70歳を迎えた今季も現役でプレーするのか、その去就が注目されていた尾崎将司が、″古希”の誕生日1月24日、集まった報道陣に「今年もやる!」と現役続行を宣言しました。昨季、自身の最終戦、ダンロップフェニックス(宮崎)のあと「腰も悪く重大な局面を迎えた」と、暗に昨季限りでの現役引退をほのめかしていました。このオフに何らかの結論を出すものとみられていましたが、まだ未練は断ち切れなかったようです。47年間の現役生活と、長く苦しんできた腰痛が加わり、もう体はボロボロになった70歳。現役続行宣言は「今年も悪かったらクラブを置く」(ジャンボ)との″但し書き”もつけて、背水の1年が始まります。
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千葉市犢橋(こてはし)にあるジャンボの広々とした専用練習場。若手選手が躍動するのを眺めながら、ジャンボは不退転の決意を吐露するように口を開きました。「今年ももしダメだったら、みなさんともお別れします。今年がラストステージ。そのつもりで暮れの12月から重たい特注クラブを振って鍛えてるんだ」ー。昨年までは上半身はじめ、体をいため抜く強化トレを続けてきたジャンボですが、「ゴルフは強い下半身と、しっかりしたスイング」との原点に立ち返り、打ち込みと下半身の強化に時間をかけています。それは腰のリハビリにもつながるトレーニングでもあるというのです。
10年あまり前から、腰椎の狭窄(きょうさく)からくる神経圧迫の腰痛に苦しめられてきたジャンボです。練習場でクラブは振れるのですが、歩くことが苦痛。「ちょっと歩くと腰が張ってくる。腰が悪いとゴルフにならない。練習場とコースのオレの姿は″別人28号”だよ」(ジャンボ)と嘆いたものでした。
試合にはエントリーしても、18ホール(1日のプレー)がやっとというありさま。昨季は12戦して9度の途中棄権。それもほとんどが初日の18ホールでのギブアップとあって、ジャンボ自身「去年は醜態だった」と振り返りました。11月のダンロップフェニックス2日目を9ホールで棄権したあと、「やはり腰がひどい。重大な局面に立たされている。オフにじっくり考える」と″引退”をほのめかす発言をしていました。
ゴルフ界に「ジャンボ時代」を築いた尾崎将司は、通算112勝(うちツアー94勝)。12度の賞金王。スポット参戦した海外でも、73年のマスターズ8位。89年の全米オープン6位。66歳の13年、国内のつるやオープン初日には62をマーク。ツアー史上初のエージシュートも果たしました。しかしそのつるやオープン以降は予選落ちと棄権を繰り返す苦戦を強いられっぱなしで、ついに70歳を迎えました。
昨年11月に自ら漏らした「重大な局面」は一応回避しましたが、事態は楽観を許しません。現役続行を決めた暮れの12月からは、新しいドクターのもと、長年苦しんでいる腰痛改善の処方を施しています。背骨や腰椎に数センチおきにバイブレーターをさし込み、振動を与えて筋肉をほぐし血流を促進していく新療法に取り組んでいます。「マイオセラピー」という痛みを伴う治療法のようですが、日数をあけて繰り返すことによって腰を中心に全身の機能を回復させるマッサージ効果が期待できるそうです。
昨冬12月から続けているこの治療のせいか、「感覚がとてもいい。いいヒントをつかめそう。ここ数年、体を強くすることばかり考え過ぎて、クラブを振ることが少な過ぎた。いま、歩くことと振ることに時間をかけてやっている」(ジャンボ)。大きなソフトボールを左右別々の手で片手打ちするトレーニングや1155グラムの重たい特注クラブで球を打つことも繰り返しています。
「いまの調子なら今シーズンはなんとかなりそう。飛距離も多少伸びている」という。「(棄権や予選落ちばかりでなく)今年は時々は4日間(予選通過)ゴルフをやりたい。問題は腰だけど・・」と、頑固な腰痛を気にしながらも強い意欲をみせています。
50歳から参入できるシニアツアーには一切見向きもせず、レギュラーツアーで戦い続けるポリシーを貫いてきたジャンボです。「今後もシニアに行くことはまったくない」ときっぱり。70歳といえば、たとえシニアでやっていても、引退しておかしくない年齢です。日本のゴルフ界を支えてきた偉大なプレーヤーも「年齢のカベ」には勝てません。忍び寄るリタイアのときを、どこまで押しやれるか。目指す今季の第1戦は、国内開幕戦の東建ホームメイト杯(4月13~16日)です。70歳ジャンボの執念を見守りましょう。
【この記事は2017-1-30 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】
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