畑岡奈紗に見る 強いゴルファーに育てるなら親は口出すな

菅野徳雄の「プロツアー激辛情報」
(日刊ゲンダイ 平成28年10 月5日)畑岡奈紗に見る 強いゴルファーに育てるなら親は口出すな

日本女子オープンを勝った畑岡奈紗のスイングを初めて見たのは、昨年の樋口久子Pontaレディスのときだ。渡邉彩香を取材するために朝、練習場に行ったら背は小さいけれど、どっしりとした体で、日本の女子にしては珍しくいいスイングをする若い選手が目に留まった。

聞けばまだ高校2年のアマチュアだという。後でJGAのホームページでプロフィルを見ると、身長158センチで体重は書いていない
広いスタンスで、アドレスの前傾角度がまったく変わらずに体を深くひねって、日本の女子にしてはトップスイングの手の位置が低い。トップで右半身がまったく伸びていない。上半身のひねりを右ひざでしっかりと受け止めている。男子プロと変わりないバックスイングをしている。

こういうバックスイングは日本の若い女子プロにはほとんど見られない。岡本綾子の若いころを彷彿させるようなバックスイングをしている。日本にはアマチュアの父親に教わってゴルフを始めた女子プロが多いので、どうしてこんな複雑なスイングをするのだろう? という選手があまりにも多い。バックスイングで体の捻転が浅く、手でクラブを高く上げているので、右半身が伸びているプロが多い。これでは飛距離だってあまり出ない。日本では勝てても、アメリカでは通用しないスイングが多い。

今回の日本女子オープン(烏山城CC)の17番ホールは、普段はパー5を490ヤードのパー4に変更。ティーショットはかなりの打ち下ろしではあるけれど、フェアウエーの右にはグリーンの近くまでクリークが走っていて、グリーン手前はウオーターハザードという難関ホールだ。

右のクリークを警戒して左の林に曲げてスコアを崩す選手が多い中、畑岡は残り210ヤード地点まで飛ばし、フェアウエーをとらえている。そして4番ウッドで2オンしてパー。畑岡のドライバーは平らなホールでも260ヤードは飛んでいるはずだ。このホール、1組後の堀琴音は2つで届かないと判断し、ハザードの手前に刻んで3オンして寄せワンを狙ったが、ボギーを叩いて敗れている。

背は小さくても体をつくって良いスイングを身につければ、270ヤードぐらいは飛ばせるということを畑岡は教えてくれている。中学3年のときから中嶋常幸のトミーアカデミーで学んできたスイングだという。最終日、首位でスタートして78と崩れた15歳のアマチュア、長野未祈もトミーアカデミーで学び、スイングの良さは際立っている。

何事も最初が肝心である。娘を世界で戦える選手にしたかったら、アマチュアの父親は自分で教えようとしないで、スイングのことを熟知している優れた指導者に委ねるべきだ。

韓国の女子が強いのは優秀なコーチに預けたら、技術的なことには親は一切口を出さないからだと、申ジエのコーチをやっている金愛淑は言っている。そしてゴルフ以前に食事をちゃんと取って、スポーツをやる体づくりをすることが先決だと言っている。

ABOUTこの記事をかいた人

菅野徳雄

1938年生まれ。岩手県陸前高田市出身。立教大卒。元日本ゴルフジャーナリスト協会会長(現顧問)。分かりやすいゴルフ技術論と辛口のゴルフ評論で知られる。「日本のゴルフを斬る」「シンプル思考で上手くなる」(共に日刊ゲンダイ)「菅野徳雄の言いたい放題」(月刊ゴルフマネージメント)を連載中。「トッププロのここを学べ」「ゴルフスウィングの決め手」「頭のいい男はゴルフが上手い」「即習ゴルフ上達塾」「誰も教えなかったゴルフ独習術」などの著書がある。