日経電子版2017年5月11日配信
女子プロゴルフツアーの人気がかげりを見せない。5月第1週までのレギュラーツアー10試合の総入場者数は16万5693人で、昨年の同じ時点より1万3089人増えている。
中でも、5月4日から7日まで、茨城ゴルフ倶楽部で行われた今季国内メジャー第1戦、ワールドレディース・サロンパスカップでは、海外から話題の選手が出場したことも手伝って、初日に史上最多の1万3097人が、4日間を通しても4万1484人のギャラリーがつめかけ、大にぎわいとなった。
そんなワールドレディースのけん騒から一夜明けた8日、埼玉県の狭山ゴルフ・クラブで、「OKトーナメント」という非常にユニークな大会が行われた。
女子プロ120人参加と聞けばごく普通のようだが、1日の試合としては破格の賞金総額1500万円。さぞかしトッププロが顔をそろえているのかと思いきや、トーナメント出場機会の少ない“下積み”プロばかりだ。
■「OK」2人がポケットマネー
2014年5月に第1回大会を開催し、春と秋の毎年2回、数えて今回が7回目となる大会のスポンサーになっているのは企業ではなく、アース製薬の大塚達也会長とYKエステート(川崎市)の勝又泰夫社長の2人。つまり「OK」2人が“ポケットマネー”を出し合うプライベートトーナメントなのである。
アース製薬は6月第4週にレギュラーツアーのアース・モンダミンカップ(千葉県カメリアヒルズCC)を主催している。大塚会長がどうして個人的に、まったくコンセプトの違うトーナメントを開いたのか――。
「レギュラーツアーのスポンサーになってわかったのは、そこに出てこられるのは女子プロの一部だということ。その何倍もの人が、プロとはいうものの試合のチャンスがない。そんな選手たちを応援したいと思った」
だから、OKトーナメントの出場資格は、上から順に決めていくレギュラーツアーとは正反対。日本の女子プロの出場資格は、シード選手以外は前の年に行われるクオリファイングトーナメント(QT)ランキングの上から順に拾っていく。
OKトーナメントはまったく逆で、QTランキング(今年は363位まで)の最下位から順に出欠を確認して120人を決めていく。賞金配分にもその意識は貫かれている。国内外・男女とも通常、賞金総額の18~20%が優勝賞金となる。1500万円なら270万円から300万円だ。しかし、OKトーナメントの場合は半分以下8%の120万円。その分、下に厚く配分される。
この日の表彰式。成績表が配られると、あちこちで「えっ、こんなにもらえるの!?」と、歓声にも似たつぶやきが聞かれた。
そんな中、QTランキング170位の中園美香(31)が3アンダーの69で優勝した。今シーズンは、3月に地元・宮崎県で行われたレギュラーツアーのアクサレディースに主催者推薦で出場できたものの予選落ち。下部のステップアップツアーに2試合出て、賞金は15万6000円。この日はニアピン賞、最多バーディー賞の各10万円も獲得して総額140万円にもなり、「私たちにとって、こんなにありがたい大会はありません。これを励みに、上を目指します」と、目を潤ませる。
■レベル向上とスター育成の一助
第1回大会優勝の福山恵梨(24)は今シーズンのステップアップツアーで目下賞金ランキング1位。2015年5月の第3回大会に出場した川岸史果(22)も、ワールドレディースで日本人最高の4位になるなど、「日本女子プロゴルフ界全体のレベルアップと、未来のスタープレーヤーの育成の一助になることが目的」(大塚会長)という思いが実を結びつつある。
レギュラーツアー38試合の下にステップアップツアー21試合と、裾野が広がる日本の女子プロゴルフ。さらにその下でプロを応援するトーナメントがある。
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