【 GOLF・スケッチブック 】
記事はゴルフの諸事雑事を書いています
紺 野 望
アベレージゴルファーにとって、もっと上達したいという願望は、ゴルフ雑誌のテクニック論 であったり、TVゴルフ中継の視聴ではないか。しかし何年立っても100を切れない、90を切れないとなると、自分の才能を疑うことシキリとなる。
「ゴルフ上達の考え方」で、われわれがゴルフを始めた時に教わった方法とは真逆の指導法を受け、歴史に残るプレーヤーになった人がいる。今から100年以上も前の人。ロジャーとショイスというウェザレット兄妹だ。特にジョイスは女性として当時全英きっての名選手、全英女子選手権を何度も手にした伝説のプレーヤーだ。
さて、この人のお父さんはコース設計家のヘンリー・ニュートン・ウェザレットという人。「アンジュレーションを生命とするボール・ゲームは、ゴルフ以外にはない。
これはゴルフの最も誇るべき特質である」という名言を残した人で、彼の娘と息子にゴルフを教えた方法が“あっと驚く”こんなやり方だった。
ゴルフをやりたいという子供たちに、彼は夏の長期休暇を利用してゴルフ場へ連れて行った。
そしてシャフトの短いパターを渡し「長い時間ボールを打っていても疲れない姿勢を見つけなさい」と教え、疲れない姿勢を発見させる。次いで構えた形でスムーズに両手が動くように何百回もストロークを命じた。
これからがウェザレットの真骨頂で、来る日も来る日もゴルフ場の練習グリーンで1mのパットを練習させたという。
どこからでも1mのパットが確実に入るようになってから、徐々に距離を広げ、グリーンエッジまでの長さを1m以内に寄せる練習を1日中させた。
次にグリーンから外れてロフトのあるアイアンを渡し、パットの延長線のフォームでピンに寄せるように教えた。これも毎日毎日同じことを繰り返させた。
1mパターの姿勢を少しずつ大きな振りに変えて行き、クラブも変えて練習させる。
そして各種クラブを無理のないフォームで真っすぐ打てるように指導した。
その結果が恐るべきゴルファーに育っていく。兄のロジャーは全英アマ選手権で12勝、全英オープンで準優勝、妹のジョイス・ウェザレットは、全英女子選手権4勝を含め38勝を挙げてゴルフ界に君臨する。
かのボビー・ジョーンズに“不世出の天才ゴルファー”と言わしめた女性ゴルファーへ育って行った。
父ウェザレットはいう。ゴルフのパープレーは72打であるが、2パットで上がる数といえば36打。全体の半分をパットが占めるならば、パットこそ重要な練習として最初から練習しない手はないと。
ジョイス、ロジャーの2人は15~6歳になるころにはどんな試合に出ても優れた成績を挙げて世間を驚かしていたとう。(参照:夏坂健著「王者のゴルフ」)
さあ、われわれの練習はどうだろう。振り返ってみれば、事始めには7番アイアンあたり、そしてウッド、ドライバーと代わり、今では“どれだけ飛ぶか”飛距離を前提として練習とプレーに時間を費やしている人が何と多いことか。
ある程度上達した段階、ゴルフを知れば知るほど小さいクラブにすべての原因が潜んでいることを発見して、慌ててアプローチとパットを練習し出すありさまで、情けないことこの上ない。
明治時代の有志を育てた昌平黌の先生、佐藤一斎の言志四録に“小事は大事を表す”(小さな事にこそその人も姿が現れるもの、小事には細心の注意を払へという文言)を残している。
ゴルフにも通ずる言葉だなぁとつくづく感じ入った次第である。
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