西村 國彦
1 世界を一変させたウイルス
たとえそれが、わが国においてインフルエンザよりも軽く、致死率も圧倒的に低いとしても、新型コロナは、世界を変えてしまった。
その最大の衝撃は、私がこの2年間、GEW連載で迷いながらも追求してきた、「新自由主義」の破綻と言えるのではないかと思う(GEW2020年7月号P64以下参照)。
私に難しい宿題を課してくれた片山社長との合作と言うべき連載最終回特別編は、毎月原稿を書きながらも、「ゴルフ文化産業論」とは何を意味するのか皆目見当がつかなかった私にとって、ようやく最終回で連載題名に納得がいくという結末を迎えさせてくれた。
連載の中で、私は、過去の日本ゴルフ場・その経営企業のバブル経済破綻の総括と、日本のゴルフそのものを犠牲にして莫大な利益を得た外資系ファンドの思想的基盤である「新自由主義」を突破するための新たな思想の樹立を求めていた。最終回に至り私が到達した結論について、著名な世界の思想家・哲学者が応援団になってくれたような状況がそこにはあったのだ。
そればかりではない。そこには、今までなら国民一部が大きな声をあげても、ほぼNHKと読売新聞が報道した通りの世論が形成されるに等しかった状況から脱出したのではないか、と思われる興味深い現象が発生していた。
それはこの間の国会審議を見れば明らかだ。中小企業に対する協力金、給付金、助成金等の実施状況だけでなく、金融債務や家賃債務への資金援助、業界救済のための資金援助等が続々実現している。
全国津々浦々の選挙民から突き上げられた国会議員たちが、財政健全化を旗印に予算を削ることしか考えない財務省の壁を突破して百兆円を軽く超える補正予算を国会承認させるなどしてしまったのだ。
アイルランドやアイスランドの国民の運動による政策変更の例を持ち出すまでもなく、この極東の島国だって、「民主主義」を変えていくことは出来るのではないか、とかすかな希望を持つこともいいのかもしれない。
2 自粛と強制
幸いなことに、日本を含む東アジアは、コロナに対し何らかの耐性を持っているとしか考えられない状況がある。でも日本では、陰湿な「自粛警察」が横行し、とても健全な民主主義の展開とは言えない現状がある。
他方、コロナ感染がとどまるところを知らない米国では、折しも黒人の命を粗末に扱うことに対するデモが全米で大きく盛り上がって、トランプ政権を追い込むに至っているようだ。
そういうとき、三密から最も遠いゴルフの良さに気づき直しゴルフを復活した私は、2019年、ゴルフルールからマナーやエチケットという言葉が消えたことを思い出していた。
そんなゴルフ思想の根本が本当に削除されたのだろうか?という疑問をもったら、ゴルフルール原文にあたるしかないだろう。
大丈夫、R&Aのゴルフルール英文には、きちんと旧ルールでのゴルフの精神(The Spirit of the Game)は残っていた。今回の改正で日本の訳文が、なぜか「ゴルフの精神」から「ゲームの精神」に変更されていただけだったのだ。
ゴルフ以外のスポーツでも「ゲームの精神」という言葉を使っているが、ゴルフの場合は「ゴルフの精神」=「ゲームの精神」でいいと思う。
だが、原文が変わってないなら、新旧ルールのゴルフの精神の基本が変わるはずがない。新ルールは、これを誠実(正直)なプレー、他人への配慮、コース保護のように具体化し、しかもその違反には競技「失格」まで想定されている。
そんな「ゴルフの精神」は、コロナ禍で人心が荒みがちで疑心暗鬼になりやすい今日、私たちがコロナとともに生きる指針として、採用したらいいのではないか、と思った次第である。
同じフィールドにいてお互いに感染リスクを感じている者同士、「他人への思いやりと配慮」こそこれからのキイワードではないか?
ゴルフの世界は、激しい闘いの場においても相手を思いやり、フェアプレーの精神を貫くことが求められる。
そんな精神でコロナやコロナに続く試練を乗り越えていこうではないか。
大分会員権 別府扇山の会員権を探してます 友岡さんに聞きました