世界ゴルフ選手権EMCワールドカップ観戦記 ~児島 宏~

日本でも出来た欧米並みのトーナメント

賞金総額300万ドル(約3億6000万円)をかけた男子ゴルフの世界選手権シリーズ、国別対抗EMCワールドカップが2001年11月15日から4日間、静岡・太平洋クラブ御殿場コース(7232ヤード、パー72)で24カ国・地域の48選手が参加して開催された。1966年(東京よみうりカントリークラブ)以来35年ぶり3回目の日本開催のW杯だったが、ゴルフ100年を迎えた日本ゴルフ界に久々の興奮をもたらした有意義なイベントだった。優勝は4チームのプレーオフを制した南ア(E・エルス、R・グーセン)だった。

世界ゴルフ選手権EMCワールドカップ観戦記
児島 宏

 「ゴルフってこんなに面白いものだったの!」。そんな声が最終日18番グリーン(パー5)を囲んだ1万余のギャラリーから大歓声とともに湧き起こった。2打のビハインドを背負ったタイガー・ウッズとデビッド・デュバルの米国チーム。デュバルがグリーン右に外した第3打目。これを入れなければ生き残れない張り詰めた緊張の中でウッズが打った。
SWを低く出してグリーンエッジにワンクッションさせ、あとは転がすピッチ&ラン。その読み通りフックラインを描いたボールはグリーンを走って12メートル先のカップに消えたのだ。右こぶしを下から突き上げる得意のガッツポーズを見せるウッズ。それを目のあたりにした興奮のざわめきはしばらくの間静まらなかった。
15番からのチャージは上がり4ホールで5アンダーをたたき出し、それまでの不振を一気にばん回した米国の底力。最後の1打を入れたウッズの奇跡のイーグルは、ワールドカップ史に残る強烈なシーンだったが、その一組前ではやはり2打遅れをとっていた南アチームも、池越えの第2打を2001年全米オープン優勝のグーセンが高い球でピン左2・5メートルにピタリ2オン。全米オープン2度優勝のエルスがきっちり沈め 全米コンビ がお手本のようなイーグルを奪っていた。この2つの劇的イーグルを見ただけでも2万円のセットチケットも惜しくなかった?だろう。
 試合後に語ったウッズのコメント。
「あの18番はボールのライがそこそこによくていいチップができた。距離は12メートルぐらい。カップの上に外したと思ったが、そこから切れて入ってくれた。運がよかったよ。でもプレーオフで僕のドライバーがフェアウエイをキープできなくて(左に曲げた)悔しいね」。
通算 アンダーの4チーム(南ア、デンマーク、米国、ニュージーランド)によるプレーオフは、最初の 番で米国とニュージーランドがバーディを取れずに脱落。2ホール目の14番で林に入れてパーが取れなかったデンマークを、パーの南アが下して4度目のW杯優勝だった。

通算18アンダーで11位に終わった日本チームは、丸山茂樹がやや体調を崩して本来のプレーが見られなかった。伊沢利光も「チームプレーという方式が難しかった」と、地元日本での開催ながらいま一つ自分のゴルフができなかったが、伊沢は飛距離でもウッズにこそ及ばなかったもののデュバルとほぼ同じ。世界のレベルを証明する小技も度々披露してくれた。
9月に米国で起きたテロ事件の影響もあって警備は厳重で、入場者の荷物も大きなものは中身を調べていた。郵便や宅配便もコース入り口の輸送本部に集められて安全を確認してからハウスに持ち込む慎重さ。世界のトップが集まったW杯ならではのことだったが、広いコースのあちこちからワーッとあがる歓声は、紅葉が美しかった富士山麓にこだました。
 日本のトーナメントではまずなかった光景で、まるでマスターズや全米オープンのコースにいるような錯覚さえあった。他にヒメネス、ガルシア(スペイン)やシン、チャンド(フィジー)らも高度なプレーを見せ、舞台と役者が揃えば自然にこれだけの盛り上がリをみせる。それが分かった大会でもあった。
★集客はウィークで約7万人
大会4日間では各日すべて1万人を上回り、最終日は1万5700人。4日間だけのギャラリー数は5万100人。月曜日から水曜日の練習日にも大勢の人がつめかけてこのウイークでは7万人になんなんとする大ギャラリーが御殿場に詰めかけた。 完売した前売り券は限定1万8000枚(1セット2万円)。これだけで売上は3億6000万円。コース内で販売された大会グッズの売上も1億円に達したという。
コースはじめ、地元御殿場市に及ぼした経済効果はざっと6億円。

★ゴルフW杯
前身は1953年に始まったカナダカップ。第5回大会、日本の埼玉・霞ヶ関カンツリー倶楽部で行われ中村寅吉・小野光一コンビが団体優勝。個人でも中村寅吉がG・プレーヤー、S・スニードらを破って優勝した。1967年からワールドカップと名称を変更。2000年からは年間4試合あるワールドゴルフチャンピオンシップ(WGC)の一つとして行われるようになり、試合方式もチーム戦のみとなった。

W杯競技方法
★フォアボール(第1日と第3日)
各ホール、チーム2選手のいい方のスコアを採用、18ホールの合計スコアとする。
★フォアサム(第2日と最終日)
チーム2選手が一つのボールをティーグラウンドから交互に打ってプレーする。