新設の「19番ホール」で″一度だけの勝負"を!!ビル・クーア&ベン・クレンショー設計。 2年、29億円をかけ大規模改修の横浜CC西コース。18年、日本OP開催決定!

 

2018年の日本オープン開催が決まっている横浜カントリークラブ西コース(横浜市保土ヶ谷区)が、2年を費やした大規模改修をこのほど完了。メンバーや報道陣にお披露目されました。高麗2グリーンからベント1グリーンへと仕様変更。全グリーン、全フェアウェイ、全ラフ、全バンカーを再造成。アメリカン調ただよう本格的なチャンピオンコースにリニューアル。改修を手掛けたのは、世界トップクラスの米設計家ビル・クーア&ベン・クレンショー(米プロゴルファー)Inc.。施工には大成建設なども加わり工事総費用はざっと29億円という大プロジェクト。18番の後に「19番ホール(パー3)」を新規造成するなど、ゴルファーのレベルにかかわらず楽しめるゴルフコースにもなったニュー横浜CCを探訪しました。

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クラブハウス2Fから一望できるようになった西コース風景。

クラブハウス2Fから一望できるようになった西コース風景。

「西コース元々の面影は残し、自然回帰型クラシックデザインを採用。ただ難しくするのではなく、それぞれのレベルのゴルファーが楽しめるいまのゴルフシーンにマッチしたコース造りを目指した」(ベン・クレンショー)というのが改修のコンセプト。 横浜CCのクラブハウスは、これまでコース側には目の前に小山と雑木が立ち並んでいて、2階レストランのベランダからは見渡せなかった西コースが、今度は手に取るように展望できる景色に一変しました。小山をぶち壊して土を動かし、新設された「19番ホール」や10番ホールのスタート風景などが一望できます。コースは、従来のアウト、インを入れ替えて、これまでの1番が10番に、旧10番が新1番に変更されました。スタートエリアにあった道路類はすべてつぶされて芝生が敷き詰められました。スタートティーに行くのに芝生の上を歩いていく雰囲気は、なかなか気持ちのいいものです。

砲台式のボックス型ティーグラウンドはなくなり、平坦なところにティーマークを置いたクラシックデザイン=横浜CC西10番ティー(旧1番)。

砲台式のボックス型ティーグラウンドはなくなり、平坦なところにティーマークを置いたクラシックデザイン=横浜CC西10番ティー(旧1番)。

日本のコースではどこにでもある砲台型(ティーボックス)のティーグラウンドは、ほとんど姿を消しました。ボックス型ではないクラシックタイプで、アメリカなどではよく見られるフェアウェイと同じレベルにティーグラウンドが設定されています。ティーグラウンドに高さがなく、フェアウェイにティーマークが置かれたようなところもあるので、少し戸惑いますが、1920年代の米ツアーの形、クラシックデザインなのです。ティーの数は従来の3つから5つに増やし、使用ティーによって距離が大幅に変わります。コースの戦略性を向上させるのを目的としたものです。フェアウェイは改修前と比べて120~140%広くなり、フェアウェイの″うねり”(アンジュレーション)も、以前より大きくなったような感じを受けました。自然回帰デザインのラフは相当タフで、たまたま当日ラウンドしていた丸山茂樹プロも「ラフは地獄だよ」と、目を白黒させていました。

 

5つのティーを表示するヤーデージ。各ティーグラウンド脇にある=横浜CC西18番。

5つのティーを表示するヤーデージ。各ティーグラウンド脇にある=横浜CC西18番。

幅広くしたフェアウェイについてベン・クレンショーはこう語っています。
「幅広いフェアウェイは、正確性を欠くプレーヤーには失敗を回避する余地が大きくなり、やさしい印象を与える。熟練プレーヤーには多様な意思決定、クラブ選択の幅が広がる。そして優れた技術を必要とする機会が増える」と。そして狭いフェアウェイに関しては「バンカー越えなどの難しいアプローチでは、フェアウェイから打っても等しく難易度が上がってしまう。結果として、どのプレーヤーもティーグラウンドから単にフェアウェイを狙うだけになってしまう」と、単純なゴルフになりがちな狭いフェアウェイには警鐘を鳴らしています。

バンカーの形状にも手を入れ、まるで海の入江のように美しい淵をしたシェイプが目立ちます。バンカーエッジは、グリーン側はほとんど切り立った断崖のような垂直なカットが施され、「浅く見えても入ると深い」バンカー。ベン・クレンショーはバンカーについて「視覚的にスリリングな効果を与える目的のためだけに作るべきではない。非力で熟練していないプレーヤーにとって、不愉快で邪魔なモノとして認識されることがないようにしなければならない」と、バンカーひとつにも細かい思いを織り込んだ考え方を述べています。

グリーンへ登る″花道〝はなく、ほとんどのホール、フェアウェイからストレートにグリーンへと繋がっています。従来2グリーンだった西コースは、すべてベントの1グリーンに。2つあったグリーンの1つをただつぶしただけのものではなく、グリーンから100ヤード附近まではすべて新しい設計で新しく大きなグリーン(412㎡~808㎡)になりました。大きさもさることながら、グリーン入口は、ほとんどが舌を出したような″見せグリーン〝。一見、受けグリーンに見えますが、乗せただけでは傾斜で手前に転がり落ちます。しっかりしたアプローチが必要になります。また、グリーン周りにある「カラー」(インサイドカラー)は一切なくして、グリーン周辺は刈り込んだ芝生のスロープです。グリーンを外した時はスロープに沿ってボールは転げ落ちる仕組みです。戦略性を高めたデザインといっていいでしょう。

大きく変わったのは従来の18番パー5。620ヤード(バックティ)の長いパー5でしたが、これを分割して8番パー4、9番パー3の2ホールが誕生しました。同じく旧13番14番が一つになって新4番(パー4)となりましたので、都合9ホールの数は変わりません。

主だった改造点を紹介しましたが、まだまだ手が加えられたところは数多くあります。クーア&クレンショーの名コンビによる「近代化改修」。様相は一変した西コースですが、

新たに造成された「19番ホール」のティーから見た170ヤードのパー3。正面バンカーが見えるところがグリーン。左上にクラブハウス=横浜CC西コース。

新たに造成された「19番ホール」のティーから見た170ヤードのパー3。正面バンカーが見えるところがグリーン。左上にクラブハウス=横浜CC西コース。

さらに見逃せないのは「19番ホール」の新設です。18番グリーン(あるいは9番グリーン)を終えたプレーヤーが、ハウスに引き上げる途中に目に入る″もう1ホール”。
「仲間との勝負の決着をつけるため、またはもう1ホールだけ回りたいとき。あるいはクラブハウスへの帰り道に何かをしたい気分になったとき。どんな理由でも、いま一つ楽しめるホールです」(クーア&クレンショー)。
170ヤード、パー3。グリーン右サイドと奥にあるバンカーで守られたグリーンは、左から右へやや傾斜しています。ピン位置によって攻め方はいろいろですが、一度限りの勝負!です。さあ、横浜CCへ行ったら、ぜひともトライしたい19番です。疲れた体を忘れて、最後にいま一度、盛り上がるでしょう。

★2018年の日本OPでは特別ルーティングで。

2年後の2018年、ここで開催される第83回日本オープン。横浜・西では1978年に開催(セべ・バレステロス優勝)して以来、40年ぶり2回目の日本オープンとなります。西コースは距離的に短めという難点があるので、今回のコース設計では「通常営業時のルーティング」(クラブコース)とは別に、東コース2ホールを使用する「大規模大会開催時のルーティング」(トーナメントコース)を設計しています。これは西コースで距離の短い2番(パー3)、3番(パー4)を使用せず、東コースの17番(パー4)18番(パー4)を10番、11番とした大会用ルーティングです。このルーティングですと7407ヤード、パー72となり、日本オープンにも十分耐えられるヤーデージとなります。

≪ビル・クーア&ベン・クレンショーInc.≫

クーアは1972年、ピート・ダイの門下生としてコース設計家としてスタート。1982年、自分自身の会社を設立。現在まで設計に携わったコースは50コース以上。近年の代表作は、1995年開場のSand Hills(米ネブラスカ州)、パインハーストNo2(米ノースカロライナ州)。1993年にはリビエラCC(米カリフォルニア州)。2014年にはパインハーストNo2(米ノースカロライナ州)の改修も手掛けている。ベン・クレンショーはマスターズ2回優勝はじめ、PGAツアー19勝の有名プレーヤー。1986年にクーアのパートナーとなり「クーア&クレンショーInc.」を設立した。

【この記事は2016-09-26  ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】