From member’s Voice
ゴルフが日本で始まってから100年が経過しようとしている。当初、ゴルフは特定の人、裕福な人しかできないスポーツであった。現在は庶民的スポーツとして認められてはいるものの、「真のスポーツ」としては、まだ受け入れられていない。
そこで、フロムメンバーズボイスでは、会員4名に「日本のゴルフ界をさらに発展させていくには何が必要なのか?」を主たるテーマとして、助言、提言などの意見を寄せてもらった。
「友は皆 現役去りぬ 秋の暮れ」(日経俳壇 大森氏)。日経新聞に掲載されたこの句が妙に心に残る。
最近では日立バレーボール部が廃部と報道された。過去にもこの様なニュースは数多くあったがそんな世の中になったのかと私の中を通り過ぎていたが、今回のこの報道は何かを考えさせるものがある。それは時代の流れとして片付けるにはあまりにも多くの問題があるように思う。つまり一企業の問題でもなく、また、単にバレーボール界の問題でもない。護送船団方式の破錠である。それぞれの業界が自主独立の基盤を強固に確立せずに如何に相互依存に甘えてきたかの結果にほかならない。今や既存の産業界は生き残りをかけてバブルで太り過ぎた贅肉を自らの手で取り除き、スリム化を計っている現状は、周知の事実である。その結果として各企業が抱えているスポーツ倶楽部の廃部もまた当然のことである。各企業のスポンサードで成り立っているプロスポーツの世界も例外ではない。
一方で情報技術(IT産業)の発達による新しい産業(インターネット等)が想像をも遥かに超えたスピードで台頭しているのも事実である。この時代を私はあえてアナログ産業を踏台にしたデジタル産業の台頭の時代と表現する。言い変えればアナログ世代とデジタル世代の二極時代に突入したと考える。先に護送船団方式の破錠と述べたが、このシステムが今日の日本を経済大国に押し上げてきたのだ。時代の中にあってそれは意義ある経済システムでもあった。 さて我々のゴルフ業界に目を向けて考えるとどうだろうか。時代の変化にどのように対応してきただろうか。自主独立の基盤をしっかりと確立してきただろうか。もちろん個々の企業でしっかりと基盤を確立しているところがあるのも事実であるが、業界としてどうであったかを問いたいものである。極論すれば高度消費経済の中で自然増加する甘い汁を享受してきただけではないだろうか。
メーカーがより良い商品を作り、ゴルフ場がより素晴しいコースを整備し、練習場もより快適に練習できるようにそれぞれが懸命の努力をしてきたことも事実である。それは各企業が存続する為に当然必要不可欠のことであるが、それは今あるゴルファーを対象に如何に多くを自分のテリトリーに囲いこむかの競争をしているだけに過ぎなかったのではないか……。
今からでも遅くはない。5年後10年後を見据えてゴルフの業種を超えて業界を挙げてどうすればゴルフ愛好家を増やすことができるか。そのパイを大きくすることが出来るかを真剣に考え実行する時ではないだろうか。もっと一般の人達や初心者が、ゴルフを身近かなものとして気軽にゴルフへの参加が出来る様に業界挙げて推進することが先決であろう。これは各業種企業がビジネス活動を超えて哲学的なビジョンをもって事にあたる度量があるかにかかっている。荒っぽい言い方をすれば、初めてゴルフをする人達のためにゴルフメーカーはクラブの無料提供、ゴルフ場や練習場はその場所の無料解放を。プロゴルフアーは無料レッスンを。また、媒体はページを割いて無料告知を。そして地方行政をも巻き込んだ施設のパブリック化など、その目的をゴルフ人口の拡大一つに絞って各業種が自分達の利害を超えて連携して取り組む時期が来たのではないだろうか。
今こそゴルフ関連16団体の力の結集を実現する時期到来ではないだろうか……。と考えている時に2001年のゴルフ新年会の案内状が届いた。各団体の会長がどんな2001年の抱負を聞かせてくれるのか真摯な態度で聞いてみたい思いである。そして初夢は「友つどい 緑に遊ぶ 春近し」とありたいものである。
〈プロフィール〉高津 健二(こうづ けんじ)。
1957年関西学院大学卒業、同年(株)東芝入社。75年ダイワ精工(株)に転職。95年定年退職後、グラフィックデザイン企画制作(株)コーリング設立、代表取締役となる。