬ成長を感じさせました。最終日、17番の第1打を右ラフに入れたときも、残り30ヤードのアプローチをウェッジで柔らかい高い球を出し、カップ40センチにつけてバーディーを奪いました。
バンカーショットもすべて完ぺきに近いショットをみせる進化がありました。
世界の強豪たちに大差をつけて大会2連覇の畑岡奈紗のコメント。
「4日間、ピンを攻めるゴルフはできたと思います。2位とは結構差があったので、そんなに緊張せずにいつも通りに最終ホールまでできたと思います。(大ギャラリーで)すごい見られてるなというのはありました。気分はよかったですね。
11番で10メートルくらいのロングパットが決まって(17アンダー)きょうはいい流れ出来てるなと思いました。でもピンポジションが凄く難しかったので、間違った攻め方をしないようにしてチャンスを一つ一つモノにしていければ思っていた。もっと接戦になると思ってたので、こんなに差がつくとは。
優勝争いをした時には、相手が目の前にいてそれを意識すると自分のプレーができなくなることが多いので、自分で″20アンダー”という明確な目標を決めて、それだけに集中していました。1年アメリカでやって感じたことは、ショットの精度とかアプローチ、パターで凌げる技術をもっと身につけたいということ。ショートゲームの大切さですね」
この優勝で来年から3年間の長期シードを確保しました。奈紗は来年、日本か米ツアーか、どちらを選ぶのでしょう?米ツアーは今年でシード権を失いましたから、来季も向こうでプレーするためには11月に米国で行われる最終予選会(QT)を受験して上位に入らなければなりません。
奈紗の夢は米ツアーで勝利を挙げ、5年以内にはメジャーも制することです。今年1年だけで挫折する気持ちはないようです。むしろ日本での復調したゴルフを思えば、来年からはもっと落ち着いて米ツアーを戦えると、米国への思いはいっそう強まったようです。
「今年は家もなくホテルを転々として準備も整わないまま渡米して反省しています。もし出場権がとれれば万全の状態で行けるようにしたい。自分の一存ではいかないので、最後にもう一度両親とも話したいと思っていますが、いまは9割くらいアメリカへ行きたいです」(奈紗)
今年の日本女子オープン、畑岡ら若手の台頭もあって女子の人気は一段と盛り上がりました。奈紗がトップに立っていた最終日は、1万2362人のギャラリーがつめかけ、4日間の累計では3万298人の観客動員を記録しました。
日本のツアーとしては、こうした魅力的な新鋭が国内に留まってくれることが望ましいのでしょうが、大きな夢に向かって歩んでいる奈紗はもう止まりません。
「藍さんが引退して、これからは私たちの世代が日本のゴルフを引っ張っていくべきだと思います」とキッパリと話す畑岡です。
今回、2位に8打差の大差をつけて圧勝した1戦。突っ走る奈紗を追ったのは、元米ツアー賞金女王の申ジエ。メジャー2勝。15年の日本女子オープン優勝のチョン・インジ(韓)、今年7月の全米女子オープン2位の18歳、チェ・ヘジン(韓国)、日本のパットの名手、鈴木愛らそうそうたる強豪たちでした。
世界レベルのそれらプレーヤーに最後は追撃をあきらめさせ、ねじ伏せた圧倒的な勝利は、18歳の畑岡奈紗にさらに大きな自信を植え付けたに違いありません。
今週のスタンレーレディス(静岡・東名)にもエントリーしている″ぶれない奈紗〝を見守りましょう。
【この記事は2017-10-3 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】
コメントを残す