底辺拡大はイジメ被害撲滅から

若いプロゴルファーの中に、学生時代、イジメに合った経験者が多い事実をご存じだろうか。

ゴルフ部のある強豪校ならとにかく、それ以外の中学、高校で頑張り、やがてプロになるほどの実績を挙げた選手で、辛い思いをした者は少なくない。

理由は簡単。一部のにおいて、ゴルフはまだまだマイナーなスポーツだからだ。

強い選手になればなるほど、平日に学校を休んで試合に出場する。結果を残せば、次の月曜日の朝礼で表彰されることもある。これが強豪校だったり、サッカー部や野球部やバスケットボール部などの団体スポーツなら、チーム単位だから個人が攻撃されることにはならない。だが、公立校ではゴルフをしている子供すら学校内に珍しいケースがほとんどだ。そうなると「ゴルフは金持ちのスポーツ」という保護者や教師など、大人のやっかみも加わって、仲間外れにされたり、攻撃されしたりすることが往々にしてある。

競技に出場していなくても、ゴルフを楽しむ子供が増えれば、決してこうはならないだろう。逆に競技で結果を残す者を尊敬したり、興味を持つこにつながることはあるかもしれないが。

もちろん、マイノリティをいじめたり疎外したりすることが一番の問題であるのは言うまでもない。それを容認するどころか、子供以上にその保護者たちがその傾向にある日本の教育そのものが根本的にまちがっている。国としてこれを直さなければならないのは大前提だ。

その一方で、ゴルフ界にかかわっている大人たちが今すぐできる”対症療法”がある。ゴルフが子供たちの間でメジャーなスポーツになるよう努力することだ。

この話を、日本ゴルフ協会(JGA)の”お偉方”にしたことが何度もある。だが、残念ながら、生返事がかえってくればましなほう。何を言われているのかわからないようという人間もいた。こともある。なぜなら彼らの多くは裕福な家庭で生まれ、仲間の多くも同じ生活レベル。ゴルフをする友達がいるのが当たり前というある意味特殊な環境で育っている。全体が見渡せるバランス感覚を持っている人間がいないとは言わないが、残念ながら公立の学校に通うような生活を”下々の暮らし”だと思い、理解しようともしない人間が多いからだ。

様々な生活レベルの家庭の子供たちが集って学び、遊ぶのが良くも悪くも公立の学校であり、そこに通う子供たちの割合は極めて高い。そこで子供たちが経験できるスポーツ以外は、マイナーなのは仕方ない。

この事実を謙虚に受け止め、公立校の授業でゴルフに親しませる方法をこそ、ゴルフ関係者は最優先で考えるべきだ。だが「現実的になかなか難しい」などと言い訳をして、それ以外のことに血道を上げる愚を犯している。

2020年東京五輪のゴルフ会場問題も、今のまま進めればゴルフをメジャーなスポーツにすることとは対極の動きとなる。名門といわれる霞が関CC(埼玉県)を会場とすることでどんどん進め、反対意見はシャットアウトしてしまう。。メンバーシップの名門である霞が関CCが五輪会場では、そこで競技を見て、同じコースでプレーしてみたいという一般ゴルファーの夢をかなえることは難しい。それが大人であっても、子供であっても敷居が高すぎるのだ。コースの是非とは全く別に、そのことだけで、五輪憲章のひとつに掲げられている『オリンピックの有益な遺産(レガシー)を、開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する』という一文には、まったくそぐわない。

東京都が持つパブリックコース、若洲ゴルフリンクスを会場にすれば、この問題は直ちに解決する。だが、そこで競技が行えない理由ばかりを探し、その存在から目を背けようとしているのが、現在の五輪ゴルフ関係者たちだ。五輪と言う底辺拡大の千載一遇を、自分たちのエゴとくだらないプライドでつぶしてしまうことがどれほどの罪悪か。こんなことではいつまでたってもゴルフはマイナースポーツ。学校でいじめられるジュニアゴルファーが減ることはない。

底辺拡大への道のいくつかは、ジュニアゴルファーたちが置かれている状況を見れば、簡単にわかることだ。関係者の利害や、他国に対する見栄など、大人たちの事情がこれに優先されるようでは、日本でゴルフがメジャースポーツとなる日など、永遠に来るはずはない。

ABOUTこの記事をかいた人

遠藤淳子

1964年8月12日生まれ。都立三鷹高校→日本大学文理学部社会学科卒。1988年東京スポーツ入社。10年間、ゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材する。1999年4月よりフリーランスとして、ゴルフ雑誌などで執筆中。TOCHRO GOLF