日本人は男女とも「耳と耳の間のゲーム」の本質に無知だ

菅野徳雄の「プロツアー激辛情報」
(日刊ゲンダイ 平成28年9 月21日)日本人は男女とも「耳と耳の間のゲーム」の本質に無知だ

「ゴルフは耳と耳との間で行うゲーム」とはスコットランドに伝わる古いことわざであるが、ボビー・ジョーンズの「ダウン・ザ・フェアウェイ」の中にも出てくる。耳と耳との間にあるものといえば脳みそのこと。「ゴルフは頭を使ってプレーせよ」というわけ。
近ごろは「コースマネジメント」という言葉がよく出てくる。ゴルフはコースとの戦いといわれているけれど、設計家の意図に逆らって、「俺はこう攻める」というゴルフでは良い結果は出ない。

先週のANAオープン最終日に、1打差で首位に立っていた池田勇太が最終ホールでボギーをたたいて逆転負けしている。
会場は札幌GC輪厚コース。410ヤード・パー4の18番ホールはフェアウエー右サイドにバンカーが待ち受けている。フェアウエーバンカーに入れても楽にグリーンを狙えるコースが日本には多い。そのため「ラフに入れるよりバンカーのほうがまし」などとよくいわれる。
輪厚コース18番のフェアウエーバンカーもそんなにアゴが高いわけではない。これに入れたらフェアウエーに出すだけというほどではない。
池田が持ったのはドライバーではなく3番ウッドだった。バンカーに入れないためにフェアウエーウッドでティーショットしたのだと誰もが思って見ていたに違いない。
しかし、入れてはいけないバンカーにつかまり、そこから2オンできずにボギーを叩いて負けた。

■コース設計家の意図を見抜く頭脳プレーが不足

絶対入れたくないと思ったら、バンカーに届かないクラブを使うべきだった。本人は「バンカーまでは行かない」と判断して3番ウッドを使ったとしたら考えが甘い。

「この一打で勝負が決まる」という緊張した場面では思わず力が入るので普段よりも距離が出ることも考えてクラブを選ばなければならない。
結構アゴに近いところにボールがあったので、グリーンに届くクラブを持ってもショットの高さが気になったのだろう。厚めに入ってグリーンをだいぶショートし、アプローチも寄らなかった。
ドライバーを使わないのであれば、もっと距離を残してもいいからバンカーの手前に止めるべきだった。
コースマネジメントの甘さは女子のマンシングウェアレディース東海クラシックでも見られた。最終ラウンドの15番パー5(477ヤード)で、首位に3打差の成田美寿々が2オンを狙って手前の池に入れてボギーをたたき4位タイに終わっている。
解説の樋口久子は「無理に左から池に向かって打ってやらずに、池の右側から花道を狙えばバーディーを取れるのだから、もっとコースマネジメントを考えてプレーしてほしい」と言っていた。
設計家の意図を見抜いて攻略すれば、ご褒美(バーディー)がもらえるようにコースはつくられている。それをよく考えてゴルフをすれば、日本の選手も必ずやスコアは良くなるはずだ。

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菅野徳雄

1938年生まれ。岩手県陸前高田市出身。立教大卒。元日本ゴルフジャーナリスト協会会長(現顧問)。分かりやすいゴルフ技術論と辛口のゴルフ評論で知られる。「日本のゴルフを斬る」「シンプル思考で上手くなる」(共に日刊ゲンダイ)「菅野徳雄の言いたい放題」(月刊ゴルフマネージメント)を連載中。「トッププロのここを学べ」「ゴルフスウィングの決め手」「頭のいい男はゴルフが上手い」「即習ゴルフ上達塾」「誰も教えなかったゴルフ独習術」などの著書がある。