一日がとても早く暮れる季節。
学生ゴルファー達はキャディのアルバイトを終え、お客さんのスタートが全部済んだ後、コースの厚意を得て練習ラウンドを開始する。既に彼らがバッグを担いでインコースを出てから2時間近くが経過している。
12月に入ると、薄暮9ホールを回り終えるのは時間的に厳しい。
フェアウェイを夕陽が紅く装ったかと思うと、瞬く間に暗闇が迫る。
つるべ落とし。目の前にある景色の濃度が急速に薄べったくなり、静けさが覆う。
冷気が首筋から刺しこむ。
ヒートテック素材のウェアを着込むも、体温が奪われる。
最終ホールを上がった地点のカート道の脇に立ち、戻ってくるはずの彼らを捜すともなく、ぼんやりとコースを見降ろしていた。
ピンポジションはもとより、暗くてグリーン全体の位置さえ覚束なくなってくる。40歳中頃から、とんとダメになった私の眼ではこの闇の中でボールを追う事など到底できない。
やがて、グリーンに向かって登り傾斜の最終ホール、彼方から声が流れてきた。
耳を澄ませば、それは歌のよう…。
近づくに連れて時折おおきな笑い声が混じる。聞きなれない歌は、どうやら校歌らしかった。
いささか古臭い歌詞を、半ばやけっぱちのように歌う。
若く眼の利く彼らも、さすがにボールを打たずにコースを上がって来たようだ。
4人はグリーン近くまで来たかと思うと、バッグを置き、アプローチを打った。打ち終えると笑い声、そしてまた、少しふざけた調子の歌声。
振り返ればクラブハウスの明るい灯。そのまま立ち続けるのが照れくさくなった私は、彼らの声を背にハウスに戻った。
ゴルフを通じて交わされる友情。
その貴重な時を彼らは今、過ごしている。
普段、ゴルフ場では見られない学生ゴルファーの姿。できるなら皆さんに静かに見守っていただければ。
ゴルフに関して、今年(2016)様々なニュースが流れた。将来に不安を覚えずにいられない話も多かった。
いま思うこと。大事なこと。
それはジュニアゴルファーの育成努力。若いゴルファーの力と心を信じて育てること。技量ばかり注力せず、彼らを信じ、ゴルフの心、作法を共に次世代へと繋げていくこと。
灯火が照らすキャディマスター室前。
汚れた靴にエアガンを吹きつける。乾いた風。大袈裟に響く作動音。
その中で感傷的になる自分を誤魔化す。
もうすぐ彼らに「今日はどうだった?」と笑顔で訊かねばならない。