日本のゴルフ界にとっての「明治維新」  ~宮崎 紘一~

動き出した日本のゴルフ~これからのゴルフ界に望むこと~
ここ数年、日本のゴルフ界が動き出している。女子ツアーの宮里藍選手をはじめとする若手選手の活躍、それに伴うギャラリーの増加、テレビ視聴率の伸びなど、徐々に明るい兆しが見え始めている。ゴルフ場、ゴルフ用品、ジュニア育成などの分野でも、同様の兆しが見える。そこで今回は当協会のメンバーに、現在の日本のゴルフ界について、それぞれの得意分野の出来事を分析していただき、冷静かつ熱く語ってもらった。


 

日本のゴルフ界にとっての「明治維新」  ~宮崎 紘一~

「ゴルフの活性化」が叫ばれて久しい。しかし掛け声だけで、これといった具体案はなかなか見つからない。というより、それぞれの分野の事情や、しがらみがブレーキになって「各論賛成・総論反対」のあいかわらずの日本的な都合が前進を阻んでいる。今やらなければならないのは、従来の概念や、しきたりをぶち破る思い切った改革しかないはずなのに、それを実行する勇気や、決断がない。あいかわらずというのはそのことだ。

しかし、その「突破口」を開こうとする動きがある。皮肉なことにそれは、外資である。現在、外資が傘下に治めるゴルフ場は約200コースに達しようとしている。この数は今後更に増加の一途をたどることは間違いない。すでに日本のゴルフ場総数の約10分の1になろうというのだから、外資の攻勢恐るべしである。そうした脅威を日本のゴルフ界は一部マスコミを含めて「ハゲタカファンド」といって、忌み嫌う傾向がある。会員制のシステムを壊し、ゴルファーのマナー低下の元凶のように言う。だがこれはどうみても、筋違い、すり替え論以外のなにものでもない。外資が買収したのはいずれも経営破綻したコースばかり。つまり日本のずさんな経営や、最初からゴルフ場を金儲けに利用した経営者の「モラルハザード」が原因だ。彼らのために、健全な会員制システムなどはとっくに崩壊している。この破綻したゴルフ場を、どんな方法であれ買収した外資に従来と同じ会員制システムを踏襲しろというのはそもそも虫のいい話なのだ。責められるべきは無責任な前経営者であるはずだ。日本のゴルフ場は、サービス業でありながら、その業務を放棄してきた経緯がある。ゴルフをビジネスとして捉える外資はその原点に立ち返っている。例えばゴールドマン・サックス系列で運営会社のアコーディア・ゴルフはこれまでにない様々なシステムを実行している。傘下の74コース(2004年7月末現在)全てに通用するポイントカードもその1つ。メンバー、ビジター2通りのカードは利用する毎にポイントが加算される。それはどのコースでのプレーやショップでの割引に使える。欧米並みのプロショップも立ち上げた。フロント前のエントランスに豊富なショップを展開し、町の量販店と同じか、それ以下の低料金で販売する。メーカーとタイアップして、ニュークラブの無料試打ラウンドも可。コースによっては、専門員を置いて、販売だけでなくクラブのフィッティングやゴルフの相談まで応じる。これまでおざなりに片隅にあったコースのショップを生き返らせた。売上の大幅なアップと、用品の活発な流通まで貢献している。また傘下全コースの会員を対象にした本格的なクリニックシステムを実施しはじめた。外国PGAのインストラクターをディレクターにして、コンピューターやCD|ROMを駆使しての科学的なレッスン。「会員にゴルフを上手になってもらって、長くゴルフを楽しんでもらうため」(アコーディア広報)

会員締め出しというより、会員としての付加価値を高めるやりかただ。昨年7月から今年の5月まで33コースの平均入場者数が125%アップ、ショップの売上は前年比500%という驚異的な数字を挙げている。ゴルファーに喜ばれるシステムを次々実行し、大幅な業績アップにつなげている。一体これのどこが「ハゲタカファンド」なのか。外資はまさに黒船が襲来し、「明治維新」となった時代とオーバーラップする。日本のゴルフ界はむしろそこから学ぶべきなのだ。