プロ志向の高い親ほどマナー意識が低い傾向      <ジュニアゴルファーのマナーに関するパイロット調査>(ダイジェスト)

<要旨>
「ジュニアゴルフファーにおけるマナーの実態と親の態度」に関する基礎資料を得ることを目的として、ジュニアゴルフスクールに子ども(5歳~16歳)を通わせている親(21名)に対するアンケート調査を実施(2015年4月1日~5月19日)しました。その結果、主に以下のことが明らかになりました。
【結果①】
子どもをプロゴルファーにさせたい親(プロ志望群)は「ミスショットやスコアが悪いと叱る」が、「ルール違反やマナー違反の場合は注意する程度にとどめる」傾向が強く見られました。
また、「試合に勝つ(良いスコアを出す)ためにはルール違反やマナー違反はある程度は仕方がない」と考えている保護者は全てプロ志望群でした。
【結果②】
子どもをプロゴルファーにさせようと考えていない親(非志望群)のほぼ全員が、ゴルフを通じて「ゴルフマナー」(ゴルフの精神など)を身につけて欲しいと回答しましたが、プロ志望群保護者は「マナーよりも技術」を身につけさせたいと回答しました。


<日本におけるジュニア熱の高まり>
2009年10月2日、デンマークのコペンハーゲンで開かれた第121次IOC総会で、2016年のオリンピック開催地がブラジルのリオデジャネイロに決定しました。さらに、この大会からゴルフは正式種目とされ、1904年のセントルイス五輪以来112年ぶりにオリンピックの舞台に復帰することも決定されました。
同じ頃、日本においてもゴルフの裾野を広げようと、子どもに対する取り組みが活発化し始めました。例えば、日本プロゴルフ協会(PGA)は2009年6月に「PGAジュニアゴルファー育成プロジェクト」をスタートさせ、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)はGBD(ゴルフ・ビジネス・ディビジョン)が主導となって2010年4月に「LPGA放課後クラブ」を開校させています。
さらに、ジュニア専門のゴルフ雑誌「ゴルフスマイル」(八重洲出版)が創刊されたのも2010年4月でした。このように、2010年前後から、日本におけるジュニア熱は高まり始めたことがわかりますし、今日、子どもがゴルフに親しむ機会は従来よりも確実に増加しています。

<ジュニアゴルファーと一部の親の問題:最近の報道から>
ジュニア熱が高まりを見せる一方で、
スコア誤魔化し、礼儀を知らないジュニア選手増加の懸念】(産経ニュース/2014年5月10日ウェブ版
親に叱られたくない子供ゴルファー スコアを改ざんする例も】(NEWSポストセブン/2014年8月23日ウェブ版
などの見出しで、ジュニアゴルファーやその親のマナー意識における問題が報じられる記事も散見されるようにもなりました。
筆者は、過去にゴルフマナーに関する調査や論文を多く発表してきましたが、ジュニアを対象としたデータを収集した経験が無かったため、今回パイロット調査を試みることとしました。

<親のゴルフ歴>
・「学生時代から運動部活動やクラブで競技ゴルフをやっている」(9.5%)
・「競技ではないが、子ども時代からゴルフをやっている」(9.5%)
・「大人になってからゴルフを開始し今もやっている」(81.0%)
・「過去にゴルフはプレーしたことがあるが今はやっていない」(0.0%)
・「ゴルフは全くやったことがない」(0.0%)

<子どもに将来プロゴルファーになって欲しいと思うか>
・「強くそう思う」(14.3%)
・「そう思う」(23.8%)
・「あまりそう思わない」(23.3%)
・「全くそう思わない」(28.6%)

<ミスショットで子どもを叱るか>(親のプロ志向別の比較)
「子どもにプロゴルファーになって欲しいと考えている親」(プロ志望群)と、「そう考えない親」(非志望群)で比較したところ、群間で相違が見られました。
・【プロ志望群】 「よく叱る」(0%)、「ときどき叱る」(75.0%)、「叱ることはない」(25.0%)
・【非志望群】  「よく叱る」(0%)、「ときどき叱る」(38.5%)、「叱ることはない」(61.5%)

<ルール違反やマナー違反で子どもを叱るか>(親のプロ志向別の比較)
この設問についても、親のプロ志向有無で回答に相違が見られました。
・【プロ志望群】 「強く叱る」(25.0%)、「注意する程度にとどめる」(75.0%)、「叱ることはない」(0.0%)
・【非志望群】  「強く叱る」(69.2%)、「注意する程度にとどめる」(30.8%)、「叱ることはない」(0.0%)

<自分の子どもに限らず、ジュニアのルール違反やマナー違反についてどう思うか>
・「いかなる理由があろうとルールやマナーは遵守させるべき」(90.5%)
・「試合に勝つ(良いスコアを出す)ためにはある程度のルール違反やマナー違反は仕方がない」(9.5%)

<ジュニアの大会で見られるマナー違反>(親による自由記述回答)
[プレーヤーのマナー違反]
子どもを大会に参加させたことのある親(17名)に対し、「ジュニアの大会などで、選手のルール違反やマナー違反を見かけることがあるか」について回答を求めました。その結果、58.8パーセントが「ある」(よくある、たまにある、の合計)と回答しました。
具体的な内容については以下のものが挙げられました。
・空振りをカウントしない
・グリーンでマークをせずにボールを動かす
・スロープレー
・他の選手のプレー中のおしゃべり
・スコアカウントミス
・道具を大切にしない
・バンカーでソールする
・ドロップの仕方
・ラインを踏む
・マークの際キャディがマークして、戻す際はプレーヤーがする
・同じグループの子がボールを見つけられず探しているのにどんどん先に行ってしまう
・過少申告
・グリーン上でボールのマークをホール近くにずらす

[親のマナー違反]
「ジュニアの大会などにおける、「親」のマナー違反を見かけることがあるか」を尋ねたところ、64.7パーセントが「ある」(よくある、たまにある、の合計)と回答しました。
具体的な内容については以下のものが挙げられました。
・過剰なアドバイス
・声掛けが過剰な親
・服装が不適切
・プレーが始まっているのにしゃべっている
・プレー中の会話
・子どものスコアが良くなるためなら何でもする。(ギャラリーとして入っていて、自分の子どものボールを打ちやすい位置にずらす、など)
・子どもへの指示内容が不適切

※この調査の詳細版は、2016年3月頃に公表予定です
                          
2016年6月に中央大学学術リポジトリで公開されました。コチラをご覧ください。

 

ABOUTこの記事をかいた人

北 徹朗

<現職>武蔵野美術大学 身体運動文化准教授・同大学院博士後期課程兼担准教授、サイバー大学 IT総合学部 客員准教授、中央大学保健体育研究所 客員研究員  <学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程  <主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事