日本在住の外国人労働者にもプレー機会を!

オリンピックイヤーとして始まった2020年――。海外からの訪日外国人は2018年に初めて3000万人を超えるなど増え続け、今年は1964年以来の東京でのオリンピック開催とあり、過去最高が期待された。
しかし、新型コロナウイルスによる渡航制限の影響で、今年4月は前年同月比99.9%減。つまりほぼゼロという惨状だった。
そこで今回、IAGTO(国際ゴルフツアーオペレーター協会)の代表で、株式会社Niblinksの代表取締役を務める薬師寺輝氏に話を聞いた。IAGTOの設立は1997年、世界101カ国に同業者の会員をもつ。Niblinksはゴルフツーリズム、プロダクトのPR・マーケティング代理店で、世界90カ国以上のゴルフ関係者、メディアとのネットワークを生かしたプランの提案を目的に掲げ、2018年8月に設立。
現状、コロナ禍でインバウンドはどのような状況に陥っているのか、また、過去に行った外国人ゴルファー誘致策や今後の展開など、興味深い話が聞けた。

日本のゴルフ場におけるインバウンドの現状

日本のゴルフ場利用客に占めるインバウンドの割合は?
「日本の観光業界において、インバウンド需要の高まりに期待する業種は沢山あったと思います。ゴルフ産業も同様ですが、ただ、インバウンドの正確な割合はわかりません。ひとつの目安として、国内の大手ゴルフ場運営会社では3%ほど、人気のリゾートコースでは10%程度だと思います」
どこの国が多いですか。
「アジア諸国が中心ですが、約8割が韓国になります。韓国はゴルフ熱が高い反面、コース数が少ないなどで日本にプレーする機会を求めてやってきます。距離的に近いこともあり、東京に住む人が千葉県でプレーする感覚で日本に来ていると思います」
コロナ禍で厳しい状況だと思いますが、現在の取り組みは?
「今回、多くの国でロックダウンなどの対策が取られましたが、渡航制限で国境が閉鎖されただけではなく、世界中でゴルフ場がクローズされました。そこで3月、IAGTOのサイトに各国のゴルフツーリズム関係者の情報を集約した『Covid-19 Recovery Hub』というページを開設し、各国の取り組みを紹介しています。国によって感染症対策が異なるケースもありますので、各国のゴルフ場がどのようなオペレーションで運営を行っているのかという内容に加え、国境が開放されているか否かの情報も確認できます」
日本からの発信情報は?
「緊急事態宣言の発出と解除時には、その情報を投稿しました。また、他の都道府県への移動規制などもサイトで紹介しています。この情報提供は開始当初、会員向けのサービスでしたが、6月下旬からは会員登録は必要なものの、誰でも使える仕組みにしています。IAGTOのサイトのTRAVEL INDUSTORYのタブにある、Join IAGTOのページから会員登録をいただくと情報が得られるので、使ってみてください」

コロナ長期化の雲行きでインバウンドへの期待は?

コロナの終息は誰にも読めませんが、少なくとも今後1~2年、インバウンドは厳しいでしょう。それでもこの事業に取り組む理由は何ですか。
「わたし自身は、来年から再来年にかけてインバウンドは戻ると予想しています。取り組む理由は、産業として、少ないながら顧客がいるということです。しかも、海外から来るゴルファーのほとんどが、他の国でゴルフを楽しんでいる人ばかりです。言語以外はプレーをするのに全く問題がなく、優良顧客になりえます」
インバウンドが日本のゴルフ産業にもたらすモノは?
「バブル経済の崩壊後、ゴルフをプレーする人だけでなく、取り巻く環境も変わってきました。さらに外国人ゴルファーを受け入れることで、日本のゴルフ文化はもっと幅広いものになるはずです。それにより、現在の情報化社会において、日本のゴルフ環境がどういうものかというのを、良い悪いと思いますが、世界中に発信できることが期待できます」
世界のゴルフ場を見てきた薬師寺さんの観点から、日本のゴルフ人口減少について打開策は?
「新規ゴルファーの獲得に力を入れるべきだと思いますね。初めてゴルフ場に行く人は、事前に色々と調べて予約をして、ようやくコースに辿り着く。ただでさえ緊張しているのに『ラウンドできるまでのスキルがない』『ロッカーの使い方はコースに来る前に知っておいて欲しい』など、冷たい言葉を浴びることがありますよね。社会人として普通に働いている人でも、コースに出ると委縮してしまう人もいる。これらは新たに始めようという人の大きな障壁になっていると思いますよ」
外国人ゴルファーへの対応も同じことが言えますか。
「同じことが言えますし、さらに言葉の壁という問題が加わります。ゴルフ場の中にはメンバーとビジターという枠組みだけでなく、ビジターの枠の中で『日本人と外国人』に分けてしまい、外国人ゴルファーを言語や文化の違いから受け入れてこなかったところがあります。でも、その壁を取り払う必要がありますよ。
外国人の受け入れ体制が整えば、インバウンド需要だけではなく、日本に住む外国人労働者にもプレー機会が与えられる。つまり外国人ゴルファーへの対応は、単にインバウンドの話ではなく、視野を広げて考える必要がある」
そのための具体策は?
「外国人来場者を増やすために、どのようにすれば分かりやすく利用してもらえるかが大切です。例えば、クラブハウス内にポスターを掲示するなどの営業努力や様々な工夫が、今後ますます問われると思います」
最後に今後の展望を。
「日本のゴルフ場に、もう少しオープンになってもらえる活動したいと考えています。 例えば外国人ゴルファーのための『インターナショナルビジター枠』を設け、日本全国に広げたい。平日限定で十分なので、一日3組の枠を設けてもらうような活動をしたいですね。来年4月までをその準備期間として、積極的に働き掛けます」

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    ABOUTこの記事をかいた人

    1981年7月12日生まれ
    平成18年5月~平成20年11月イーゴルフ株式会社 携帯サイトでのコラム執筆。メールマガジンでのゴルフ場紹介コラム。提携先雑誌「GolfStyle」ホームページでのコラム執筆。提携先のゴルフ専門サイト「GolferWeb」でのコラム執筆。
    平成20年12月~平成21年4月株式会社ゴルフトゥデイ ゴルフトゥデイ主催の大会ページ、ドライバーカタログなどを担当
    平成21年5月株式会社ベンチャーリパブリック(現オセニック株式会社)新製品の紹介やトーナメント記事に関するブログ記事を執筆。ゴルフクラブ、ボールの選び方コンテンツ記事の執筆。