JGJA特別インタビュー 日本プロゴルフ協会 松井功会長に聞く

1957年に発足した日本プロゴルフ協会(PGA)。発足当時60人だった会員が、今では4800人を超え、ゴルフプロフェッショナルとしてゴルフ界のあらゆる分野で活躍している。9代目の会長として2006年からPGAを率いる松井功氏にこれまでの活動を振り返っていただき、さらに今後PGAが進むべき道についてお話しいただいた。

聞き手 菅野徳雄(JGJA会長)
大東将啓(JGJA副会長)
中野好明(JGJA理事)

菅野 今日はお忙しいところをありがとうございます。2006年に第9代会長に就任されて今年から2期目に入っています。これまでを振り返りながら、将来のPGAをどういうふうにしていこうとなさっているのか、腹蔵なきところをお話しいただきたいと思います。

松井 会長に推されまして最初の3年間は、ゴルフ界で世話になった恩返しだと思い、どうしたらPGAがよくなるかと考えながら必死に働きました。

1年目は過去の会長のやってきたことをもう一度整理し、改めて見直すことから諸問題の解決に取り組んできました。2年目からは会員4800名のための懸案に取り組みました。それまで75歳以上の会員が年会費免除となっていたものを、65歳から69歳までは半額免除とし、70歳以上の会員は全額免除としました。

全体的な経費の見直しも行い、さらに事務局の内部統制を強化するとともに、職員の意識改革も行いました。私の第1期3年の間にPGAは大きく変革したと思います。

5000人近い会員をかかえて、文科省の所管法人の中でもこれほど会員の多い団体は他にありません。トーナメントが主たる事業ではないPGAは今後どうしていくべきなのか、というのがこれからの課題です。

菅野 トーナメント部門がPGAから日本ゴルフツアー機構(JGTO)に移管して10年の歳月がたちましたが、両者の関係をこれからどういうふうにしていくのか、松井会長の手腕にかかっていると思います。

中野 2007年11月のPGAの50周年記念パーテイーのときに松井会長がJGTOの島田幸作会長と握手をしていらしゃいましたね。いい方向に行くのかなと思っていたのですが。島田さんがお亡くなりになって、小泉直さんがJGTOの会長に就任されました。その後はどうなってますか。

松井 話し合いは継続しています。亡くなられた島田前会長とは、同じプロゴルファーということで、ある意味、考え方も同じところがありました。小泉会長とも定期的に話し合いの場を持ってきたことで、今はお互いに理解しあえてきたと思います。PGAとJGTOがお互いの立場を尊重しながら、どのような形をとるのがゴルフ界にとって望ましいのか模索し、最も良い方向に進んでいけるよう、話し合いをしています。

菅野 どういう形がゴルフ界にとって望ましいと思いますか。

松井 2005年にJGTOも社団法人として認められており、昔のようにPGAの傘の下に1つになることはありえないでしょう。しかし、融合することは可能だと思います。その一つとしてJGTOに「PGA TOUR」の7文字を使ってもらうことを考えています。

菅野 アメリカも欧州もオーストラリアもカナダも世界の主要国はみんな「PGAツアー」なのに日本だけ「ジャパンゴルフツアー」。海外に行くとPGAツアーとは違うツアーのような印象を与えているので、なんとか、近い将来改善してもらいたいですよね。

大東 日本のゴルフ界発展のためには絶対PGAの名前の下で協力しあってやるべきだと思います。

菅野 松井さんが会長をなさっている間にぜひお願いします。

大東 トーナメントプレーヤー(TP)とティーチングプロ(TCP)の意識改革も必要と思いませんか。

松井 それはこれからやります。残りの任期中に必ず。TPとTCPは別の職種ではありますが、会員としては同等であるという認識を持つことが大切です。

大東 職域がまったく違いますからね。

松井 私はこれからの2年半の間に会費の統一、それから資格の統一、次に年金制度を行うつもりでいます。これを完遂したときに初めて会員が平等になるのです。これからPGAはUSPGAを目指さなければならないんです。

菅野 PGAのなかでトーナメントプレーヤーとティーチングプロが共存していく団体になってほしいですね。できれば女子も含めて。

大東 今、日本で有名なティーチングプロでWebの検索サイトの上位に出てくるのは、ほとんどがPGAの資格を持っていない人たちです。この現状を、どうお考えになりますか。

中野 教わっている人たちはPGAの資格を持っていると思っているでしょうね。

松井 それは以前から認識していまして、資格認証委員会・理事会でも対応を検討しています。また、PGAオブアメリカとも指導分野において協力体制を築いていくよう、数年前から話し合いを重ねています。

菅野 松井会長には、ジュニアを育てるような学校を作っていただきたいですね。そこで人間教育はもちろんのこと、強い選手を育て上げてもらいたいですね。

松井 近年、民間の大学がグラウンドを開放して教えていこうというところが増えていますね。そういうところを我々も支援していこうと考えています。2016年のオリンピックにゴルフが入れば文科省の教育プログラムにも入っていくでしょうから。

菅野 松井会長になってからジュニア育成の強化を打ち出されてますね。

松井 PGAはジュニアの発掘と育成を行っていきます。これはまだ正式に発表していないのですが、来年中にはPGAジュニアチャンピオンシップを実施する予定です。

中野 PGAの指導者が教えられればいいですね。

大東 トーナメントに関しては、国内だけを見ていては駄目で、世界的なシェアで見てほしいですね。大きな組織の中で、PGAという名前を生かして日本のプロの価値を高めていかなくてはならないと思います。

松井 今のところ、トーナメントを開催することは考えていません。それよりなにより5000名に迫る会員のために、職域の拡大と安定を図っていかなければならないと考えています。そのためには会員の資質の向上が必須であり、一人で何役もこなせる人材を育成していかなければならないのです。それについての講習会なども実施していかなくてはなりません。現在の永久ライセンス制度を見直して、ライセンスの更新制度も必要ではないかと思っています。

また、会員のことだけではなく、社会の一員としてプロゴルファーによる社会貢献も推進していかなければならないと思います。

課題は山積していますが、残りの任期の中で、ゴルフジャーナリストの皆様のご協力もいただきながら、PGAとPGA会員がゴルフ界の礎となれるような体制作りをしていきたいと思っていますので、これからもPGAを暖かい目で見守っていただきますようお願いします。

菅野 これを機会に、広報の人たちや役員との定期的なディスカッションの場も設けてください。
お忙しいなかを本当にありがとうございました。

※インタビューは2009年6月24日に行われた。