日本人プロが学ぶべき スピースの左ひじの使い方

菅野徳雄の「日本のゴルフを斬る」
(日刊ゲンダイ 平成28年2月3日掲載)

日本人プロが学ぶべき スピースの左ひじの使い方

アジアンツアーとの共催で行われた日本男子ツアーの開幕戦・SMBCシンガポールオープンでトップ10に入った日本選手は4位の小林伸太郎と6位の谷原秀人の2人だけ。主力選手は池田勇太23位、宮里優作と小平智が28位、小田孔明55位、リオ五輪代表を狙う片山晋呉は予選落ちだった。

欧州ツアーのアブダビから駆けつけた招待選手のジョーダン・スピースは優勝スコアに1打及ばなかったが、最後まで魅せてくれた。左利きで右打ちのスピースのスイングは変則打法だとよくいわれる。確かにグリップから変わっていて、ショットをするときも、パットをするときのように左手の人さし指を右手の上に乗せた逆オーバーラップである。

どうしてショットをするときも逆オーバーラップなのかというと左に曲げたくないからだ。おそらくフックして困った時期があって、それを克服するために編み出したグリップだと思う。逆オーバーラップによって振り抜くときに手を返しにくくしているわけだ。

「左にだけは曲げたくない」というスピースの思いは左ひじの使い方にも出ている。
「左腕を真っすぐ」がスイングの基本とされ、できるだけ左腕を伸ばしておくことによってフォロースルーが大きくなるので、ドライバーの飛距離アップには不可欠だといわれている。
松山英樹のフォロースルーを見ていると左腕を張りつめるようにして高く大きく振り抜いている。

しかし、スピースのスイングは松山とはまったく違っていて、フォロースルーで左ひじがかなり曲がっている。とはいっても左ひざを逃がしているわけではない。左ひじを下に向けて早めにたたむ(曲げる)ことによってヘッドの返しを抑えて、左には曲げないようにしているのである。

松山がドライバーに不安を抱えているのは左ひじの使い方に課題があるからだと思う。石川遼は米ツアーに行くと、相変わらずドライバーを左右に曲げて苦戦している。プロにとって一番怖いのは左へのミスだ。かつて青木功はフォロースルーで左ひじをたたみ上げるようにしてシャフトを立ててフックからフェードに球筋を変え、「世界のアオキ」になった。

予選ラウンドでスピースと同じ組で回った宮里は「スピースのゴルフをよく見ておきたい」と言っていた。しかし、初日はドライバーショットをよく左に曲げていた。果たして左に曲がらないスピースの秘密が分かったかどうか。

ラウンドリポーターの細川和彦はスピースのゴルフについて「ボールをうまく運んでいる」という言い方をした。アプローチをするときのような感覚で左ひじに余裕を持たせておいてフェースにボールを乗せるようにして運んでやっているというわけだ。必死になって飛ばそうとしている日本の選手は、しっかり振り切っても左に曲がらないスイングを早くつかまないと「世界」では戦えない。

ABOUTこの記事をかいた人

菅野徳雄

1938年生まれ。岩手県陸前高田市出身。立教大卒。元日本ゴルフジャーナリスト協会会長(現顧問)。分かりやすいゴルフ技術論と辛口のゴルフ評論で知られる。「日本のゴルフを斬る」「シンプル思考で上手くなる」(共に日刊ゲンダイ)「菅野徳雄の言いたい放題」(月刊ゴルフマネージメント)を連載中。「トッププロのここを学べ」「ゴルフスウィングの決め手」「頭のいい男はゴルフが上手い」「即習ゴルフ上達塾」「誰も教えなかったゴルフ独習術」などの著書がある。