ゴルフのマナーを広く知ってもらうチャンス 菅野徳雄

2009年日本オープンゴルフ選手権(武蔵CC豊岡コース)の最終日、18番ホールグリーンサイドのギャラリースタンドの横には色とりどりのビニールシートがところ狭しと敷き詰められていた。シートを敷いて席をとろうとしているのである。幼稚園か小学校の運動会を思わせるような、ゴルフトーナメントの会場では今まで見たことのない光景だ。

最終日のギャラリー数は今季最多の1万7687人。その大半は石川遼選手目当ての人たちに違いない。昨年あたりから50代から60代の夫婦連れと思しきギャラリーが多くなったのも特徴だ。

「あれをグリーンに乗せて1回で入れればバーディっていうんだ」などと話をしているのを聞いていると、ゴルフをしない人もかなり来ているようだ。孫にでもゴルフをさせたい、そして遼クンのようなゴルファーに育てたいなどと思いながら見ているのかもしれない。

初めて見るゴルフ場の広さ、きれいなことに目を見張っている女性もいる。これを機会にゴルフを始める人だっているかもしれない。

フェアウエーを背景に、携帯電話のカメラで写真を撮りあっている光景もよく目にした。

あちらこちらで電話をしている声がひびく。遠いから大丈夫だろうと思っていても、まわりが静かであるということもあって、ゴルフ場は音がよく通るので、プレーヤーにも聞こえているはずだ。携帯電話は今やカメラ付きであるから、選手たちはシャッター音にも神経を使わなければならない。デジカメは音を出なくすることができるけれど、携帯電話のシャッター音は盗撮防止のためもあって、かなり音が大きい。
6番ホールで、石川選手は携帯電話のカメラの音に邪魔されてバンカーショットをホームランし、ダブルボギーをたたいた。

音が聞こえてきた方に向かって声を荒げ、太ももを2度もたたいて怒りをあらわにする石川。「マナーを無視した心ないゴルファーのために石川遼が日本オープンを逃がした」とメディアは一斉に書きたてた。

日本の男子ツアーを統括するJGTO(日本ゴルフツアー機構)が「ギャラリーのマナー啓蒙」のためのビデオを作るという。遅きに失した感があるけれど、マナー(エチケット)を守らなければゴルフというゲームは成り立たないということ。同時にゴルフのマナーをゴルファー以外の人たちにも広く知ってもらうよいチャンスである。